滋陰至宝湯(じいんしほうとう)について
滋陰至宝湯は、漢方処方の一つであり、主に体力低下、疲労倦怠感、皮膚の乾燥やかゆみ、排尿困難など、加齢に伴う様々な症状の改善を目的として用いられます。体内の潤い成分である「陰(いん)」を補い、「気(き)」を巡らせることで、全身のバランスを整えると考えられています。医療用医薬品としてだけでなく、一般用医薬品としても販売されています。
主成分
滋陰至宝湯は、複数の生薬(しょうやく)から構成される複合処方です。構成生薬とその主な作用は以下の通りです。
- 地黄(ジオウ): 補血作用、滋陰作用があり、血液を補い、体の潤いを養います。皮膚の乾燥、貧血、めまいなどに用いられます。
- 麦門冬(バクモンドウ): 滋陰潤肺作用があり、肺を潤し、咳や喉の乾燥を和らげます。また、胃腸を潤す作用もあります。
- 天門冬(テンモンドウ): 滋陰潤肺作用があり、麦門冬と同様の作用を持ちます。
- 枸杞子(クコシ): 補肝腎作用、明目作用があり、肝臓と腎臓を補い、視力改善にも用いられます。
- 人参(ニンジン): 補気作用があり、全身のエネルギーを高め、疲労倦怠感を改善します。
- 黄耆(オウギ): 補気固表作用があり、体の表面のバリア機能を高め、免疫力を向上させると考えられています。
- 当帰(トウキ): 補血活血作用があり、血液を補い、血行を促進します。婦人科系の症状にも用いられます。
- 芍薬(シャクヤク): 補血柔肝作用、鎮痛鎮痙作用があり、血液を補い、筋肉の緊張を和らげ、痛みを鎮めます。
- 川芎(センキュウ): 活血行気作用があり、血行を促進し、気の巡りを良くします。頭痛などにも用いられます。
- 茯苓(ブクリョウ): 利水滲湿作用、健脾安神作用があり、体内の余分な水分を排出し、胃腸機能を整え、精神を安定させます。
- 陳皮(チンピ): 理気健脾作用があり、気の巡りを良くし、胃腸の働きを整えます。
- 甘草(カンゾウ): 調和作用、鎮痛抗炎症作用があり、他の生薬の作用を調和させ、痛みを和らげます。
これらの生薬は、それぞれの作用を補い合い、 complexな効果を発揮すると考えられています。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
体力中等度以下で、皮膚の乾燥、かゆみ、排尿困難、頻尿、残尿感、むくみ、疲れやすいなどの症状があるものの次の諸症:
- 疲労倦怠
- 皮膚乾燥
- 皮膚そう痒症
- 排尿困難
- 頻尿
- 残尿感
- むくみ
解説:
滋陰至宝湯は、主に加齢に伴う「陰虚(いんきょ)」の症状、つまり体の潤い不足によって生じる様々な不調に用いられます。皮膚の乾燥やかゆみ、排尿に関するトラブル、疲労感などは、陰虚の代表的な症状です。配合されている生薬は、体の潤いを補うだけでなく、血行を促進したり、気の巡りを良くしたりすることで、全身のバランスを整え、これらの症状を改善すると考えられています。
用法・用量
- 成人:通常、1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 製品によっては、顆粒剤やエキス剤など、異なる剤形がありますので、それぞれの用法・用量に従ってください。
服用時の注意:
- 食前または食間に服用することで、胃腸への負担を軽減し、薬の吸収を良くすることが期待されます。
- 漢方薬は、体質や症状に合わせて処方されるため、自己判断で服用量を変更したり、服用を中止したりしないでください。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては、まれに以下のような副作用が現れることがあります。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢など
- 過敏症: 発疹、かゆみなど
重大な副作用:
現在のところ、滋陰至宝湯において重大な副作用の報告は比較的少ないとされていますが、配合されている生薬によっては、まれに以下のような副作用が起こる可能性も否定できません。
- 偽アルドステロン症: 長期間にわたる甘草の大量服用により、低カリウム血症、血圧上昇、むくみなどが現れることがあります。
- ミオパチー: 偽アルドステロン症に伴い、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。
- 肝機能障害: まれに、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALPなどの上昇を伴う肝機能障害が現れることがあります。
副作用への対処:
もし、服用後に上記のような症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
その他
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師または薬剤師に相談してください。
- 他の医薬品(西洋薬、漢方薬、サプリメントなど)を服用している場合は、相互作用の可能性があるため、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 小児への投与については、医師または薬剤師に相談してください。
- 直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管してください。
- 小児の手の届かない所に保管してください。
- 誤用を避け、品質を保持するため、他の容器に入れ替えないでください。
- 使用期限を過ぎた製品は服用しないでください。
注意事項
この情報は滋陰至宝湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。体質や症状によっては、効果や副作用の現れ方が異なる場合があります。
必ず医師または薬剤師の診断・指導のもとに服用してください。
より詳しい情報や、個々の状態に合わせた注意点については、処方された医師または購入した薬局・薬店の薬剤師に必ずご確認ください。