乙字湯(おつじとう)

乙字湯(おつじとう)について

乙字湯は、比較的体力があり、便秘傾向のある方の痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛の改善に用いられる漢方薬です。炎症を鎮め、出血を抑え、便通を整える効果があるとされています。

主成分

乙字湯は、以下の6種類の生薬から構成されています。

  1. サイコ(柴胡): セリ科の多年草であるミシマサイコの根を乾燥させたもの。炎症を抑える、肝機能を高めるなどの作用があるとされます。
  2. オウゴン(黄芩): コガネバナの根を乾燥させたもの。抗炎症作用、抗菌作用、止血作用などがあるとされます。
  3. カンゾウ(甘草): マメ科の多年草であるウラルカンゾウまたはグリチルリザ・グラブラの根およびストロンを乾燥させたもの。炎症を抑える、痛みを和らげる、胃腸の調子を整えるなどの作用があるとされます。
  4. トウキ(当帰): セリ科の多年草であるトウキまたはホッカイトウキの根を乾燥させたもの。血行を促進する、鎮痛作用、緩下作用などがあるとされます。
  5. ダイオウ(大黄): ナデシコ科のダイオウ属植物の根茎を乾燥させたもの。瀉下作用があり、便秘を改善する効果があります。
  6. ショウマ(升麻): キンポウゲ科の多年草であるサラシナショウマまたはオオバショウマの根茎を乾燥させたもの。炎症を抑える、解熱作用、排膿作用などがあるとされます。

これらの生薬が、それぞれの薬理作用を発揮することで、乙字湯としての効果を示すと考えられています。

分類

  • 漢方薬

効能・効果

比較的体力があり、便秘傾向のあるものの次の諸症:

  • 痔核(いぼ痔)
  • きれ痔
  • 便秘
  • 軽度の脱肛

用法・用量

通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。

  • 煎じ薬: 生薬を水で煮出して服用します。
  • 顆粒剤: 生薬のエキスを乾燥させた顆粒状の製剤で、水またはお湯に溶かして服用します。
  • 錠剤: 生薬のエキスを錠剤にしたもので、水またはお湯で服用します。

いずれの剤形であっても、年齢、体重、症状により適宜増減されます。必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器系: 軟便、下痢、腹痛、食欲不振、胃部不快感など(特にダイオウによる影響)
  • 皮膚: 発疹、発赤、かゆみなど
  • 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTPなどの上昇
  • その他: 動悸、のぼせ、むくみ、排尿困難(カンゾウの長期大量服用による偽アルドステロン症)

特に、甘草を含む他の漢方薬と併用する場合や、長期にわたって服用する場合には、偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、脱力感など)が現れることがあるため、注意が必要です。定期的な検査が必要となる場合もあります。

もし、服用中に気になる症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 乙字湯は、体力中等度以上で、便秘傾向のある方に適しています。体力が虚弱な方や、下痢をしやすい方には慎重な投与が必要です。
  • 妊娠または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性のある方は、服用前に医師または薬剤師に相談してください。特に、ダイオウは子宮収縮作用や流産・早産の危険性を高める可能性があるため、注意が必要です。
  • 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。
  • 他の医薬品(特に緩下剤や利尿剤、甘草を含む製剤)との併用には注意が必要です。必ず医師または薬剤師に相談してください。
  • 症状の改善が見られない場合は、漫然と服用を続けずに、医師または薬剤師に相談してください。

注意事項

  • この情報は乙字湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。