当帰建中湯

当帰建中湯について

当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)は、日本で医療用漢方製剤として用いられる処方の一つです。体力中等度以下で、腹痛があり、ときに微熱、顔色不良、食欲不振、貧血傾向のあるものの、諸症状の緩和を目的として用いられます。構成生薬の配合により、体を温め、血行を促進し、痛みを和らげる効果などが期待されます。

主成分

当帰建中湯は、以下の6種類の生薬から構成されています。

  1. 当帰(トウキ): セリ科のトウキまたは近縁植物の根を乾燥させたもの。血行を促進し、鎮痛、鎮静、補血などの作用があるとされます。婦人科系の疾患にもよく用いられる生薬です。
  2. 桂皮(ケイヒ): クスノキ科のケイまたは近縁植物の樹皮を乾燥させたもの。体を温め、発汗を促し、鎮痛作用があるとされます。
  3. 芍薬(シャクヤク): ボタン科のシャクヤクまたはベニバナボクの根を乾燥させたもの。鎮痛、鎮痙、抗炎症作用などがあるとされます。筋肉のけいれんや痛みを和らげる効果が期待されます。
  4. 膠飴(コウイ): 米、麦、粟などのデンプンを糖化した水飴。緩和作用があり、腹痛を和らげ、体力を補うと考えられています。
  5. 甘草(カンゾウ): マメ科のカンゾウまたは近縁植物の根およびストロンを乾燥させたもの。抗炎症、鎮痛、鎮痙作用などがあるとされ、他の生薬の作用を調和する目的でも配合されます。
  6. 生姜(ショウキョウ): ショウガ科のショウガの根茎を乾燥させたもの。体を温め、消化機能を高める作用があるとされます。

これらの生薬が相互に作用することで、当帰建中湯としての効果を発揮すると考えられています。製品によっては、これらの生薬のエキスを乾燥させた顆粒剤や、煎じ薬として用いられる生薬そのものが販売されています。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

体力中等度以下で、腹痛があり、ときに微熱、顔色不良、食欲不振、貧血傾向のあるものの、下記の諸症。

  • 腹痛
  • 腰痛
  • 冷え症
  • 疲労倦怠
  • 月経痛

これらの症状は、当帰建中湯の温性、補血、鎮痛、鎮痙などの作用によって緩和されると考えられています。特に、冷えによる血行不良や、それに伴う痛み、消化器系の機能低下などに用いられることが多いです。

用法・用量

  • 医療用漢方製剤(顆粒)の場合: 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 煎じ薬の場合: 生薬の配合量や煎じ方によって異なります。医療機関や漢方薬局の指示に従ってください。

いずれの場合も、必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。自己判断で服用量を変更したり、服用を中止したりすることは避けてください。

副作用

漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては以下のような副作用が現れることがあります。

  • 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、下痢など
  • 過敏症: 発疹、かゆみなど

また、当帰建中湯に含まれる甘草の長期大量服用により、偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇、低カリウム血症など)が現れることがあります。そのため、長期にわたる服用や、他の甘草含有製剤との併用には注意が必要です。

上記以外にも、予期しない症状が現れることがあります。服用中にいつもと違う症状を感じた場合は、直ちに医師または薬剤師に相談してください。

その他

  • 当帰建中湯は、体力中等度以下の人で、腹痛を伴い、冷えや貧血傾向のある方に比較的適しています。
  • 服用前に、自身の体質や症状について医師または薬剤師に詳しく相談することが大切です。
  • 他の医薬品や健康食品との相互作用についても、医師または薬剤師に確認してください。
  • 妊娠中または授乳中の方、あるいは妊娠している可能性のある方は、必ず医師に相談してください。
  • 小児への投与は、医師の判断に基づいて慎重に行われます。

注意事項

この情報は当帰建中湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。

必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。

より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。