抑肝散加陳皮半夏について
抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)は、漢方処方の一つであり、抑肝散に陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)という生薬を加えたものです。神経の高ぶりやイライラ、不眠などの精神神経症状、消化器系の不調などを伴う場合に用いられます。
主成分
抑肝散加陳皮半夏は、以下の9種類の生薬から構成されています。
- 釣藤鈎(チョウトウコウ): 鎮静作用、血圧を下げる作用などがあるとされます。神経の高ぶりや興奮を鎮める効果が期待されます。
- 柴胡(サイコ): 気の流れを改善する作用、炎症を抑える作用などがあるとされます。精神的な不安定さを和らげる効果が期待されます。
- 甘草(カンゾウ): 炎症を抑える作用、痛みを和らげる作用、胃腸の調子を整える作用などがあるとされます。他の生薬の作用を調和する役割も果たします。
- 当帰(トウキ): 血行を促進する作用、鎮静作用、月経不順の改善作用などがあるとされます。女性特有の症状や精神不安の緩和に用いられます。
- 茯苓(ブクリョウ): 利尿作用、鎮静作用、水分代謝を改善する作用などがあるとされます。神経過敏や不眠、めまいなどに用いられます。
- 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ): 胃腸の機能を高める作用、水分代謝を改善する作用などがあるとされます。食欲不振や消化不良、むくみなどに用いられます。(処方によってどちらかが用いられます)
- 川芎(センキュウ): 血行を促進する作用、鎮痛作用などがあるとされます。頭痛や肩こり、生理痛などに用いられます。
- 陳皮(チンピ): 胃腸の働きを整える作用、気分を落ち着かせる作用などがあるとされます。食欲不振、吐き気、腹部膨満感、精神的なイライラなどに用いられます。
- 半夏(ハンゲ): 吐き気を抑える作用、鎮静作用、水分代謝を改善する作用などがあるとされます。吐き気、嘔吐、不安感、神経過敏などに用いられます。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
比較的虚弱な体質で神経がたかぶり、怒りやすい、イライラしやすい、不眠などの精神神経症状があり、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症。
- 神経症
- 不眠症
- 小児夜泣き
- 歯ぎしり
- 更年期障害
- 血の道症
「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。
抑肝散に陳皮と半夏を加えることで、胃腸の不調や吐き気、不安感といった症状を伴う場合に、より適しているとされています。特に、神経の高ぶりに加えて、消化器系の不快感があるような場合に用いられることが多いです。
用法・用量
- 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 顆粒剤、細粒剤、錠剤などの剤形があります。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 煎じ薬の場合は、生薬を水で煮出して服用します。
副作用
漢方薬は比較的副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
- 肝機能障害: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇が現れることがあります。定期的な肝機能検査が必要となる場合があります。
- 偽アルドステロン症: まれに低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などが現れることがあります。これは、甘草に含まれる成分によるものです。異常が認められた場合には投与を中止し、医師の診察を受けてください。
- ミオパチー: まれに脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。これも、甘草に含まれる成分によるものです。異常が認められた場合には投与を中止し、医師の診察を受けてください。
これらの副作用は、比較的まれに起こるものですが、もし服用後に気になる症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、長期にわたって服用する場合は、定期的な経過観察が重要となります。
その他
- 医師や薬剤師に、自身の体質や既往症、現在服用している薬などを必ず伝えてください。
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性のある方は、必ず医師に相談してください。
- 小児に投与する場合は、保護者の指導監督のもとで慎重に行う必要があります。
- 他の漢方薬や西洋薬との併用については、医師または薬剤師に相談してください。
- 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。
- 小児の手の届かない所に保管してください。
- 誤用を避け、品質を保持するため、他の容器に入れ替えないでください。
注意事項
- この情報は抑肝散加陳皮半夏の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。