MRSA感染症(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症)は、抗生物質に耐性をもった細菌によって引き起こされる感染症で、特に医療現場では重要な課題とされています。この記事では、MRSA感染症の症状、原因、治療法、予防方法などを総合的に解説し、正しい知識をお伝えします。
MRSA感染症とは?
MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、通常の抗生物質(ペニシリン系やセフェム系)では治療が難しい耐性菌です。主に皮膚、創傷部位、血液などに感染し、重症化すると敗血症や肺炎を引き起こすことがあります。
MRSA感染症の主な症状
感染部位や重症度によって症状は異なりますが、以下が代表的な症状です。
感染部位 | 主な症状 |
---|---|
皮膚・軟部組織 | 赤み、腫れ、膿、熱感、痛み |
血液 | 発熱、寒気、低血圧、意識障害(敗血症) |
肺 | 咳、発熱、呼吸困難、胸痛 |
尿路 | 排尿時の痛み、頻尿、発熱 |
MRSAの感染経路
MRSAの主な感染経路は以下の通りです。
- 接触感染:患者の皮膚や創傷、汚染された物品に触れることで感染します。
- 飛沫感染:咳やくしゃみによって飛沫が飛び、他人の粘膜に付着することで感染します。
- 医療機器を通じた感染:カテーテルや人工呼吸器を通じて菌が体内に侵入するケースがあります。
MRSAの原因と発症リスク
MRSA感染は誰にでも起こり得ますが、特に以下のような人々はリスクが高いとされています。
- 高齢者や免疫力が低下している人
- 長期入院患者
- 手術を受けた直後の患者
- 糖尿病や腎不全などの慢性疾患がある人
- 複数の抗生物質を長期にわたって使用している人
MRSA感染症の治療法
耐性菌であるため、通常の抗生物質では効果がありません。MRSAには以下のような抗菌薬が用いられます。
薬剤名 | 分類 | 備考 |
---|---|---|
バンコマイシン | グリコペプチド系 | 点滴で使用。腎障害に注意。 |
リネゾリド | オキサゾリジノン系 | 内服可。骨髄抑制に注意。 |
ダプトマイシン | リポペプチド系 | 血流感染に有効。肺炎には不適。 |
MRSA感染の予防方法
MRSAの感染予防には以下のような基本的な衛生管理が重要です。
- 手洗い・手指消毒の徹底
- 傷口は清潔に保ち、ガーゼなどで保護する
- 共有物品(タオル、剃刀など)は使わない
- 定期的な環境清掃
- 医療機関では感染対策マニュアルを遵守
よくある質問(Q&A)
Q1. MRSAはどこでうつるの?
A1. 医療機関が多いですが、介護施設、学校、スポーツジムなど人が多く集まる場所でも感染の可能性があります。
Q2. MRSAに感染したら入院が必要ですか?
A2. 軽症であれば外来治療で済むこともありますが、血流感染や肺炎など重症例では入院が必要です。
Q3. 健康な人でも感染しますか?
A3. 健康な人でも皮膚に傷があると感染のリスクがあります。ただし重症化するケースは稀です。
Q4. MRSAは治りますか?
A4. 適切な抗菌薬を使えば治療可能ですが、再発の可能性があるため注意が必要です。
まとめ
MRSA感染症は、耐性菌による重篤な感染症のひとつで、特に医療機関では注意が必要です。予防には日常的な衛生管理と、医療従事者による厳密な感染対策が不可欠です。適切な治療を受ければ回復は可能ですので、症状が現れた場合は早めの医療機関受診をおすすめします。
感染症についての正しい知識を持つことが、自分と周囲を守る第一歩です。