清暑益気湯について
清暑益気湯(せいしょえっきとう)は、漢方処方の一つであり、暑さによる体調不良、いわゆる「夏バテ」の諸症状を改善するために用いられます。体力低下、食欲不振、倦怠感、多汗などが見られる場合に適しています。複数の生薬を組み合わせることで、体にこもった熱を冷ましつつ、不足した気(き)を補い、体力を回復させる効果が期待できます。
清暑益気湯は、医療用医薬品として医療機関で処方されるだけでなく、一般用医薬品としてもドラッグストアなどで購入することができます。剤形としては、煎じ薬(生薬を煮出して服用する)、顆粒剤、細粒剤、錠剤などがあります。
主成分
清暑益気湯は、以下の10種類の生薬から構成されています。
- 人参(ニンジン): オタネニンジンの根で、滋養強壮、健胃、疲労回復などの効果があります。気を補い、体力を高める重要な生薬です。
- 蒼朮(ソウジュツ): オケラの根茎で、利水作用、健胃作用、発汗作用などがあります。体内の余分な水分を取り除き、消化機能を助けます。
- 麦門冬(バクモンドウ): ジャノヒゲの根の塊茎で、潤肺止咳、益胃生津などの効果があります。乾燥した咳を鎮め、胃の潤いを補います。
- 黄耆(オウギ): キバナオウギの根で、補気昇陽、固表止汗、利水消腫などの効果があります。気を補い、免疫力を高め、汗を止める作用があります。
- 甘草(カンゾウ): ウラルカンゾウなどの根やストロンで、鎮痛、抗炎症、去痰、緩和などの効果があります。他の生薬の作用を調和させる役割も持ちます。
- 陳皮(チンピ): ミカンの果皮で、理気健脾、燥湿化痰などの効果があります。気の巡りを良くし、消化不良を改善し、痰を取り除く作用があります。
- 升麻(ショウマ): シナノキンバイなどの根茎で、昇陽挙陥、透疹解毒などの効果があります。下がった気を持ち上げ、皮膚の炎症を鎮める作用があります。
- 当帰(トウキ): トウキの根で、補血活血、調経止痛などの効果があります。血を補い、血行を促進し、痛みを和らげる作用があります。
- 五味子(ゴミシ): マツブサの果実で、斂肺止咳、滋腎寧心などの効果があります。咳を鎮め、腎機能を高め、精神を安定させる作用があります。
- 葛根(カッコン): クズの根で、解表散寒、生津舒筋などの効果があります。体の表面の熱を取り除き、筋肉の緊張を和らげる作用があります。
これらの生薬が、それぞれの薬理作用を発揮し、複合的に作用することで、清暑益気湯の効能・効果が現れます。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
体力中等度以下で、疲れやすくて、汗が出やすく、ときにのどが渇くものの次の諸症:
- 夏かぜ、暑さによる食欲不振・全身倦怠感
比較的体力が低下しており、暑さによって食欲不振や全身の倦怠感、微熱、多汗、口渇などの症状が見られる場合に用いられます。夏風邪の初期や、いわゆる夏バテの症状に適応します。
用法・用量
- 煎じ薬: 生薬を水で煮出し、濾して温服します。生薬の種類や量によって煮出す時間や水の量が異なります。医師または薬剤師の指示に従ってください。
- 顆粒剤・細粒剤: 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に水または白湯で服用します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 錠剤: 製品によって用法・用量が異なります。添付文書または医師、薬剤師の指示に従ってください。
いずれの剤形においても、定められた用法・用量を守って服用することが重要です。自己判断で増減したり、服用を中止したりしないでください。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によってはまれに副作用が現れることがあります。清暑益気湯で報告されている主な副作用としては、以下のものがあります。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
また、甘草を含むため、長期連用により偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、低カリウム血症など)が現れることがあります。特に、他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。定期的な検査が必要となる場合もありますので、医師の指示に従ってください。
その他
- 医師の治療を受けている人や、他の医薬品を服用している場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 妊娠または授乳中の女性、高齢者、小児などは、服用前に医師または薬剤師に相談することが望ましいです。
- 服用しても症状の改善が見られない場合は、服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
- 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
- 小児の手の届かない所に保管してください。
- 他の容器に入れ替えないでください。(誤用の原因になったり品質が変わることがあります。)
- 使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。
注意事項
この情報は清暑益気湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。体質や症状によって適切な漢方薬は異なります。
必ず医師または薬剤師の診断を受け、指示に従って服用してください。
より詳しい情報が必要な場合は、医療機関を受診するか、薬局・ドラッグストアの薬剤師にご相談ください。また、製品の添付文書をよくお読みください。