釣藤散

釣藤散(チョウトウサン)について

釣藤散は、日本で生まれた漢方薬の一つで、比較的体力のない方で、慢性的な頭痛やめまい、肩こりなどを伴う高血圧傾向のある方に用いられます。血管拡張作用や鎮静作用、利尿作用などがあるとされ、これらの複合的な作用によって症状の改善を目指します。

釣藤散は、複数の生薬を組み合わせた合剤であり、それぞれの生薬が持つ薬理作用が相互に影響し合うことで、独特の効果を発揮すると考えられています。医療用医薬品としては顆粒剤や細粒剤の形で提供されていますが、一般用医薬品としても販売されています。

主成分

釣藤散は、以下の12種類の生薬から構成されています。

  1. 釣藤(チョウトウ): つる性の植物であるカギカズラの茎や枝から採取される生薬で、鎮静作用や降圧作用があるとされています。本処方の主薬の一つです。
  2. 菊花(キクカ): キクの花から採取される生薬で、頭痛やめまいを和らげる効果、解熱作用があるとされています。
  3. 麦門冬(バクモンドウ): ジャノヒゲの根の膨らんだ部分から採取される生薬で、滋養強壮作用や鎮咳作用、潤肺作用があるとされています。
  4. 半夏(ハンゲ): カラスビシャクの塊茎から採取される生薬で、吐き気や嘔吐を抑える効果、鎮咳去痰作用があるとされています。
  5. 茯苓(ブクリョウ): マツホドというキノコの菌核から採取される生薬で、利尿作用や鎮静作用、健胃作用があるとされています。
  6. 陳皮(チンピ): ミカンの果皮を乾燥させた生薬で、健胃作用や理気作用(気の巡りを良くする作用)があるとされています。
  7. 人参(ニンジン): オタネニンジンの根から採取される生薬で、滋養強壮作用、免疫賦活作用などがあるとされています。
  8. 石膏(セッコウ): 含水硫酸カルシウムを主成分とする鉱物で、解熱作用や鎮静作用があるとされています。
  9. 甘草(カンゾウ): マメ科の植物の根やストロンから採取される生薬で、抗炎症作用や鎮痛作用、去痰作用など多くの薬理作用を持つとされています。
  10. 地黄(ジオウ): アカヤジオウの根から採取される生薬で、補血作用、強壮作用、利尿作用などがあるとされています。
  11. 川芎(センキュウ): セリ科の植物の根茎から採取される生薬で、血行促進作用、鎮痛作用、婦人科系の疾患に用いられることがあります。
  12. 防風(ボウフウ): ボウフウの根から採取される生薬で、発汗作用、解熱作用、鎮痛作用などがあるとされています。

これらの生薬が、それぞれの特性を生かしながら、複合的に作用することで、釣藤散の効能・効果を発揮すると考えられています。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

比較的体力のない方で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどを伴うものの次の諸症:

  • 高血圧傾向
  • 慢性頭痛
  • 神経症

この効能・効果は、医療用医薬品としての記載であり、一般用医薬品では異なる場合があります。

用法・用量

  • 医療用医薬品: 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 一般用医薬品: 製品によって用法・用量が異なりますので、製品の添付文書をよく読んで、用法・用量を守って服用してください。通常、成人1回1包(または定められた量)を1日2~3回、食前または食間に服用します。

いずれの場合も、必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。釣藤散の主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 皮膚: 発疹、かゆみなど
  • 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの肝機能検査値の上昇

また、釣藤散に含まれる甘草の作用により、まれに以下の重篤な副作用が現れることがあります。

  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋肉の脱力感、筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

その他

  • 釣藤散は、比較的体力のない方に向いている漢方薬です。体力が充実している方には、他の漢方薬が適している場合があります。
  • 服用前に、ご自身の体質や症状について医師、薬剤師または登録販売者に相談することが大切です。
  • 他の医薬品や健康食品との飲み合わせについて、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
  • 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。
  • 長期間服用しても症状の改善が見られない場合は、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
  • 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
  • 小児の手の届かない所に保管してください。

注意事項

  • この情報は釣藤散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、医療用医薬品の添付文書、またはお買い求めの一般用医薬品の製品添付文書をご確認いただくか、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。