平胃散

平胃散について

平胃散(へいいさん)は、漢方処方の一つであり、主に胃腸の不調を改善するために用いられます。胃もたれ、食欲不振、消化不良などの症状に効果があるとされています。複数の生薬を組み合わせたもので、体全体のバランスを整えることを目的としています。

主成分

平胃散は、以下の5種類の生薬から構成されています。それぞれの生薬が持つ薬理作用によって、総合的な効果を発揮します。

  1. 蒼朮(ソウジュツ): キク科のホソバオケラの根茎を乾燥させたものです。主な作用としては、健脾燥湿(けんぴそうしつ)作用があります。これは、脾(消化器系の機能)を健やかにし、体内の余分な水分(湿邪)を取り除く働きを意味します。胃腸の機能を高め、消化不良や食欲不振、むくみなどを改善する効果が期待されます。また、芳香性があり、胃腸の働きを活発にする作用もあります。

  2. 厚朴(コウボク): モクレン科のホオノキやシナホオノキの樹皮を乾燥させたものです。主な作用は、行気化湿(こうきかしつ)作用です。これは、気の巡りを良くし、体内の余分な水分を取り除く働きを意味します。特に、胃腸の気の滞りを改善し、腹部の膨満感や食欲不振、吐き気などを和らげる効果があります。また、苦味があり、消化を助ける作用も知られています。

  3. 陳皮(チンピ): ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟した果皮を乾燥させたものです。主な作用は、理気健脾(りきけんぴ)作用と燥湿化痰(そうしつかたん)作用です。気の巡りを整え、脾の働きを健やかにするだけでなく、体内の余分な水分を取り除き、痰を除く効果もあります。芳香があり、食欲増進や消化促進、吐き気止めなどの作用が期待されます。

  4. 甘草(カンゾウ): マメ科のウラルカンゾウなどの根やストロンを乾燥させたものです。主な作用は、補中益気(ほちゅうえっき)作用、調和諸薬(ちょうわしょやく)作用、緩急止痛(かんきゅうしつう)作用など多岐にわたります。消化器系の機能を助け、他の生薬の作用を調和し、腹痛などの痛みを和らげる効果があります。また、抗炎症作用や鎮咳作用も知られています。

  5. 生姜(ショウキョウ): ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたものです。主な作用は、散寒解表(さんかんげひょう)作用、温中止嘔(おんちゅうしおう)作用などです。体を温めて寒気を取り除き、発汗を促す作用や、胃腸を温めて吐き気を止める効果があります。平胃散においては、胃腸を温め、消化を助ける役割を担っています。

分類

  • 漢方薬(医療用医薬品、一般用医薬品)

効能・効果

体力中等度で、胃もたれ、食欲不振、消化不良、腹部膨満感のあるものの次の諸症

  • 胃炎
  • 胃アトニー
  • 消化不良
  • 食欲不振
  • 胃痛
  • 嘔吐

上記は一般的な効能・効果であり、製品によって若干異なる場合があります。必ず添付文書を確認してください。

用法・用量

  • 医療用医薬品: 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 一般用医薬品: 製品によって用法・用量が異なりますので、添付文書をよく読んで、指示に従って服用してください。一般的には、成人1回1包(または定められた量)を1日3回、食前または食間に水または白湯で服用します。

いずれの場合も、必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。

副作用

漢方薬は比較的副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器: 悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢など
  • 皮膚: 発疹、かゆみなど
  • 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇

重大な副作用

  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、脱力感、手足の麻痺などが現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇などが現れることがあります。
  • 肝機能障害、黄疸: まれに肝臓の機能が悪化し、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れることがあります。

上記のような症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

その他

  • 平胃散は、比較的体力が中等度で、胃腸の機能が低下している方に適しています。
  • 服用前に、自分の体質や症状について医師、薬剤師または登録販売者に相談することが望ましいです。
  • 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、相互作用に注意が必要です。必ず医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
  • 小児、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性、体の虚弱な人、胃腸の弱い人、食欲不振、悪心・嘔吐のある人などは、特に注意が必要です。
  • 長期間服用しても症状の改善が見られない場合は、服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

注意事項

  • この情報は平胃散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師、薬剤師または登録販売者の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。