啓脾湯について
啓脾湯(ケイヒトウ)は、漢方薬の一種であり、体力中等度以下で、疲れやすくて顔色が悪く、食欲不振、下痢、軟便などが見られる方の消化器系の不調を改善するために用いられます。虚弱体質者の滋養強壮や、病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、下痢・軟便といった症状に効果を発揮します。生薬の組み合わせによって、胃腸の働きを整え、体力を回復させることを目的としています。
主成分
啓脾湯は、以下の9種類の生薬から構成されています。
- 人参(ニンジン): オタネニンジンの根で、滋養強壮、健胃、食欲不振改善などの効果があります。
- 白朮(ビャクジュツ): オケラの根茎などで、健胃、利水作用があり、消化不良や下痢を改善します。
- 茯苓(ブクリョウ): マツホドの菌核で、利水、鎮静作用があり、むくみやめまい、不安などを和らげます。
- 甘草(カンゾウ): ウラルカンゾウなどの根やストロンで、抗炎症、鎮痛、去痰作用があり、他の生薬の作用を調和する働きもあります。
- 大棗(タイソウ): ナツメの果実で、滋養強壮、鎮静作用があり、体力を補い、精神安定に役立ちます。
- 陳皮(チンピ): ミカンの果皮で、健胃、理気作用があり、消化不良や腹部膨満感を改善します。
- 半夏(ハンゲ): カラスビシャクの塊茎で、鎮吐、鎮咳、去痰作用があり、吐き気や咳を鎮めます。
- 生姜(ショウキョウ): ショウガの根茎で、健胃、発汗、解熱作用があり、体を温め、消化を助けます。
- 木香(モッコウ): キク科のモッコウの根で、理気、止痛作用があり、腹部の張りや痛みを和らげます。
これらの生薬が、それぞれの薬理作用を相互に補完し合いながら、啓脾湯としての効果を発揮します。
分類
- 漢方製剤
効能・効果
体力中等度以下で、疲れやすくて顔色が悪く、食欲不振、下痢、軟便などが見られるものの次の諸症:
- 虚弱体質
- 病後の体力低下
- 疲労倦怠
- 食欲不振
- 下痢
- 軟便
このように、啓脾湯は、体力が中程度以下で、慢性的な消化器系の不調や全身倦怠感を伴う方に適しています。
用法・用量
- 通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- 顆粒剤や細粒剤の場合、そのまま水または白湯で服用するか、お湯に溶かして服用することもできます。
漢方薬は、患者さんの体質や症状に合わせて処方されるため、自己判断での服用は避けるべきです。
副作用
漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質や症状によっては、まれに以下のような副作用が現れることがあります。
- 消化器系: 胃部不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、腹痛など
- 皮膚: 発疹、かゆみなど
- 肝機能異常: まれにAST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTPなどの上昇が見られることがあります。
- 偽アルドステロン症: 甘草に含まれる成分により、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、手足のしびれなどが現れることがあります。長期連用により起こりやすいとされています。
- ミオパチー: 低カリウム血症の結果として、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、偽アルドステロン症やミオパチーは、長期連用する場合に注意が必要です。
その他
- 啓脾湯は、比較的穏やかな作用を持つ漢方薬ですが、効果が現れるまでにはある程度の期間が必要となる場合があります。
- 他の医薬品や漢方薬と併用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。生薬の組み合わせによっては、相互作用が生じる可能性があります。
- 服用中に体調が悪くなった場合は、無理せず休養し、症状が改善しない場合は医師の診察を受けてください。
- 小児や高齢者に投与する場合は、特に慎重な注意が必要です。
注意事項
- この情報は啓脾湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
- 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
- より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。漢方薬は、個人の体質や症状に合わせて処方されることが重要です。