香蘇散(コウソサン)について
香蘇散は、日本で古くから用いられてきた漢方薬の一つです。主に、精神的なストレスや寒気などによって引き起こされる様々な症状の改善に用いられます。穏やかな作用で、比較的体力のない方にも使いやすいとされています。
香蘇散は、一般的に複数の生薬を組み合わせた顆粒状の製剤として販売されています。医療用医薬品と一般用医薬品の両方があり、医療機関で処方される場合と、薬局・ドラッグストアで購入できる場合があります。
主成分
香蘇散は、以下の5種類の生薬から構成されています。
- 蘇葉(ソヨウ): シソ科のシソの葉を乾燥させたものです。気の巡りを良くし、精神的な不安やイライラ、抑うつ気分などを改善する効果があるとされています。また、発汗作用や鎮咳作用、健胃作用なども期待できます。
- 陳皮(チンピ): ミカン科のウンシュウミカンの成熟した果皮を乾燥させたものです。気の巡りを改善し、胃腸の働きを整える効果があります。食欲不振、消化不良、吐き気などの症状に用いられます。
- 香附子(コウブシ): カヤツリグサ科のハマスゲの根茎を乾燥させたものです。気の巡りを良くし、精神的な緊張やイライラ、月経不順、乳房の張りや痛みなどを改善する効果があるとされています。
- 甘草(カンゾウ): マメ科のウラルカンゾウなどの根やストロンを乾燥させたものです。様々な生薬の作用を調和し、炎症を抑える効果や痛みを和らげる効果、咳を鎮める効果などがあります。
- 生姜(ショウキョウ): ショウガ科のショウガの根茎を乾燥させたものです。体を温め、発汗を促し、吐き気を抑える効果があります。また、胃腸の働きを活発にする効果も期待できます。
これらの生薬が、それぞれの持つ薬理作用を相互に補完し合いながら、香蘇散としての効果を発揮すると考えられています。
分類
- 漢方薬
効能・効果
体力中等度あるいはやや虚弱で、神経質で、憂うつで気分が晴れないものの次の諸症:
- かぜの初期
- 鼻炎
- 気管支炎
- 咳
- 神経症
主に、精神的なストレスや寒気などが原因で起こる、以下のような症状の改善に用いられます。
- かぜの初期: 寒気、発熱、頭痛、鼻水、咳などの症状
- 鼻炎: くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状
- 気管支炎: 咳、痰などの症状
- 咳: 様々な原因による咳
- 神経症: 不安、イライラ、憂うつ、不眠などの精神的な症状
香蘇散は、これらの症状に対して、自律神経のバランスを整え、心身の機能を改善することで効果を発揮すると考えられています。特に、精神的な要因が強く関わっている場合や、比較的体力がなく、神経質な方に適しているとされています。
用法・用量
- 通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 顆粒剤の場合は、そのまま水または白湯で服用します。
副作用
香蘇散は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
これらの副作用が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
また、漢方薬全般に共通する注意点として、偽アルドステロン症やミオパチーといった重大な副作用が、まれに甘草の長期大量投与によって現れることがあります。香蘇散にも甘草が含まれているため、長期にわたる服用や、他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。症状としては、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、手足の脱力や麻痺などが挙げられます。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
その他
- 医師の治療を受けている方や、他の医薬品を服用している方は、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師または薬剤師に相談してください。
- 小児への投与については、医師または薬剤師の指示に従ってください。
- 服用しても症状の改善が見られない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
- 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
- 小児の手の届かない所に保管してください。
- 他の容器に入れ替えないでください(誤用の原因になったり品質が変わったりするおそれがあります)。
- 使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。
注意事項
- この情報は香蘇散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。