帰脾湯

帰脾湯(キヒトウ)について

帰脾湯は、漢方処方の一つであり、体力が中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪い方の、精神不安、不眠、健忘、動悸、息切れ、食欲不振、下痢などに用いられます。心と体のバランスを整え、気血を補うことでこれらの症状を改善するとされています。医療用医薬品としてだけでなく、一般用医薬品としても販売されています。

主成分

帰脾湯は、以下の12種類の生薬から構成されています。それぞれの生薬が持つ薬効が複合的に作用し、効果を発揮します。

  1. 人参(ニンジン): オタネニンジンの根で、滋養強壮、補気作用があり、全身の機能を高めます。
  2. 白朮(ビャクジュツ): オケラの根茎で、健脾燥湿作用があり、胃腸機能を整え、余分な水分を取り除くのを助けます。
  3. 茯苓(ブクリョウ): マツホドの菌核で、利水滲湿作用、健脾安神作用があり、水分代謝を改善し、精神を安定させます。
  4. 黄耆(オウギ): キバナオウギなどの根で、補気昇陽作用、固表止汗作用があり、エネルギーを高め、免疫力を高めるとされます。
  5. 当帰(トウキ): トウキの根で、補血活血作用があり、血を補い、血行を促進します。
  6. 酸棗仁(サンソウニン): サネブトナツメの種子で、補肝寧心作用があり、精神を安定させ、不眠を改善します。
  7. 竜眼肉(リュウガンニク): リュウガンの仮種皮で、補心脾、養血安神作用があり、心と脾を補い、精神を安定させます。
  8. 木香(モッコウ): モッコウの根で、理気止痛、健脾消食作用があり、気の流れを整え、消化不良を改善します。
  9. 大棗(タイソウ): ナツメの果実で、補中益気、養血安神作用があり、消化機能を助け、精神を安定させます。
  10. 甘草(カンゾウ): ウラルカンゾウなどの根やストロンで、調和作用、緩解作用があり、他の生薬の作用を調和し、炎症を抑える効果も期待されます。
  11. 生姜(ショウキョウ): ショウガの根茎で、温中散寒、健胃止嘔作用があり、体を温め、胃腸機能を高めます。
  12. 遠志(オンジ): ヒメハギの根で、安神益智、去痰開竅作用があり、精神を安定させ、記憶力を高めるとされます。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力が中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪いものの次の諸症:

  • 精神不安
  • 不眠症
  • 健忘症
  • 動悸
  • 息切れ
  • 神経症

また、医療用医薬品としての効能・効果には、上記に加えて以下のような記載が見られる場合があります(製品によって異なることがあります)。

  • 貧血
  • 食欲不振
  • 下痢

用法・用量

  • 医療用医薬品の場合: 通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 一般用医薬品の場合: 製品によって用法・用量が異なりますので、製品の添付文書をよく読んで、指示に従って服用してください。通常、成人(15歳以上)は1回量を守り、1日2~3回、食前または食間に水または白湯で服用します。

いずれの場合も、必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。

副作用

帰脾湯は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など
  • 皮膚: 発疹、かゆみなど
  • その他: 肝機能異常(まれに)、発熱、倦怠感など

重大な副作用

重大な副作用は比較的まれですが、以下のような報告があります。

  • 偽アルドステロン症: 長期間または大量に服用した場合、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあります。
  • ミオパチー: 長期間または大量に服用した場合、脱力感、筋肉痛などの症状が現れることがあります。
  • 肝機能障害: まれに、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALPなどの上昇を伴う肝機能障害が現れることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 帰脾湯は、証(しょう)と呼ばれる体質や症状のパターンに合致する場合に効果を発揮します。漢方専門医や漢方薬に詳しい医師、薬剤師に相談し、自分の体質に合った漢方薬を選ぶことが重要です。
  • 服用中に症状が悪化したり、改善が見られない場合は、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
  • 他の医薬品やサプリメントとの飲み合わせについては、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
  • 小児、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性、体の虚弱な人、胃腸の弱い人、食欲不振、悪心、嘔吐のある人などは、服用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談することが推奨されます。
  • 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
  • 小児の手の届かない所に保管してください。

注意事項

  • この情報は帰脾湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、医療機関を受診するか、製品の添付文書をご確認いただくか、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。