通導散

通導散(ツウドウサン)について

通導散は、比較的体力があり、便秘がちで、のぼせや肩こり、頭痛などを伴う方の月経不順、月経痛、更年期障害、高血圧に伴う症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭痛)、痔疾、打ち身、ねん挫などに用いられる漢方薬です。複数の生薬を組み合わせることで、血行を促進し、便通を整え、炎症を鎮めるなどの効果を発揮すると考えられています。

主成分(構成生薬)

通導散は、以下の11種類の生薬から構成されています。

  1. 大黄(ダイオウ): 瀉下作用があり、便秘を改善します。
  2. 芒硝(ボウショウ): 瀉下作用を助け、便を軟化させる効果があります。
  3. 当帰(トウキ): 血液の流れを良くし、鎮痛、鎮静作用があるとされます。婦人科系の疾患によく用いられます。
  4. 芍薬(シャクヤク): 筋肉の痙攣を鎮め、痛みを和らげる効果や、血行を促進する作用があります。
  5. 桃仁(トウニン): 瘀血(おけつ:血行不良)を改善し、月経不順や月経痛などに用いられます。
  6. 紅花(コウカ): 血行を促進し、瘀血を改善する効果があります。のぼせや肩こりなどにも用いられます。
  7. 甘草(カンゾウ): 炎症を抑え、痛みを和らげる効果や、胃腸の調子を整える作用があります。他の生薬の作用を調和する役割も担います。
  8. 荊芥(ケイガイ): 発汗作用や解熱作用、鎮痛作用があるとされます。
  9. 防風(ボウフウ): 発汗作用や鎮痛作用、抗炎症作用があるとされます。
  10. 滑石(カッセキ): 利尿作用があり、体内の余分な水分を排出するのを助けます。
  11. 木通(モクツウ): 利尿作用や消炎作用があるとされます。

これらの生薬が、それぞれの作用を相互に補完し合いながら、通導散としての効果を発揮すると考えられています。

分類

  • 漢方薬
  • その他(主に婦人科領域、整形外科領域、皮膚科領域などで用いられる処方)

効能・効果

比較的体力があり、便秘しがちで、のぼせ、肩こり、頭痛などを訴えるものの次の諸症。

  • 月経不順
  • 月経痛
  • 更年期障害
  • 高血圧に伴う症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭痛)
  • 痔疾
  • 打撲症
  • 捻挫

このように、通導散は女性特有の症状だけでなく、高血圧に伴う症状や、外傷による症状にも用いられる幅広い効果を持つ漢方薬です。特に、便秘を伴う症状に対して用いられることが多いのが特徴です。

用法・用量

  • 通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤や煎じ薬など、剤形によって服用方法が異なる場合がありますので、指示に従ってください。

漢方薬は、患者さんの体質や症状に合わせて処方されるため、自己判断での服用は避けるべきです。医師や薬剤師に相談し、適切な用法・用量で服用することが大切です。

副作用

通導散は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器症状: 軟便、下痢、腹痛、食欲不振、胃部不快感など。特に、大黄や芒硝といった瀉下作用のある生薬が含まれているため、これらの症状が出やすい場合があります。
  • 皮膚症状: 発疹、かゆみなど。
  • 肝機能異常: まれに、AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能検査値の上昇が報告されています。
  • その他: 動悸、のぼせ、発汗などがみられることもあります。

重大な副作用

まれに、以下の重大な副作用が報告されています。

  • 間質性肺炎: 階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする、空咳が出る、発熱するなどがみられた場合、直ちに服用を中止し、医師の診療を受けてください。
  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、脱力感などが現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋肉痛、脱力感、手足のしびれなどが現れることがあります。
  • 肝機能障害、黄疸: 全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどが現れることがあります。

これらの重大な副作用は、初期症状に気づきにくい場合もありますので、体調の変化に注意し、異常を感じたらすぐに医師または薬剤師に連絡してください。

その他

  • 他の医薬品(特に瀉下薬)との併用には注意が必要です。
  • 妊娠または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性のある方は、服用前に必ず医師に相談してください。
  • 小児への投与は、慎重に行う必要があります。医師または薬剤師の指示に従ってください。
  • アレルギー体質の方や、過去に漢方薬で副作用が出たことのある方は、必ず医師または薬剤師に伝えてください。
  • 長期間服用する場合は、定期的に医師または薬剤師に相談し、体調の変化を確認してもらうようにしましょう。

通導散は、その効果と比較的穏やかな作用から、多くの女性の悩みに用いられてきた漢方薬です。しかし、体質によっては合わない場合や、副作用が現れる可能性もあります。安全かつ効果的に服用するためには、専門家である医師や薬剤師の指導のもとで使用することが重要です。