麻杏甘石湯

麻杏甘石湯について

麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)は、漢方薬の一種であり、比較的体力のある人で、咳が出て、ときに息苦しさがあるものの症状に用いられます。気管支炎や喘息、肺炎などの呼吸器系の疾患に対して用いられることが多い漢方薬です。

主成分

麻杏甘石湯は、以下の4つの生薬から構成されています。

  • 麻黄(マオウ): 発汗、鎮咳、去痰作用があります。交感神経を刺激するエフェドリンなどの成分を含み、気管支を拡張させる効果や、体表の邪気を発散させる作用があります。
  • 杏仁(キョウニン): 鎮咳、去痰作用があります。咳を鎮め、痰を出しやすくする効果があります。
  • 甘草(カンゾウ): 鎮痛、抗炎症、鎮痙作用、緩和作用などがあります。他の生薬の作用を調和させる働きもあります。
  • 石膏(セッコウ): 清熱、瀉火、除煩作用があります。体の熱を冷まし、炎症を鎮める効果があります。

これらの生薬が相互に作用することで、麻杏甘石湯としての効果を発揮します。

分類

  • 漢方薬
  • 気管支拡張・鎮咳去痰剤

効能・効果

比較的体力のあるものの次の諸症:

  • 喘息
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 百日咳

主に、熱があって咳がひどく、ゼーゼーと喘鳴(ぜんめい:呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという音)を伴うような場合に用いられます。炎症を鎮め、気管支を拡張し、痰の排出を促すことで、呼吸を楽にする効果が期待できます。

用法・用量

通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。

  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤や煎じ薬など、剤形によって服用方法が異なる場合がありますので、指示に従ってください。
  • 他の薬剤との併用については、必ず医師または薬剤師に相談してください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど
  • その他: 動悸、のぼせ、発汗過多、排尿困難(特に前立腺肥大のある男性)

麻黄に含まれるエフェドリン類による副作用

麻黄にはエフェドリンやメチルエフェドリンなどの交感神経刺激成分が含まれているため、以下のような副作用が現れることがあります。

  • 循環器系: 動悸、血圧上昇、不整脈
  • 精神神経系: 不眠、不安、興奮、めまい、頭痛
  • その他: 発汗過多、食欲不振

甘草に含まれるグリチルリチン酸による偽アルドステロン症

甘草を大量にまたは長期に服用した場合、偽アルドステロン症という副作用が現れることがあります。これは、体内の電解質バランスが崩れることで起こり、以下の症状が現れることがあります。

  • 低カリウム血症
  • 血圧上昇
  • 浮腫(むくみ)
  • 体重増加
  • 脱力感

重大な副作用

まれに、以下の重大な副作用が報告されています。

  • 間質性肺炎: 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする、空咳が出る、発熱などがみられ、これらの症状が急にあらわれたり、持続したりする。(初期症状に注意し、異常が認められた場合には直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。)
  • 肝機能障害: 全身倦怠感、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、食欲不振などがみられることがあります。(異常が認められた場合には直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。)
  • 偽アルドステロン症: 上記の症状が現れることがあります。(異常が認められた場合には直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。)
  • ミオパチー: 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。(異常が認められた場合には直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。)

その他

  • 医師の治療を受けている人や、他の薬を服用している場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
  • 高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能亢進症の診断を受けた人、体の虚弱な人、発汗傾向の著しい人、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、特に慎重な投与が必要です。
  • 小児への投与は、医師または薬剤師の指示に従ってください。
  • 服用中に異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
  • 長期間の服用は、副作用のリスクを高める可能性がありますので、医師または薬剤師の指示に従った期間内で服用してください。

注意事項

  • この情報は麻杏甘石湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。