八味地黄丸について
八味地黄丸(はちみじおうがん)は、中国の古典医学書である『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載されている漢方薬です。8種類の生薬を配合しており、体全体の機能低下を改善する効果があるとされています。特に、加齢に伴う様々な症状に用いられることが多く、体を温める作用があるため、冷えを伴う症状に適しています。
主成分
八味地黄丸は、以下の8種類の生薬から構成されています。
- 地黄(ジオウ): 滋養強壮作用、造血作用などがあるとされます。
- 山茱萸(サンシュユ): 収斂作用、止汗作用、強精作用などがあるとされます。
- 山薬(サンヤク): 滋養強壮作用、消化機能の調整作用などがあるとされます。
- 茯苓(ブクリョウ): 利水作用、鎮静作用などがあるとされます。
- 牡丹皮(ボタンピ): 駆瘀血作用、鎮静作用、解熱作用などがあるとされます。
- 沢瀉(タクシャ): 利水作用があり、体内の余分な水分を排出するのを助けるとされます。
- 桂皮(ケイヒ): 発汗作用、解熱鎮痛作用、健胃作用などがあり、体を温めるとされます。
- 附子(ブシ): 強心作用、鎮痛作用、体を温める作用があるとされます。配合量は製品によって異なります。
分類
- 漢方薬
- 温補腎陽薬(体を温め、腎の機能を補う)
効能・効果
疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少または多尿で、ときに口渇がある方の以下の諸症状に効果があるとされています。
- 下肢痛
- 腰痛
- しびれ
- 老人のかすみ目
- かゆみ
- 排尿困難
- 頻尿
- むくみ
漢方医学的な観点からは、「腎虚(じんきょ)」と呼ばれる、加齢や体質などによる腎の機能低下を改善する目的で用いられます。腎は成長、発育、生殖機能を司ると考えられており、その機能低下は様々な不定愁訴につながるとされています。八味地黄丸は、不足した腎のエネルギーを補い、体を温めることでこれらの症状を改善すると考えられています。
用法・用量
- 通常、成人1日18錠を2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
製品によっては、顆粒剤やエキス剤など、異なる剤形もありますので、指示された用法・用量を守ることが重要です。
副作用
主な副作用として、以下のものが報告されています。
- 消化器系: 食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘など
- 皮膚: 発疹、発赤、かゆみなど
- その他: 動悸、のぼせ、舌のしびれ、体がだるいなど
比較的まれですが、重篤な副作用として、肝機能異常(AST、ALT、T-Bilの上昇など)が報告されることがあります。
特に注意が必要な方
- 体力の充実している方: 副作用があらわれやすくなることがあります。
- 暑がりで、のぼせが強く、赤ら顔の方: 心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心などがあらわれることがあります。
- 著しく胃腸の虚弱な方: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、便秘などがあらわれることがあります。
- 食欲不振、悪心、嘔吐のある方: これらの症状が悪化するおそれがあります。
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性: 本剤に含まれる牡丹皮により流早産の危険性があり、また附子の副作用があらわれやすくなるため、投与しないことが望ましいとされています。
- 授乳婦: 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する必要があります。
- 小児等: 慎重に投与する必要があります。本剤には附子が含まれています。
- 高齢者: 一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要です。
他の漢方薬や医薬品と併用する場合には、含有生薬の重複や相互作用に注意が必要です。特に、附子を含む製剤との併用には注意が必要です。
服用中に異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
その他
- 本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与することが重要です。経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けるべきです。
- 本剤は生薬を原料としているため、色調等が異なることがあります。
- 湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい所に保管してください。開封後は特に湿気に注意し、取り扱いに注意してください。
注意事項
この情報は八味地黄丸の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。