当帰飲子

当帰飲子(とうきいんし)について

当帰飲子は、日本で古くから用いられてきた漢方薬の一つです。皮膚科領域で用いられることが多く、乾燥性の皮膚疾患やそれに伴うかゆみに対して効果を発揮します。体力中等度以下で、皮膚が乾燥し、色つやが悪く、かゆみがあり、時に亀裂を生じるものの症状に用いられます。

主成分

当帰飲子は、以下の6種類の生薬から構成されています。

  1. 当帰(トウキ): セリ科のトウキまたは近縁植物の根を乾燥させたもの。血行を促進し、鎮痛、抗炎症作用、保湿作用などがあるとされます。婦人科系の疾患にも広く用いられる生薬です。
  2. 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクまたはベニバナボクの根を乾燥させたもの。鎮痛、鎮痙、抗炎症作用、止血作用などがあるとされます。筋肉のけいれんや痛みを和らげる効果も期待されます。
  3. 地黄(ジオウ): ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥または蒸したものです。造血作用、滋養強壮作用、止血作用、血糖降下作用などがあるとされます。皮膚の乾燥を改善する効果も期待されます。
  4. 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎を乾燥させたもの。血行促進作用、鎮痛作用、鎮静作用などがあるとされます。頭痛や婦人科系の症状にも用いられます。
  5. 防風(ボウフウ): セリ科のボウフウの根および根茎を乾燥させたもの。発汗、鎮痛、鎮痙作用、抗炎症作用などがあるとされます。皮膚表面のバリア機能を助けるとも考えられています。
  6. 荊芥(ケイガイ): シソ科のケイガイの花穂を乾燥させたもの。発汗、解熱、鎮痛作用があるとされます。皮膚のかゆみを和らげる効果も期待されます。

これらの生薬が配合されることで、単独の生薬では得られない複合的な効果を発揮すると考えられています。

分類

  • 漢方製剤
  • 皮膚科用薬(主に)

効能・効果

体力中等度以下で、皮膚が乾燥し、色つやが悪く、かゆみがあり、時に亀裂を生じるものの次の諸症:

  • 湿疹・皮膚炎
  • じんましん
  • 皮膚のかゆみ
  • 亀裂(ひび・あかぎれ)

これらの効能・効果は、漢方医学的な証(体質や症状の現れ方)に基づいて定められています。当帰飲子は、特に皮膚の乾燥が強く、かゆみを伴うような状態に適しているとされます。

用法・用量

  • 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤やエキス剤など、剤形によって用法・用量が異なる場合がありますので、指示された用法・用量を守ることが重要です。
  • 生薬の配合された漢方薬であるため、煎じ薬の場合は、生薬を水で煮出して服用します。エキス顆粒剤や錠剤の場合は、そのまま水またはぬるま湯で服用します。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては予期せぬ症状が現れることがあります。当帰飲子の主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

まれに、重篤な副作用として肝機能障害が現れることがあります。倦怠感、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

また、漢方薬は生薬の組み合わせによって効果を発揮するため、他の薬剤との相互作用には注意が必要です。現在服用している薬がある場合は、必ず医師または薬剤師に伝えてください。

その他

  • 当帰飲子は、症状や体質に合わせて使用される漢方薬です。自己判断で使用せず、必ず医師の診断に基づいて服用してください。
  • 服用期間や他の治療法との併用についても、医師または薬剤師の指示に従ってください。
  • 小児や高齢者、妊娠中または授乳中の方、体の虚弱な方などは、特に慎重な投与が必要となる場合があります。必ず医師に相談してください。
  • 生薬の品質や保管状態によって、効果や品質に影響が出ることがあります。直射日光や高温多湿を避け、涼しい場所に保管してください。
  • 開封後の長期保存は避けるようにしてください。

注意事項

  • この情報は当帰飲子の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。