十味敗毒湯

十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)について

十味敗毒湯は、日本で江戸時代に外科医の華岡青洲によって創案された漢方薬です。皮膚科領域で広く用いられ、化膿性皮膚疾患や急性湿疹、じんましんなど、比較的体力のある方の皮膚の炎症や化膿を伴う症状の改善に用いられます。

主成分

十味敗毒湯は、以下の10種類の生薬から構成されています。

  1. 荊芥(ケイガイ): シソ科のイヌハッカの花穂。発汗、解熱、鎮痛作用があるとされ、皮膚表面の炎症やかゆみを鎮めるのに役立ちます。
  2. 防風(ボウフウ): セリ科のボウフウの根。発汗、鎮痛、鎮痙作用があるとされ、皮膚に現れる様々な症状を緩和すると考えられています。
  3. 連翹(レンギョウ): モクセイ科のレンギョウの果実。消炎、排膿、解毒作用があるとされ、皮膚の腫れや化膿を抑えるのに役立ちます。
  4. 桔梗(キキョウ): キキョウ科のキキョウの根。排膿、去痰作用があるとされ、皮膚の膿を排出するのを助け、喉の炎症にも用いられます。
  5. 石膏(セッコウ): 硫酸カルシウムを主成分とする鉱物。清熱、瀉火、止渇作用があるとされ、炎症による熱感を鎮め、のどの渇きを改善します。
  6. 甘草(カンゾウ): マメ科のウラルカンゾウなどの根やストロン。鎮痛、抗炎症、緩和作用があり、他の生薬の作用を調和させる働きも期待されます。
  7. 黄芩(オウゴン): シソ科のコガネバナの根。消炎、解熱、止血作用があるとされ、皮膚の炎症を鎮め、出血を抑える効果も期待されます。
  8. 蒼朮(ソウジュツ): キク科のホソバオケラの根茎。利水、健胃、発汗作用があるとされ、体内の余分な水分を取り除き、胃腸の機能を整えます。
  9. 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎。駆瘀血、鎮痛、鎮静作用があるとされ、血行を促進し、痛みを和らげる効果が期待されます。
  10. 独活(ドッカツ): ウコギ科のシシウドの根。鎮痛、鎮痙、去湿作用があるとされ、関節痛や筋肉痛、神経痛などにも用いられます。

分類

  • 漢方薬
  • 皮膚科用薬

効能・効果

比較的体力のあるものの次の諸症:

  • 急性化膿性皮膚疾患の初期
  • じんましん
  • 急性湿疹
  • 水虫

主に、皮膚が赤く腫れたり、熱を持ったり、膿が出たりするような急性期の炎症性皮膚疾患に用いられます。比較的体力があり、炎症が強く、化膿傾向のある方に適しています。

用法・用量

  • 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与します。
  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 顆粒剤やエキス剤など、剤形によって用法・用量が異なる場合がありますので、指示された用法・用量を守ってください。

副作用

比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用として、以下のものが報告されています。

  • 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、軟便、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど

まれに、以下の重大な副作用が報告されています。

  • 肝機能障害: AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇を伴う肝機能障害が現れることがあります。
  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、脱力感、手足のしびれなどが現れることがあります。長期連用により現れやすいため、注意が必要です。
  • ミオパチー: 低カリウム血症の結果として、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 十味敗毒湯は、体力のある方向けの漢方薬であり、虚弱体質の方には適さない場合があります。
  • 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
  • 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。
  • 服用しても症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
  • 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
  • 小児の手の届かない所に保管してください。

注意事項

この情報は十味敗毒湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。

必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。

より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。