認知症の進行状況は個人差が大きい
認知症の進行状況は、患者さんの状態や周囲の環境、介護の良否など多くの要因が関与しており個人差が大きいものです。
物忘れ(記憶障害)を例に考えると、まず直前の記憶が失われ始め、前日の記憶、さらに数カ月前と、過去に無かって徐々に記憶が失われていくのが一般的な進展様式です。また新しいことを覚えることも困難になってきます。
認知症の進行の仕方
- 軽度
- ・夕食の段取りや家計の管理、買い物などに支障をきたす
- ・買い物で必要な物を必要なだけ買うことができない
- ・誰かがついていないと買い物の勘定を正しく払えない
- ・自分で衣服を選んで着る、入浴するなど家庭生活はなんとかできるが、社会生活で困ることがある
- 中等度
- ・介助なしでは適切な衣服を選んで着ることができない
- ・釣り合いのとれない組み合わせで衣服を着る
- ・買い物を1人ですることができない
- ・毎日の入浴を忘れることがある。自分で身体をきちんと洗うことはできる
- ・家庭生活で色々なことを1人でできなくなり始める
- やや高度
- ・寝巻きの上に普段着を重ねて着てしまう、靴の左右を間違えるなど適切でない着衣をする
- ・入浴を嫌がる、体をうまく洗えない、風呂から出て体をきちんと拭くことができない
- ・トイレの水を流せない
- ・尿便失禁がみられる、施設入所の可能性が高まる
- 高度
- ・言葉がとぎれとぎれになる、完全な文章を話せなくなる、日常会話ができない
- ・歩行能力の喪失、歩くのが難しい
- ・介助なしで椅子に座れない
- ・笑う能力の喪失、嚥下運動は保たれている
- ・意識の低下、昏睡
徘徊や物盗られ妄想、暴力行為などに代表される周辺症状は、認知症の重症度(中核症状の軽重)に関係なく出現するといわれています。つまり、認知症が軽度の段階でも、徘徊や物盗られ妄想などの周辺症状がみられる可能性があります。一方、認知症が高度に進展しても、これらの周辺症状がまったくみられない患者さんもいます。
脳血管性認知症やレビー小体型認知症の患者さんにみられる認知症の進行状況を評価する決まった尺度はないと思います。脳血管性認知症では、脳血管障害を繰り返す度に認知症が階段状に進行・悪化していくことが多いといわれています。