二陳湯 | おくすり辞典

二陳湯は、漢方薬の一種であり、身体の余分な水分（痰飲：たんいん）を取り除くことで、様々な症状の改善を目的として用いられます。比較的体力中等度以下の方で、胃腸が弱く、食欲不振、吐き気、嘔吐などを伴う場合に用いられることが多い漢方薬です。

二陳湯は、以下の5つの生薬から構成されています。

半夏（ハンゲ）: サトイモ科のカラスビシャクのコルク層を除いた塊茎を乾燥させたもの。鎮吐作用、鎮咳作用、去痰作用があるとされ、吐き気や咳、痰の症状を改善します。
陳皮（チンピ）: ミカン科のウンシュウミカンの成熟した果皮を乾燥させたもの。理気作用（気の巡りを良くする）、健脾作用（胃腸の働きを助ける）、燥湿化痰作用（余分な水分を取り除く）があるとされ、食欲不振や消化不良、痰の症状を改善します。
茯苓（ブクリョウ）: サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。利水滲湿作用（水分代謝を改善する）、健脾安神作用（胃腸を丈夫にし精神を安定させる）があるとされ、むくみやめまい、不安感などを改善します。
甘草（カンゾウ）: マメ科のウラルカンゾウまたはグリチルリザ・グラブラの根およびストロンを乾燥させたもの。鎮痛緩和作用、抗炎症作用、去痰作用、緩和作用など多くの薬理作用を持ち、他の生薬の作用を調和させる役割も果たします。
生姜（ショウキョウ）: ショウガ科のショウガの根茎を乾燥させたもの。健胃作用、発汗解熱作用、鎮吐作用があるとされ、食欲不振や吐き気、冷えなどを改善します。

これらの生薬が組み合わさることで、二陳湯は身体の水分代謝を改善し、停滞した痰飲を取り除く効果を発揮すると考えられています。

比較的体力中等度以下で、ときに悪心、嘔吐があり、食欲不振、舌苔が膩（ねばねば）るものの次の諸症：

これらの症状は、体内に余分な水分が停滞することによって引き起こされると考えられており、二陳湯はこれらの症状を改善する効果が期待されます。特に、舌苔が膩る（舌の表面に白っぽくねばねばした苔が付着する）ことは、体内に余分な水分が停滞している状態を示す一つの指標となります。

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

まれに、以下のような重大な副作用が報告されることがあります。

偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、手足の脱力、しびれなどが現れることがあります。これは、甘草に含まれる成分が原因となることがあります。長期連用により現れやすいため、注意が必要です。
ミオパチー: 筋肉痛、脱力感、CK（CPK）上昇、血中及び尿中のミオグロビン上昇などが現れることがあります。偽アルドステロン症に伴って現れることがあります。
肝機能障害: AST（GOT）、ALT（GPT）、Al-P、γ-GTPなどの上昇を伴う肝機能障害が現れることがあります。

これらの副作用が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、長期にわたって服用する場合は、定期的な検査を受けるなど、注意が必要です。