安中散

安中散について

安中散（あんちゅうさん）は、漢方処方の一つであり、主に胃腸の不調を改善するために用いられます。体力中等度以下で、神経過敏で胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気、嘔吐などを伴う場合に用いられることが多いです。配合される生薬の相互作用により、胃腸の機能を整え、不快な症状を緩和する効果が期待されます。医療用医薬品としての顆粒剤や細粒剤、一般用医薬品としての顆粒剤や錠剤などが販売されています。

主成分

安中散は、以下の7種類の生薬から構成されています。

  1. 桂皮（ケイヒ）: シナモンの樹皮であり、体を温める作用、健胃作用、鎮痛作用などがあります。胃腸の冷えを改善し、消化機能を助けると考えられています。
  2. 延胡索（エンゴサク）: ケシ科の植物の塊茎であり、鎮痛作用、鎮痙作用、止血作用などがあります。胃痛や腹痛、生理痛などの痛みを和らげる効果が期待されます。
  3. 牡蠣（ボレイ）: カキの貝殻であり、精神安定作用、収斂作用、制酸作用などがあります。神経の高ぶりを鎮め、胃酸過多による不快感を和らげる効果が期待されます。
  4. 茴香（ウイキョウ）: ウイキョウの果実であり、健胃作用、駆風作用、鎮痛作用などがあります。胃腸の働きを活発にし、ガスによる腹部膨満感などを改善する効果が期待されます。
  5. 甘草（カンゾウ）: マメ科の植物の根や根茎であり、抗炎症作用、鎮痛作用、鎮咳作用、去痰作用、胃粘膜保護作用など、多岐にわたる作用があります。他の生薬の作用を調和する役割も担います。
  6. 縮砂（シュクシャ）: ショウガ科の植物の果実であり、芳香性健胃作用、消化促進作用などがあります。食欲不振や消化不良を改善する効果が期待されます。
  7. 良姜（リョウキョウ）: ショウガ科の植物の根茎であり、体を温める作用、健胃作用、鎮痛作用などがあります。胃腸の冷えによる痛みを和らげる効果が期待されます。

これらの生薬が、それぞれの薬理作用を発揮し、複合的に効果を示すと考えられています。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力中等度以下で、神経過敏で胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気、嘔吐などを伴うものの次の諸症：

  • 神経性胃炎
  • 慢性胃炎
  • 胃アトニー

これらの症状は、ストレスや精神的な緊張、冷えなどが原因で起こることがあり、安中散はこれらの要因に働きかけ、胃腸の不調を改善します。

用法・用量

医療用医薬品と一般用医薬品で用法・用量が異なる場合があります。以下は一般的な例です。

医療用医薬品（例：顆粒剤、細粒剤）

  • 通常、成人1日7.5gを2～3回に分割し、食前又は食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師の指示に従って服用してください。

一般用医薬品（例：顆粒剤、錠剤）

  • 製品によって用法・用量が異なりますので、添付文書をよく読んでください。
  • 一般的には、成人1回1包（顆粒剤の場合）または1回〇錠（錠剤の場合）を、1日2～3回、食前又は食間に水または白湯で服用します。
  • 服用間隔は4時間以上あけることが推奨されています。

服用に際しての注意点

  • 定められた用法・用量を守ってください。
  • 小児に服用させる場合には、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
  • 症状によっては、数日間服用しても改善が見られない場合や、悪化する場合があります。そのような場合は、服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によってはまれに副作用が現れることがあります。安中散で報告されている主な副作用としては、以下のものがあります。

  • 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 皮膚: 発疹、かゆみなど

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。

また、安中散に含まれる甘草の成分により、まれに以下のような重大な副作用が現れることがあります。

  • 偽アルドステロン症: 血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のこわばり、脱力感などの症状が現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋肉の痛み、脱力感などが現れることがあります。

これらの重大な副作用が疑われる場合は、直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。

その他

  • 安中散は、体力中等度以下で、比較的胃腸が弱い方に適しているとされています。
  • 服用する方の体質や症状に合わせて、他の漢方薬と併用されることもあります。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
  • 他の医薬品（特に胃腸薬や精神安定剤など）を服用している場合は、飲み合わせについて医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。
  • 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
  • 小児の手の届かない所に保管してください。
  • 誤用を避け、品質を保持するため、他の容器に入れ替えないでください。
  • 使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。

注意事項

  • この情報は安中散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師、薬剤師又は登録販売者の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、医療用医薬品の添付文書、一般用医薬品の製品添付文書をご確認いただくか、医師、薬剤師又は登録販売者にご相談ください。