アスピリン

アスピリンは、サリチル酸誘導体であり、解熱、鎮痛、抗炎症作用、そして血小板凝集抑制作用を持つ代表的な非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一つです。幅広い疾患や症状に対して用いられており、一般用医薬品としても広く販売されています。

主成分

  • アセチルサリチル酸

分類

  • 解熱鎮痛消炎薬(非ステロイド性抗炎症薬 – NSAIDs)
  • 抗血小板薬(低用量の場合)

効能・効果

アスピリンは、用量によって異なる主な効能・効果を示します。

解熱鎮痛消炎の目的で使用する場合(比較的高用量)

  • 発熱、疼痛、炎症を伴う下記疾患
    • 関節リウマチ
    • 変形性関節症
    • リウマチ熱
    • 痛風
    • 強直性脊椎炎
    • 成人スティル病
    • 川崎病(急性期)
  • 術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎
  • 悪性腫瘍の鎮痛
  • 月経痛
  • 頭痛、歯痛

抗血小板作用を期待して使用する場合(低用量)

  • 血栓・塞栓形成の抑制
    • 狭心症(安定狭心症、不安定狭心症)
    • 心筋梗塞(急性期、陳旧性)
    • 脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)
    • 一過性脳虚血発作
    • 末梢動脈閉塞症
    • 冠動脈バイパス術後
    • 経皮的冠動脈形成術(PTCA)後
    • 人工弁置換術後

このように、アスピリンは一つの薬剤でありながら、用量によって異なる薬理作用を発揮し、多様な疾患の治療や予防に用いられています。

用法・用量

アスピリンの用法・用量は、その使用目的や患者さんの状態によって大きく異なります。必ず医師の指示に従って服用する必要があります。以下に一般的な用法・用量の例を挙げますが、これはあくまで参考情報です。

解熱鎮痛消炎の目的で使用する場合の例

  • 通常、成人は1回0.5~1.5g(500mg~1500mg)を1日1~3回経口投与します。
  • 小児の場合は、年齢や体重に応じて適宜減量されます。

抗血小板作用を期待して使用する場合の例

  • 通常、成人は1日1回81mg~100mgを経口投与します。場合によっては、初回に300mgを投与することがあります。

重要な注意点

  • 自己判断で増量・減量・中止しないこと。
  • 空腹時の服用は胃腸障害を起こしやすいため、食後または牛乳などと一緒に服用することが推奨される場合があります。
  • 腸溶性製剤の場合は、割ったり砕いたりせずにそのまま飲み込むこと。

副作用

アスピリンは比較的安全な薬剤として広く使用されていますが、副作用も存在します。主な副作用と、注意すべき重大な副作用について説明します。

主な副作用

  • 消化器症状: 胃痛、腹痛、胸やけ、吐き気、嘔吐、食欲不振、消化性潰瘍、出血性胃炎など。特に高用量での使用や、長期連用の場合に起こりやすいです。
  • 過敏症: 発疹、蕁麻疹、かゆみ、血管浮腫、呼吸困難などのアレルギー症状。アスピリン喘息と呼ばれる重篤な呼吸器症状を引き起こすことがあります。
  • 出血傾向: 血小板凝集抑制作用により、鼻血、歯肉出血、皮下出血、消化管出血、脳出血などの出血のリスクが高まることがあります。特に手術前や抜歯前には注意が必要です。
  • 肝機能障害: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能検査値の上昇が見られることがあります。
  • 腎機能障害: 長期連用により、腎機能が低下することがあります。
  • その他: めまい、耳鳴、難聴などが報告されています。

重大な副作用

  • ショック、アナフィラキシー: 呼吸困難、血圧低下、意識消失などの重篤なアレルギー反応。
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、多形紅斑: 皮膚や粘膜に水疱やびらんが生じる重篤な皮膚障害。
  • 再生不良性貧血、血小板減少、白血球減少: 血液細胞が減少する重篤な血液障害。
  • 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸: 重篤な肝臓の障害。
  • 間質性肺炎: 肺組織に炎症が起こる病気で、発熱、咳、呼吸困難などが現れます。
  • 消化管出血、消化性潰瘍、穿孔: 胃や十二指腸に潰瘍ができ、出血や穴が開くことがあります。
  • 脳出血: 脳内の血管が破れて出血する重篤な状態。
  • ライ症候群: インフルエンザや水痘などのウイルス感染症の際に、小児がアスピリンを服用するとまれに起こる重篤な脳症と肝臓の障害。15歳未満の小児には、原則としてアスピリンを解熱鎮痛目的で使用しません。

その他

  • アスピリンと他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗血小板薬、抗凝固薬などを併用すると、出血のリスクが高まる可能性があります。
  • アルコールとの併用は、胃腸障害や出血のリスクを高める可能性があります。
  • 妊娠中の女性、特に妊娠後期には、アスピリンの服用は慎重に行う必要があります。胎児や母体に影響を与える可能性があります。
  • 授乳中の女性への投与は、医師の判断によります。
  • 高齢者は、副作用が現れやすい可能性があるため、慎重に投与されます。

注意事項

  • この情報はアスピリンの一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 服用前に、ご自身の既往歴やアレルギー、現在服用している薬などを医師または薬剤師に必ず伝えてください。
  • 服用中に気になる症状が現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
  • 特に、消化器症状(激しい腹痛、黒色便など)、皮膚や粘膜の異常、呼吸困難などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。