当帰湯(とうきとう)について
当帰湯は、日本で古くから用いられてきた漢方処方の一つです。主に婦人科系の疾患や症状の改善に用いられることが多く、女性の健康をサポートする生薬が配合されています。体力中等度以下で、皮膚は枯燥し、便秘する傾向のあるものの、月経不順、月経困難、更年期障害、子宮出血、産後あるいは流産後の諸病、痔、便秘といった幅広い症状に対して用いられます。
主成分
当帰湯は、以下の5種類の生薬から構成されています。
- 当帰(トウキ): セリ科のトウキまたは近縁植物の根を乾燥させたもの。血行を促進し、鎮痛、造血作用、保湿作用などがあるとされています。婦人科領域では、月経不順、月経痛、産後の不調などに広く用いられます。
- 川芎(センキュウ): セリ科のセンキュウの根茎を乾燥させたもの。血行を促進し、鎮痛、鎮静作用などがあるとされています。頭痛や肩こり、月経痛などに用いられます。
- 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクまたはベニバナボクの根を乾燥させたもの。鎮痛、鎮痙、抗炎症作用などがあるとされています。筋肉のけいれんや痛み、月経痛などに用いられます。
- 地黄(ジオウ): ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根または根茎を加工したもの。補血作用、潤燥作用があるとされ、貧血気味の方や皮膚の乾燥、便秘などに用いられます。
- 阿膠(アキョウ): ロバの皮を水で煮て濃縮した膠。補血作用、止血作用があるとされ、貧血や出血傾向のある方に用いられます。
これらの生薬が、それぞれの薬理作用を発揮し、複合的に効果をもたらすとされています。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
体力中等度以下で、皮膚は枯燥し、便秘する傾向のあるものの次の諸症:
- 月経不順
- 月経困難
- 更年期障害
- 子宮出血
- 産後あるいは流産後の諸病(貧血、疲労倦怠、めまい、腹痛、便秘)
- 痔
- 便秘
上記のように、女性特有の症状を中心に、産前産後や更年期における不調、痔や便秘など、幅広い症状に対して用いられます。特に、血行不良や乾燥傾向のある方の症状に適しているとされています。
用法・用量
- 煎じ薬: 通常、1日量として当帰10g、川芎5g、芍薬5g、地黄5g、阿膠5gに水約600mLを加えて、約半量になるまで煎じ、温めて服用します。
- エキス顆粒・錠剤: 通常、成人1日7.5g(煎じ薬換算量)を2~3回に分割し、食前または食間に水または白湯で服用します。製品によって用法・用量が異なる場合がありますので、添付文書をよく読んで、医師または薬剤師の指示に従ってください。
用量は、年齢、体重、症状により適宜増減されます。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。
- 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、腹痛など
- 皮膚: 発疹、発赤、かゆみなど
当帰に含まれる成分により、まれに光線過敏症が現れることがあります。
また、配合生薬である地黄の大量服用により、胃もたれや下痢などの消化器症状が現れることがあります。阿膠は、体質によっては消化不良を引き起こす可能性があります。
重大な副作用
現在のところ、当帰湯において重大な副作用の報告は比較的少ないとされていますが、体質によっては予期せぬ症状が現れる可能性も否定できません。もし、服用後に異常を感じた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
その他
- 当帰湯は、体力中等度以下で、皮膚が乾燥しやすく、便秘傾向のある方に比較的適しています。
- 服用前に、自身の体質や症状について医師または薬剤師に相談することが大切です。
- 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、相互作用の可能性がないか医師または薬剤師に相談してください。
- 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性がある方は、服用前に医師に相談してください。
- 小児への投与は、医師または薬剤師の指導のもとで行ってください。
注意事項
- この情報は当帰湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。