四物湯

四物湯(しもつとう)について

四物湯は、日本や中国で古くから用いられている代表的な漢方薬の一つです。4種類の生薬(当帰、川芎、芍薬、地黄)から構成されており、血(けつ)を補い、血行を改善する作用があるとされています。女性特有の症状や、皮膚の乾燥、貧血傾向など、幅広い症状に用いられることがあります。

主成分

四物湯は、以下の4種類の生薬から構成されています。

  1. 当帰(トウキ): セリ科のトウキまたは近縁植物の根を乾燥させたもの。造血作用や鎮痛作用、血行促進作用があるとされ、婦人科系の疾患によく用いられます。特有の香りを持ちます。
  2. 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎を乾燥させたもの。血行促進作用や鎮痛作用、鎮静作用があるとされ、頭痛や月経痛などに用いられます。独特の強い香りが特徴です。
  3. 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクまたはベニバナボウフウの根を乾燥させたもの。鎮痛作用、鎮痙作用、抗炎症作用、止血作用などがあるとされ、筋肉のけいれんや痛みを和らげるのに用いられます。
  4. 地黄(ジオウ): ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥させたもの、またはそれを蒸したもの(熟地黄)。造血作用、滋養強壮作用、止血作用があるとされ、貧血やめまい、耳鳴りなどに用いられます。熟地黄は生のものに比べて、体を温める作用が強くなると言われています。

これらの生薬は、それぞれが持つ薬理作用によって、相互に補い合い、四物湯としての効果を発揮すると考えられています。

分類

  • 漢方薬
  • 駆瘀血剤(くおけつざい)に分類されることもあります。血行を改善し、滞った血(瘀血)を取り除く作用に着目した分類です。
  • 補血剤(ほけつざい)に分類されることもあります。血を補う作用に着目した分類です。

効能・効果

四物湯は、一般的に以下のような症状や体質の方に用いられることがあります。

  • 婦人科系の症状:
    • 月経不順、月経痛
    • 更年期障害に伴う諸症状(めまい、のぼせ、冷えなど)
    • 産後の体力低下、貧血
  • 皮膚の症状:
    • 皮膚の乾燥、かゆみ
    • 湿疹、皮膚炎
    • しもやけ
  • その他の症状:
    • 貧血傾向
    • 冷え症
    • 虚弱体質
    • 病後の体力回復
    • めまい、立ちくらみ

ただし、これらの効能・効果は一般的なものであり、個人の体質や症状によって効果の現れ方には差があります。また、医療用医薬品の添付文書に記載されている効能・効果とは異なる場合があります。

用法・用量

四物湯の用法・用量は、製品によって異なる場合があります。一般的には、以下のいずれかの方法で服用します。

  • 煎じ薬: 生薬を水で煮出して、その煮汁を服用します。1日量として、各生薬の配合量に応じて定められた量を、通常2~3回に分けて食前または食間に服用します。
  • エキス顆粒・錠剤: 煎じ薬を乾燥させて顆粒状や錠剤にしたものです。製品に記載された用法・用量を守り、通常1日2~3回、食前または食間に水または白湯で服用します。

注意点:

  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 自己判断で用量を増やしたり、服用を中止したりしないでください。
  • 他の漢方薬や医薬品と併用する際は、医師または薬剤師に相談してください。

副作用

四物湯は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器症状:
    • 胃もたれ
    • 食欲不振
    • 下痢
    • 便秘
    • 腹痛
  • 過敏症:
    • 発疹
    • かゆみ

まれに、以下のような重大な副作用が報告されることがあります。

  • 肝機能障害: AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が上昇することがあります。
  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などが現れることがあります。
  • ミオパチー: 筋肉痛、脱力感などが現れることがあります。

これらの副作用が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 四物湯は、体力が中等度以下で、皮膚の色がやや悪く、乾燥する傾向のある方に比較的適しているとされています。
  • 証(しょう:漢方医学的な体質や症状の現れ方)が合わない場合、効果が得られないだけでなく、副作用が現れる可能性もあります。
  • 服用前に、自身の体質や症状について医師や薬剤師に相談することが大切です。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、医師または薬剤師に相談してください。
  • 小児への投与は、慎重に行う必要があります。医師または薬剤師の指示に従ってください。

注意事項

この情報は四物湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。

必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。

より詳しい情報が必要な場合は、医療用医薬品の添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。