七物降下湯(シチモツコウカトウ)について
七物降下湯は、日本で創製された漢方処方の一つで、高血圧に伴う様々な症状の改善に用いられます。比較的体力が中等度以下で、顔面紅潮があり、のぼせや肩こり、めまいなどを伴う方に適しているとされています。7種類の生薬から構成されており、それぞれの生薬が持つ作用が複合的に働くことで効果を発揮します。
主成分
七物降下湯は、以下の7種類の生薬から構成されています。
- 釣藤鈎(チョウトウコウ): 鎮静作用、降圧作用、血管拡張作用などがあるとされ、高血圧に伴う頭痛、めまい、肩こりなどに用いられます。
- 黄耆(オウギ): 補気作用(体のエネルギーを補う)、利尿作用、血管拡張作用などがあるとされ、体力の低下を伴う高血圧やむくみなどに用いられます。
- 芍薬(シャクヤク): 鎮痛作用、鎮痙作用、血管拡張作用などがあるとされ、筋肉のけいれんや痛み、血行不良などに用いられます。
- 地黄(ジオウ): 補血作用(血液を補う)、滋陰作用(体の潤いを補う)などがあるとされ、めまい、耳鳴り、腰痛、足腰の脱力感などを伴う高血圧に用いられます。
- 当帰(トウキ): 補血作用、活血作用(血行を促進する)、鎮痛作用などがあるとされ、血色不良、冷え性、月経不順などを伴う高血圧に用いられます。
- 川芎(センキュウ): 活血作用、駆瘀血作用(血行を改善し、滞った血を巡らせる)、鎮痛作用などがあるとされ、頭痛、肩こりなどを伴う高血圧に用いられます。
- 桃仁(トウニン): 駆瘀血作用、潤腸作用などがあるとされ、便秘傾向のある高血圧などに用いられます。
これらの生薬は、一定の割合で配合されており、単独の生薬では得られない相乗的な効果を発揮すると考えられています。
分類
- 漢方製剤
- 高血圧に伴う随伴症状改善薬
効能・効果
体力中等度以下で、顔面紅潮があり、のぼせ、肩こり、めまいなどを伴うものの次の諸症:
- 高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭痛)
ここでいう「高血圧に伴う随伴症状」とは、高血圧そのものによって引き起こされる症状だけでなく、高血圧を背景に現れやすい様々な不快な症状を指します。七物降下湯は、これらの症状を緩和し、生活の質を改善することを目的として用いられます。
用法・用量
- 通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 顆粒剤や細粒剤の場合、そのまま水または白湯で服用します。
- 煎じ薬の場合は、指示された方法で煎じて服用します。
漢方薬は、患者さんの体質や症状に合わせて処方されるため、自己判断での服用は避けるべきです。必ず専門家の診断に基づいた指示に従ってください。
副作用
漢方薬も医薬品であるため、副作用が起こる可能性があります。七物降下湯の主な副作用としては、以下のものが報告されています。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
比較的まれではあるものの、重大な副作用として以下のようなものが報告されています。
- 肝機能障害: AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が上昇することがあります。倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
- 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などが現れることがあります。異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。これは、甘草(カンゾウ)という生薬に含まれるグリチルリチン酸が原因となることがあります。七物降下湯には甘草は含まれていませんが、他の漢方薬との併用などにより、同様の症状が現れる可能性も否定できません。
- ミオパチー: 低カリウム血症の結果として、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
これらの副作用は、体質や服用状況によって現れる可能性があります。服用中にいつもと違う症状が現れた場合は、自己判断で服用を中止せず、すぐに医師または薬剤師に相談してください。
その他
- 七物降下湯は、高血圧の根本的な治療薬ではなく、随伴する諸症状の緩和を目的として用いられます。高血圧の治療は、医師の指導のもとで行うことが重要です。
- 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。特に、カリウム排泄型利尿薬や降圧薬との併用には注意が必要な場合があります。
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
- 小児への投与については、医師または薬剤師に相談してください。
- 服用により症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
注意事項
この情報は七物降下湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。漢方薬は、個人の体質や症状に合わせて処方されるものです。
必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。