葛根湯

葛根湯(かっこんとう)は、日本でも古くから用いられている代表的な漢方薬の一つです。風邪の初期症状や肩こりなどに効果を発揮することで知られています。複数の生薬を組み合わせた製剤であり、その配合バランスによって独特の薬効を発揮します。医療用医薬品としても、一般用医薬品としても広く販売されています。

主成分

葛根湯は、以下の7種類の生薬を一定の割合で配合した製剤です。

  1. 葛根(カッコン): マメ科のクズの根から採取される生薬です。発汗作用、解熱作用、鎮痛作用、血管拡張作用などがあるとされ、首筋や肩のこりを和らげる効果や、体の表面の熱を取り除く効果が期待されます。
  2. 麻黄(マオウ): マオウ科のシナマオウなどの地上茎から採取される生薬です。発汗作用、気管支拡張作用、鎮咳作用などがあり、ゾクゾクとした寒気や鼻詰まり、咳などの症状を改善する効果が期待されます。ただし、交感神経刺激作用があるため、高血圧や心臓病のある人などには慎重な投与が必要です。
  3. 甘草(カンゾウ): マメ科のカンゾウ属植物の根やストロンから採取される生薬です。抗炎症作用、鎮痛作用、去痰作用、肝機能保護作用などがあり、様々な漢方薬に配合されています。葛根湯においては、他の生薬の作用を調和させる役割も担っていると考えられています。
  4. 桂皮(ケイヒ): クスノキ科のケイの樹皮から採取される生薬です。発汗作用、解熱作用、鎮痛作用、健胃作用、血行促進作用などがあり、体を温め、発汗を促し、頭痛や発熱などの症状を和らげる効果が期待されます。
  5. 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクの根から採取される生薬です。鎮痛作用、鎮痙作用、抗炎症作用、止血作用などがあり、筋肉の緊張を和らげ、痛みを鎮める効果が期待されます。
  6. 生姜(ショウキョウ): ショウガ科のショウガの根茎を乾燥させた生薬です。発汗作用、健胃作用、鎮吐作用、血行促進作用などがあり、体を温め、吐き気などを抑える効果が期待されます。
  7. 大棗(タイソウ): クロウメモドキ科のナツメの果実から採取される生薬です。滋養強壮作用、鎮静作用、緩和作用などがあり、体力を補い、精神的な安定を促す効果が期待されます。

これらの7つの生薬が、それぞれの薬理作用を相互に補完し合い、葛根湯としての効果を発揮します。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力中等度以上のものの次の諸症:

  • 感冒の初期(汗をかいていないもの)
  • 鼻かぜ
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 筋肉痛
  • 手や肩の痛み

葛根湯は、特に風邪のひき始めで、寒気があり、首筋や肩がこるような症状に適しています。また、鼻水やくしゃみなどの鼻風邪の症状、頭痛、肩や筋肉の痛み、手や肩の痛みにも用いられます。体力中等度以上であることが使用の目安となります。

用法・用量

  • 通常、成人には1日7.5g(医療用)または1包(一般用)を2~3回に分けて、食前または食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 温めて服用するとより効果的とされることがあります。

副作用

比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用として、以下のものが報告されています。

  • 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
  • 皮膚症状: 発疹、蕁麻疹、かゆみなど
  • 肝機能異常: AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇
  • その他: 動悸、のぼせ、発汗過多、排尿障害、むくみ、血圧上昇など

重大な副作用として、まれに以下のものが報告されています。

  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、手足のしびれなどが現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
  • ミオパチー: 筋肉痛、脱力感などが現れることがあります。偽アルドステロン症に伴って現れることもあります。
  • 肝機能障害、黄疸: 肝細胞の破壊などにより、著しいAST(GOT)、ALT(GPT)の上昇や、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが現れることがあります。
  • 間質性肺炎: 咳、息切れ、発熱などが現れることがあります。

これらの重大な副作用が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。

その他

  • 葛根湯は、体力がある程度ある人に向いている漢方薬です。体力が虚弱な人や、普段から汗をかきやすい人には、他の漢方薬が適している場合があります。
  • 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。特に、麻黄を含む製剤との併用は、副作用のリスクを高める可能性があります。
  • 高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能亢進症などの持病がある人、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、服用前に必ず医師または薬剤師に相談してください。
  • 小児に投与する場合は、保護者の指導監督のもとに服用させてください。
  • 長期間服用しても症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。

注意事項

  • この情報は葛根湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。