五淋散

五淋散について

五淋散(ごりんさん)は、漢方処方の一つであり、主に排尿に関するトラブル、特に膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系の炎症や症状の緩和に用いられます。複数の生薬を組み合わせることで、炎症を鎮め、利尿作用を促し、菌を洗い流すなどの効果が期待されます。

主成分

五淋散は、以下の11種類の生薬から構成されています。それぞれの生薬が持つ薬理作用が複合的に働くことで、効果を発揮します。

  1. トウキ(当帰): 血行を促進し、鎮痛・抗炎症作用、排膿作用などが期待されます。
  2. モクツウ(木通): 利尿作用があり、体内の余分な水分を排出し、炎症を鎮める効果があるとされます。
  3. シャクヤク(芍薬): 鎮痛・鎮痙作用、抗炎症作用があり、痛みを和らげる効果が期待されます。
  4. ジオウ(地黄): 滋養強壮作用、止血作用、抗炎症作用などがあるとされ、体力を補いながら炎症を抑えると考えられています。
  5. オウゴン(黄芩): 抗炎症作用、抗菌作用、解熱作用があり、炎症を鎮め、細菌の増殖を抑える効果が期待されます。
  6. サンシシ(山梔子): 消炎・利胆作用、精神安定作用などがあり、炎症を鎮め、精神的な不安を和らげる効果も期待されます。
  7. ブクリョウ(茯苓): 利尿作用、健脾作用、精神安定作用があり、水分代謝を改善し、胃腸の働きを整え、精神的な安定を促すとされます。
  8. タクシャ(沢瀉): 利尿作用があり、体内の余分な水分を排出し、炎症を抑える効果があるとされます。
  9. カンゾウ(甘草): 抗炎症作用、鎮痛作用、去痰作用などがあり、炎症を鎮め、痛みを和らげる効果が期待されます。
  10. ダイオウ(大黄): 瀉下作用があり、便通を促し、体内の老廃物を排出する効果があるとされます。
  11. カッセキ(滑石): 利尿作用、清熱作用があり、体内の余分な水分を排出し、熱を冷ます効果があるとされます。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

比較的体力があり、ときに下腹部痛、排尿痛、残尿感、頻尿があるものの次の諸症:

  • 膀胱炎
  • 尿道炎
  • 腎盂炎
  • 尿路結石

これらの症状は、細菌感染や炎症によって引き起こされることが多く、五淋散はこれらの炎症を鎮め、排尿をスムーズにすることで症状の改善を目指します。特に、比較的体力がある方の急性または慢性の泌尿器系炎症に対して用いられることが多いです。

用法・用量

  • 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 製品によっては、1回分の用量が顆粒や錠剤の数で指示されている場合がありますので、添付文書をよく確認してください。
  • 煎じ薬の場合は、生薬を水で煮出して服用します。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 皮膚症状: 発疹、かゆみなど
  • 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇が見られることがあります。
  • 偽アルドステロン症: まれに低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、脱力感などが現れることがあります(甘草の長期大量服用による)。
  • 腸間膜静脈硬化症: まれに長期服用により、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返されることがあります(大黄を含む製剤)。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、高齢者や体力の低下している方は、副作用が現れやすい場合がありますので注意が必要です。

その他

  • 五淋散は、症状の根本的な原因を取り除くのではなく、症状を緩和することを目的とした薬です。細菌感染が原因の場合には、抗菌薬など他の治療が必要となることがあります。
  • 服用前に、自身の体質や症状について医師または薬剤師に詳しく相談することが大切です。
  • 他の医薬品や健康食品との飲み合わせによっては、効果が増強したり、副作用が現れやすくなることがありますので、併用する場合には必ず医師または薬剤師に相談してください。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。特に、大黄を含む製剤は注意が必要です。
  • 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。

注意事項

  • この情報は五淋散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。