麦門冬湯について
麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、漢方薬の一種で、主に呼吸器系の症状、特に空咳や痰の切れにくい咳、喉の乾燥などに用いられます。体力中等度以下で、咽喉が乾燥し、ときに強く咳き込む方に適しています。
主成分
麦門冬湯は、以下の6種類の生薬から構成されています。
- バクモンドウ(麦門冬): オオバジャノヒゲの根の塊茎で、潤肺止咳(肺を潤し、咳を止める)、益胃生津(胃を潤し、体液を生み出す)作用があります。
- ハンゲ(半夏): カラスビシャクの塊茎で、燥湿化痰(乾燥を取り除き、痰を除く)、降逆止嘔(気の逆流を鎮め、吐き気を止める)作用があります。
- タイソウ(大棗): ナツメの果実で、補中益気(消化機能を高め、元気を補う)、緩急和中(急な症状を和らげ、胃腸の調子を整える)作用があります。
- カンゾウ(甘草): マメ科の植物の根やストロンで、鎮咳去痰(咳を鎮め、痰を除く)、緩和作用、解毒作用、炎症を抑える作用など、様々な効果があります。
- ニンジン(人参): オタネニンジンの根で、補気健脾(元気を補い、消化機能を高める)、生津安神(体液を生み出し、精神を安定させる)作用があります。
- コウベイ(粳米): うるち米のことで、健脾養胃(脾臓の機能を高め、胃を養う)作用があります。
これらの生薬が配合されることで、麦門冬湯は独特の薬効を発揮します。
分類
- 漢方製剤
- 去痰鎮咳剤
効能・効果
体力中等度以下で、咽喉が乾燥し、ときに強く咳き込むものの次の諸症:
- 空咳
- しわがれ声
- 咽喉炎
- 気管支炎
- 喘息
特に、痰が切れにくく、喉の乾燥が気になるような咳に適しています。炎症を鎮め、気道を潤すことで、咳を鎮め、呼吸を楽にする効果が期待できます。また、体力を補い、全身状態を改善する働きも持ち合わせています。
用法・用量
通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 煎じ薬の場合: 生薬を水で煮出して服用します。用いる生薬の量や水の量、煮出す時間などは、医療機関や製品によって指示が異なります。
- 顆粒剤・細粒剤の場合: お湯に溶かして服用するか、そのまま水または白湯で服用します。
年齢、体重、症状により適宜増減されますので、必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。自己判断で増減したり、服用を中止したりしないようにしましょう。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
まれに、重篤な副作用として以下のものが報告されています。
- 偽アルドステロン症: 手足のだるさ、筋力低下、血圧上昇、むくみ(浮腫)、体重増加などが現れることがあります。これは、甘草に含まれる成分が影響することがあります。
- ミオパチー: 筋肉痛、脱力感、筋肉のこわばりなどが現れることがあります。偽アルドステロン症に伴って現れることもあります。
- 肝機能障害: 全身倦怠感、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが現れることがあります。
- 間質性肺炎: 咳、息切れ、発熱などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、高齢者や長期服用する場合には注意が必要です。
その他
- 麦門冬湯は、体力中等度以下の人で、喉が乾燥し、咳き込む場合に適しています。体力が充実している人や、痰が黄色く粘稠な咳には適さないことがあります。
- 他の漢方薬や西洋薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。相互作用により、効果が増強したり、副作用が現れやすくなることがあります。
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
- 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。
- 服用しても症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
注意事項
この情報は麦門冬湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。漢方薬は、個人の体質や症状に合わせて処方されることが重要です。
必ず医師または薬剤師の診断を受け、指示に従って服用してください。
自己判断での使用は避け、気になる症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。