神経症

恐怖症性不安障害

症状

「不安」はその対象や状況が明確ではない漠然とした警戒信号で、「恐怖」ははっきりと限定された対象や状況に対する警戒信号です。

恐怖症性不安障害は、いろいろな対象や状況に対して、強い恐怖を感じるもので、次のように分類されます。

広場恐怖

逃げ場がない、あるいは助けが得られない状況(人混み、家で一人になる、家の外で一人になるなど)に身をおくことに対する強い恐怖が生じるものです。

この障害をもつ人の多くは、そのような状況で、以前にパニック発作やなんらかの身体症状(胃の不快感や失禁しそうになるなど)を起こした経験をもっています。

その体験から「また同じようなことになったらどうしよう」という不安(予期恐怖)が強まり、なかには外出できなくなる人もいます。

社会恐怖(社会不安障害、対人恐怖)

他者と接することに対して予期恐怖を感じ、なんとか回避しようとします。

また、人から注目されるような状況(会議の席など)に置かれると、恐怖のあまりパニック発作を起こすこともあります。

このようなことから、学校や会社に行けなくなり、ひどくなると家から出られなくなり、さらにはうつ状態におちいって、社会的機能が著しく低下することがあります。

赤面恐怖(人前で緊張して顔が赤くなることに対する恐怖)、視線恐怖(自分の視線や人の視線を恐れる)、醜形恐怖(自分の容貌が劣っていて、人に嫌われるのではないかと恐れる)、自己臭恐怖なども含まれます。

特定の恐怖症

それほど恐れる必要のない、ある特定の対象や状況、場面に対して激しい恐怖を抱き、パニック発作を起こすことがあります。

高所恐怖、閉所恐怖、暗闇恐怖、雷恐怖、注射恐怖、犬や鳥などに対する動物恐怖、とがったものを怖がる尖端恐怖など、数多くのものがあります。

このような恐怖を避けるために、いろいろな「はからい的処置(強迫行為)」をとるようになります。

たとえば、高所恐怖のためにホテルの高層階には泊まらない、閉所恐怖のためにエレベータには乗らないといった行為は、はからい的処置です。こうした状況が続くと、日常生活にも支障をきたすことがあります。

原因

家系的に発症するケースが少なくないため、遺伝的、素質的なものが考えられていますが、明確ではありません。

教育された環境(生い立ち)も重要な因子と考えられています。

治療法

精神分析的精神療法や森田療法、行動療法などが有効ですが、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物による治療を併用することもあります。

社会的不安障害には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のフルボキサミンが有効です。

治療方針は、恐怖の対象や状況、場面から逃げないようにすることです。

また、本人は、なぜそのような恐怖が生じるのかがわからないので、その原因を探り当て、理解していくことも大切です。

パニック障害(不安神経症)

症状

理由もなく、突然強い不安や死の恐怖などに襲われて苦悶するものです。

同時に、動悸や呼吸困難(窒息感など)、めまい、発汗、冷や汗など自律神経症状を起こします。

こうしたパニック発作を初めて起こしたときは救急外来などを訪れますが、体の病気ではないので検査をしても異常は見つかりません。

しかし、本人は「また起こるのではないか」という予期恐怖が増し、ひどくなると外出できなくなるなど、行動が大きく制限されるようになります。

原因

明らかではありませんが、なんらかの理由で、体に異変が起こっているという信号が過剰に発生するのが原因という仮説があります。

信号発生に関与している神経伝達物質として、GABA(ギャバ)、ノルアドレナリン、セロトニンなどが考えられています。

治療法

予期恐怖を軽減させるとともに、パニック発作を起こりにくくするために、抗うつ薬のSSRI(パロキセチン、セルトラリン)や抗不安薬が用いられます。

薬物療法に加えて、発作を起こす心理的な問題を解決するための精神分析的精神療法や、症状があってもとらわれずに生きることを体得する森田療法、行動療法、内観療法なども行われます。

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