茵蔯五苓散(インチンゴレイサン)について
茵蔯五苓散は、黄疸(おうだん)を伴う急性または慢性の肝炎、胆道炎、胆石症、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、湿疹、皮膚炎、口内炎などの治療に用いられる漢方薬です。五苓散(ゴレイサン)に茵蔯蒿(インチンコウ)という生薬を加えた処方で、利水作用と黄疸を改善する作用を併せ持ちます。
茵蔯五苓散は、一般的に顆粒剤や細粒剤として販売されており、医療用医薬品と薬局・ドラッグストアで購入できる一般用医薬品があります。製品によってパッケージや形状が異なる場合があります。
主成分
茵蔯五苓散は、以下の7種類の生薬から構成されています。
- 茵蔯蒿(インチンコウ): キク科のカワラヨモギの花穂または地上部を乾燥させたもの。黄疸を改善する作用、利胆作用、解熱作用などがあるとされます。
- タクシャ: サジオモダカ科のサジオモダカの塊茎を乾燥させたもの。利水作用、止渇作用があるとされます。体内の余分な水分を排泄するのを助けます。
- チョレイ: サルノコシカケ科のマンネンタケまたはツクバトリュフの菌核を乾燥させたもの。利水作用があり、むくみや水分代謝の異常を改善するとされます。
- ブクリョウ: サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。利水作用、健脾作用、鎮静作用などがあるとされます。水分代謝を改善し、胃腸の働きを助けます。
- ビャクジュツ: キク科のオケラの根茎またはホソバオケラの根茎を乾燥させたもの。健脾作用、利水作用があるとされます。胃腸機能を高め、水分代謝を改善します。
- ケイヒ: クスノキ科のケイの樹皮または周皮の一部を除いたものを乾燥させたもの。発汗作用、解熱鎮痛作用、健胃作用、血行促進作用などがあるとされます。
- カンゾウ: マメ科のウラルカンゾウまたはグリチルリザ・グラブラの根およびストロンを乾燥させたもの。抗炎症作用、鎮痛作用、去痰作用、肝機能保護作用、胃腸の調子を整える作用など、様々な薬理作用があるとされます。
これらの生薬が相互に作用することで、茵蔯五苓散としての効果を発揮します。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
比較的体力があり、のどが渇き、尿量が少ないものの次の諸症:
- 黄疸
- 急性肝炎
- 胆のう炎
- 胆石症
- じんましん
- 湿疹
- 皮膚炎
- 口内炎
製品によっては、効能・効果の範囲が異なる場合がありますので、添付文書をよく確認してください。
用法・用量
- 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 顆粒剤や細粒剤は、そのまま水またはぬるま湯で服用します。
副作用
茵蔯五苓散は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。
- 消化器症状: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢など
- 皮膚症状: 発疹、かゆみなど
- 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの肝機能検査値の上昇
重大な副作用としては、現在のところ頻度は低いものの、以下の報告があります。
- 偽アルドステロン症: 長期間または大量に服用した場合、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、手足のしびれ、筋肉痛などが現れることがあります。これは、甘草に含まれるグリチルリチン酸が原因となることがあります。
- ミオパチー: 低カリウム血症の結果として、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
その他
- 茵蔯五苓散は、証(しょう)と呼ばれる患者さんの体質や症状に合わせて処方される漢方薬です。自己判断で使用せず、必ず医師や漢方専門の薬剤師に相談して、適切な処方をしてもらうことが大切です。
- 他の漢方薬や西洋薬と併用する場合には、相互作用のリスクがあるため、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 服用中に体調が悪くなった場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
- 小児、高齢者、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性は、医師または薬剤師に相談の上、慎重に服用する必要があります。特に、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ行われます。
- 保存状態によっては変色や吸湿を起こすことがありますので、直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所に保管してください。
- 小児の手の届かない所に保管してください。
注意事項
- この情報は茵蔯五苓散の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。