芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)について
芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)は、日本で医療用漢方製剤として用いられる処方の一つです。主に、出血傾向のある婦人科系の疾患や、貧血、皮膚の乾燥などに用いられます。体力中等度以下で、皮膚の色がやや悪く、出血傾向があり、貧血気味で、下腹部痛、腰痛、肩こりなどを伴う方に向いています。
主成分
芎帰膠艾湯は、以下の生薬から構成されています。
- 当帰(トウキ): セリ科のトウキまたは近縁植物の根を乾燥させたもの。血行促進作用、鎮痛作用、造血作用などがあるとされ、婦人科系の疾患によく用いられます。
- 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎を乾燥させたもの。血行促進作用、鎮痛作用、鎮静作用などがあるとされ、頭痛や婦人科系の症状に用いられます。
- 艾葉(ガイヨウ): キク科のヨモギの葉を乾燥させたもの。止血作用、保温作用、鎮痛作用などがあるとされ、出血を伴う症状や冷え症に用いられます。
- 阿膠(アキョウ): ロバの皮を水で煮て濃縮した膠(にかわ)。造血作用、止血作用、滋潤作用などがあるとされ、貧血や出血傾向、皮膚の乾燥に用いられます。
- 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクまたはベニバナボクの根を乾燥させたもの。鎮痛作用、鎮痙作用、抗炎症作用などがあるとされ、腹痛や筋肉のけいれんに用いられます。
- 甘草(カンゾウ): マメ科のカンゾウまたは同属植物の根やストロンを乾燥させたもの。抗炎症作用、鎮痛作用、鎮咳作用などがあり、他の生薬の作用を調和する目的でも配合されます。
これらの生薬が、それぞれの薬理作用を発揮し、複合的に効果をもたらすとされています。
分類
- 漢方製剤
- 出血性疾患用薬
- 婦人科用薬
効能・効果
体力中等度以下で、皮膚の色がやや悪く、出血傾向があり、貧血気味で、下腹部痛、腰痛、肩こりなどを伴うものの次の諸症:
- 月経不順
- 月経異常
- 産後あるいは流産後の出血
- 鼻出血
- 皮膚の乾燥
- しもやけ
主に、女性の月経に関するトラブルや、出血を伴う症状、貧血、皮膚の乾燥などに用いられます。体力が中等度以下で、比較的慢性的な経過をたどる症状に適しています。
用法・用量
医療用漢方製剤である芎帰膠艾湯の用法・用量は、通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- エキス剤(顆粒、細粒)の場合: 1回2.5g(1日3回)または1回3.75g(1日2回)が一般的です。
- 煎じ薬の場合: 生薬の配合量や煎じ方によって異なります。
重要な注意点
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 自己判断で増減したり、服用を中止したりしないでください。
- 他の薬剤との併用については、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 症状や体質によって、服用量や服用回数が調整されることがあります。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、芎帰膠艾湯においても、体質や症状によっては以下のような副作用が現れる可能性があります。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢など
- 皮膚症状: 発疹、かゆみなど
- その他: 動悸、のぼせ、むくみなど
甘草による偽アルドステロン症
芎帰膠艾湯には甘草が含まれているため、長期連用により、以下の偽アルドステロン症の症状が現れることがあります。
- 低カリウム血症
- 血圧上昇
- 浮腫
- 脱力感
これらの症状が現れた場合には、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。特に、高齢者や腎機能が低下している方は注意が必要です。
過敏症
まれに、配合されている生薬に対する過敏症(アレルギー反応)が現れることがあります。発疹、かゆみなどの症状が現れた場合には、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
相互作用
他の薬剤との相互作用については、医師または薬剤師に相談してください。特に、利尿作用のある薬剤や、カリウム値を低下させる可能性のある薬剤との併用には注意が必要です。
その他
- 芎帰膠艾湯は、体質や症状に合わせて使用される漢方薬です。そのため、専門家である医師や漢方医の診断に基づいて処方されることが重要です。
- 服用前に、自身の体質や症状、既往歴などを医師または薬剤師に詳しく伝えるようにしてください。
- 服用中に体調の変化を感じた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談してください。
- 小児、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳婦、高齢者などへの投与については、医師または薬剤師の指示に従ってください。
注意事項
- この情報は芎帰膠艾湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。