桂枝加芍薬大黄湯

桂枝加芍薬大黄湯について

桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)は、漢方処方の一つであり、比較的体力が中等度以下で、腹部が張り、便秘しがちな方の、しぶり腹、下腹部痛、便秘、痔疾などに用いられます。複数の生薬を組み合わせることで、それぞれの薬効を発揮し、これらの症状を改善すると考えられています。

主成分

桂枝加芍薬大黄湯は、以下の生薬から構成されています。

  • 桂皮(ケイヒ): 辛温の性質を持ち、発汗、解熱、鎮痛、健胃などの作用があります。体を温め、血行を促進する効果も期待されます。
  • 芍薬(シャクヤク): 微温で苦味酸味を持ち、鎮痛、鎮痙、止血、収斂などの作用があります。筋肉の緊張を和らげ、痛みを緩和する効果があります。
  • 大黄(ダイオウ): 苦寒の性質を持ち、瀉下作用があります。腸の蠕動運動を促進し、便通を促します。
  • 甘草(カンゾウ): 甘温の性質を持ち、鎮痛、抗炎症、緩和などの作用があります。他の生薬の作用を調和する役割も果たします。
  • 生姜(ショウキョウ): 辛温の性質を持ち、発汗、健胃、鎮吐などの作用があります。体を温め、消化機能を助ける効果があります。
  • 大棗(タイソウ): 甘温の性質を持ち、滋養強壮、緩和などの作用があります。体力を補い、精神を安定させる効果も期待されます。

これらの生薬が、それぞれの特性を生かし、複合的に作用することで、桂枝加芍薬大黄湯の効能・効果を発揮すると考えられています。製品によっては、これらの生薬を乾燥・粉末化したものが用いられています。

分類

  • 漢方製剤

効能・効果

比較的体力が中等度以下で、腹部が張り、便秘しがちなものの次の諸症:

  • しぶり腹
  • 下腹部痛
  • 便秘
  • 痔疾

ここでいう「しぶり腹」とは、便意はあるものの、少量しか便が出ず、残便感がある状態を指します。桂枝加芍薬大黄湯は、このような症状を伴う便秘や、それに伴う下腹部痛、痔の症状の緩和に用いられます。大黄の瀉下作用により便通を促し、桂皮や生姜が体を温め、芍薬が腹部の痛みを和らげると考えられています。甘草や大棗は、これらの作用を穏やかにし、体力を補う役割を担います。

用法・用量

通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与します。

  • 年齢、体重、症状により適宜増減されます。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 漢方薬は、お湯に溶かして服用すると吸収が良くなる場合があります。医師や薬剤師に確認してください。

副作用

桂枝加芍薬大黄湯は比較的安全な漢方薬とされていますが、体質や症状によっては副作用が現れることがあります。主な副作用としては、以下のものが報告されています。

  • 消化器系: 軟便、下痢、腹痛、食欲不振、胃部不快感など。特に、大黄の瀉下作用が強く出過ぎると、これらの症状が現れやすくなります。
  • 皮膚: 発疹、発赤、かゆみなど。
  • 肝臓: まれに、肝機能異常が現れることがあります。長期連用する場合には注意が必要です。
  • その他: 動悸、のぼせなど。

重大な副作用としては、頻度は不明ですが、偽アルドステロン症ミオパチーなどが報告されています。

  • 偽アルドステロン症: 低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、脱力感、手足の痙攣、麻痺などが現れることがあります。これは、甘草に含まれる成分が影響することがあります。
  • ミオパチー: 低カリウム血症の結果として、脱力感、筋肉痛などが現れることがあります。

これらの症状が現れた場合には、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。特に、高齢者や長期連用する場合には、電解質異常や肝機能異常に注意が必要です。

その他

  • 慎重投与: 次の患者には慎重に投与する必要があります。
    • 体の虚弱な患者(体力の低下している患者)。
    • 胃腸が弱く下痢しやすい患者。
    • 食欲不振、悪心、嘔吐のある患者。
    • 高度の便秘症の患者。
    • 高齢者。
    • 妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
    • 授乳婦。
    • 他の医薬品(特に利尿薬、瀉下薬、甘草含有製剤)を服用している患者。
  • 相互作用: 他の医薬品との相互作用に注意が必要です。特に、甘草を含む製剤や、カリウム排泄型利尿薬との併用は、偽アルドステロン症や低カリウム血症のリスクを高める可能性があります。
  • 長期連用: 長期連用する場合には、医師または薬剤師に相談してください。特に、血圧や電解質バランスの変動に注意が必要です。
  • 小児: 小児に対する安全性は確立されていません。医師または薬剤師の指示に従ってください。
  • 保管: 直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所に保管してください。小児の手の届かない所に保管してください。

注意事項

  • この情報は桂枝加芍薬大黄湯の一般的な情報であり、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
  • 必ず医師または薬剤師の指示に従って服用してください。
  • 漢方薬は、個人の体質や症状に合わせて処方されるものです。自己判断で使用したり、他人に譲ったりしないでください。
  • 服用中に気になる症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。
  • より詳しい情報が必要な場合は、添付文書をご確認いただくか、医師または薬剤師にご相談ください。