酸棗仁湯

酸棗仁湯(サンソウニントウ)について

酸棗仁湯は、漢方薬の一種であり、神経の高ぶりや興奮を鎮め、精神を安定させる効果があるとされています。主に、不眠症や神経症など、精神的な不調に伴う様々な症状の改善に用いられます。体力中等度以下で、心身が疲れて眠れないといった状態の方に適しています。

主成分

酸棗仁湯は、以下の5種類の生薬から構成されています。

  • 酸棗仁(サンソウニン): クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子を乾燥させたもの。鎮静作用、催眠作用、精神安定作用があるとされ、不眠や不安、動悸などに用いられます。
  • 知母(チモ): ユリ科のハナスゲの根茎を乾燥させたもの。清熱瀉火(体の熱を冷まし、炎症を鎮める)、滋陰(体の潤いを補う)作用があるとされ、ほてりやのぼせ、口の渇きなどを伴う不眠に用いられます。
  • 茯苓(ブクリョウ): サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。利水滲湿(体内の余分な水分を取り除く)、健脾安神(胃腸の働きを助け、精神を安定させる)作用があるとされ、むくみやめまい、不安感、不眠などに用いられます。
  • 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎を乾燥させたもの。活血行気(血の巡りを良くし、気の流れを整える)、鎮痛作用があるとされ、頭痛や肩こり、生理痛などに用いられます。酸棗仁湯においては、精神安定作用を助けると考えられています。
  • 甘草(カンゾウ): マメ科のウラルカンゾウまたはグリチルリザ・グラブラの根およびストロンを乾燥させたもの。緩和作用、鎮痛作用、抗炎症作用などがあり、他の生薬の作用を調和させる役割も果たします。

これらの生薬が、それぞれの薬理作用を相互に補完し合いながら、酸棗仁湯としての効果を発揮すると考えられています。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力中等度以下で、心身が疲れて眠れないもの

  • 不眠症
  • 神経症

具体的には、精神的な不安やイライラ、動悸、のぼせなどを伴い、なかなか寝付けない、眠りが浅い、途中で目が覚めてしまうといった症状に用いられます。

用法・用量

  • 通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤や煎じ薬など、製剤によって服用方法が異なる場合がありますので、指示に従ってください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど

まれに、以下の重篤な副作用が報告されています。

  • 肝機能障害: 全身倦怠感、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、食欲不振などが現れることがあります。
  • 偽アルドステロン症: 血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれなどが現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋力低下、筋肉痛などが現れることがあります。偽アルドステロン症に伴って現れることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 酸棗仁湯は、証(しょう)と呼ばれる患者さんの体質や症状に合わせて処方される漢方薬です。そのため、自己判断で使用せず、必ず医師または薬剤師の診断に基づいて服用してください。
  • 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
  • 小児への投与については、医師または薬剤師の指示に従ってください。
  • 服用しても症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
  • 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
  • 小児の手の届かない所に保管してください。
  • 誤用を避け、品質を保持するため、他の容器に入れ替えないでください。

注意事項

この情報は酸棗仁湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。

必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。

より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。