認知症にみられる中核症状と周辺症状

認知症でみられる2つの症状

認知症でみられる症状は、中核症状と周辺症状に分けて考えると理解しやすくなります。

中核症状は、脳の神経細胞が壊れることが直接的な原因で生じるものです。

物忘れ(記憶障害)や見当識障害(日付や場所、人の認識の障害)、失語失認実行機能障害などがこれに含まれます。

一方、周辺症状は、中核症状に由来する多様な症状です。

介護する家族や周囲の人々が最も困るのは、この周辺症状への対応です。

周辺症状は、さらに徘徊や暴力行為、幻覚や妄想などのように活発な症状を示す場合(陽性症状)と自発性の低下、意欲の減退、抑うつ状態、拒食などのように不活発な症状を示す場合(陰性症状)とに分けられます。

中核症状と周辺症状にみられる症状

認知症が進展すると、中核症状と周辺症状がいろいろな組み合わせで現れてきます。

物忘れや日時がわからない、計算ができないなどのように、中核症状だけがみられる患者さん、物忘れよりも徘徊や暴力行為が目立ち何回も警察のお世話になる患者さん、物盗られ妄想が頻繁で同居するお嫁さんを犯人呼ばわりする患者さんなど、10人患者さんがいると10の異なる症状を示します。

周辺症状では、ある時期にみられた症状が、経過に従ってみられなくなり、次に別の症状が出てくることが多くあります。

周辺症状がまったくみられない患者さんもいますが、大部分の患者さんでは、なんらかの周辺症状が時期を異なって出現と消失をくり返しながらゆるやかに進行・悪化していきます。

治療法については、現在、中核症状に対する根治的な治療法はないのが実情です。

一方、周辺症状に対しては、上手な介護、適切な対応に薬物療法を加えることで症状を軽減することが可能です。

次ページは「認知症が日常生活に支障をきたす」