髪の悩み

年をとったときにあらわれる外形の変化の代表的なものといえば、髪の毛の変化でしょう。薄くなったり、白髪になってしまったり、髪の毛の悩みは尽きないものです。

とくに男性の場合は髪の毛が少なくなることに対し養毛剤などが人気ですが、年をとることによる髪の毛の変化は、決め手となる治療法がないのが正直なところです。

髪の毛と男性ホルモンとのあいだには密接な関係があります。男性ホルモンのアンドロゲンは発毛を促す働きがあります。思春期を迎えて体毛が濃くなってくるのもアンドロゲンの分泌が活発になるからです。

しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしで、アンドロゲンが過剰に分泌されると、体毛は濃いのに髪の毛が薄い、という状態になります。このような脱毛はアンドロゲン性脱毛と呼ばれて、若い時期から男性の毛が薄くなる原因となっています。

毛髪の専門医の研究によれば、アンドロゲンは毛髪の根本で毛の成長を促す毛母細胞のもとになる毛乳頭細胞の受容体とドッキングして、毛母細胞が増えるのを邪魔するからだと考えられています。

また、アンドロゲンに対する毛乳頭細胞の感受性には遺伝による個人差があり、敏感に反応する性質の人は脱毛しやすいとも言われています。

更年期の髪の毛の悩みは、毛乳頭細胞の活動の衰えによるものが多いと考えられますが、いずれの場合も、髪の毛を若い時のように保つような有効な治療法がないのが残念なところです。

髪が白くなっていくことで中年になったことを実感する人もいることでしょう。白髪は、髪の毛に色を付ける毛母細胞の中にあるメラノサイトという細胞から、黒色のもとであるメラニン色素が作られなくなることが原因です。加齢によりこのような状態になるわけですので、残念ながら効果的な治療法はありません。

女性の場合は、男性のようなアンドロゲン性脱毛などを起こすことはまれで、加齢により頭髪の上が薄くなってきた、というタイプです。しかし、男性ほどの脱毛ではなくても、髪の毛が薄い悩みを持つ人もいます。男性と同様、髪の毛の悩みに具体的な効果をもたらす治療法がないのが残念なところです。

医療機関としては、専門的な脱毛が依頼を設けている大学病院などが全国で5箇所程度というのが現状です。

髪の毛の悩みのために、かつらを利用する人もいるかと思いますが、かつらはともかく、植毛は皮膚を痛めるのでおすすめできません。また、髪の毛を清潔に保つために先発はまめに行うことがすすめられています。シャンプーやリンスも敬遠する必要はないとされています。

なお、以前はストレスが原因だと指摘されていた円形脱毛症は、現在は、ストレスとは関係がなく、過剰な免疫反応によるものだと考えられています。免疫反応の変調が毛母細胞を異物と誤認して攻撃し、その結果、脱毛が起きるのです。

円形脱毛症の治療については、副腎皮質ホルモンを塗ったり擦り込んだりする副腎皮質外用療法や脱毛した場所を固めたドライアイスで瞬間的に冷却する雪状炭酸圧低療法、紫外線を当てるPUVA(プバ)療法、薬を脱毛した逃避に塗って刺激する局所免疫療法などがあり、功を奏する例もあります。

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