炙甘草湯

炙甘草湯(シャカンゾウトウ)について

炙甘草湯は、漢方薬の一種であり、体力中等度以下で、脈が弱く、ときに動悸、息切れ、むくみ、めまいがあるものの、病後の体力低下、疲労倦怠、感冒後期の諸症状、不眠、神経症、更年期障害、立ちくらみ、動悸、息切れ、むくみ、咽喉痛に用いられます。古くから心臓の病や神経の病に用いられてきた処方です。

主成分

炙甘草湯は、以下の9種類の生薬から構成されています。

  1. 炙甘草(シャカンゾウ): マメ科のGlycyrrhiza uralensis FischerまたはGlycyrrhiza glabra Linneの根およびストロンを軽くあぶり乾燥したもの。主な薬理作用として、鎮痙、抗炎症、鎮咳、去痰、副腎皮質ホルモン様作用などが知られています。甘味があり、他の生薬の作用を調和する役割も果たします。
  2. 桂皮(ケイヒ): クスノキ科のCinnamomum cassia Preslの樹皮または周皮の一部を除いたもの。発汗、解熱、鎮痛、健胃、駆風などの作用があります。体を温め、血行を促進する効果も期待されます。
  3. 人参(ニンジン): ウコギ科のPanax ginseng C.A.Meyerの根を乾燥したもの。滋養強壮、健胃、抗疲労、免疫賦活などの作用があります。体力を補い、抵抗力を高める効果が期待されます。
  4. 生地黄(ジオウ): ゴマノハグサ科のRehmannia glutinosa Liboschitz var. purpurea Makinoの根をそのまま、または軽く湯通ししたものを乾燥したもの。補血、滋陰、清熱などの作用があります。血液を補い、体の潤いを保つ効果が期待されます。
  5. 麦門冬(バクモンドウ): ユリ科のLiriope spicata LoureiroまたはOphiopogon japonicus (Linn. fil.) Ker-Gawlerの塊根を乾燥したもの。滋養強壮、鎮咳、去痰、潤肺などの作用があります。呼吸器系の症状を改善し、体の潤いを補う効果が期待されます。
  6. 麻子仁(マシニン): アサ科の一年草であるアサの種子。緩下作用、鎮痛作用、滋養作用などがあります。便通を促し、体を潤す効果が期待されます。
  7. 大棗(タイソウ): クロウメモドキ科のナツメの成熟果実を乾燥したもの。滋養強壮、鎮静、緩和などの作用があります。体力を補い、精神を安定させる効果が期待されます。
  8. 阿膠(アキョウ): ウマ科のロバの皮を水で煮て濃縮した膠。補血、止血、滋陰潤燥などの作用があります。血液を補い、体の乾燥を潤す効果が期待されます。
  9. 生姜(ショウキョウ): ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥したもの。発汗、解熱、鎮吐、健胃などの作用があります。体を温め、消化機能を助ける効果が期待されます。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力中等度以下で、脈が弱く、ときに動悸、息切れ、むくみ、めまいがあるものの次の諸症:

  • 病後の体力低下、疲労倦怠
  • 感冒後期の諸症状
  • 不眠
  • 神経症
  • 更年期障害
  • 立ちくらみ
  • 動悸
  • 息切れ
  • むくみ
  • 咽喉痛

用法・用量

  • 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤の場合、そのまま水またはお湯で服用するか、お湯に溶かして服用します。
  • 煎じ薬の場合は、指示された方法で煎じて服用します。

副作用

炙甘草湯は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては以下の副作用が現れることがあります。

  • 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど
  • 肝機能障害: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTPなどの上昇
  • 偽アルドステロン症: まれに低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加などの症状が現れることがあります。これは、主成分である甘草に含まれるグリチルリチン酸が、体内の電解質バランスに影響を与えるために起こることがあります。長期連用により現れやすいとされています。
  • ミオパチー: まれに脱力感、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺などの症状が現れることがあります。これもグリチルリチン酸の影響による可能性があります。

重大な副作用

上記のような症状が現れた場合には、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、偽アルドステロン症やミオパチーの初期症状に注意が必要です。

その他

  • 医師の治療を受けている人や、他の医薬品を使用している場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
  • 小児、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、医師または薬剤師に相談してから服用してください。
  • 体質や症状に合わない場合は、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
  • 長期間服用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。特に、甘草を含有する他の製剤との併用は、グリチルリチン酸の過剰摂取につながる可能性があるため注意が必要です。

注意事項

  • この情報は炙甘草湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。