高脂血症と認知症

アルツハイマー病に効果がある高脂血症の治療薬

高脂血症の治療薬のひとつに、「スタチン薬」と呼ばれる薬剤があります。スタチン薬は、強力なコレステロール低下作用に加えて、抗炎症作用や内皮細胞機能改善、脳血管拡張作用、血小板機能抑制など、多くの機能をもつことが明らかになってきています。現在、このスタチン薬がアルツハイマー病の治療に有効という研究が多く発表されています。

アルツハイマー病の発症には、老人斑の蓄積とともに脳内の微小循環障害も重大な原因になっていることが推測されてきています。細胞レベルの話ですが、コレステロールが高い環境がみられると、老人斑の原因になる物質の産生が増加するといわれています。スタチン薬は、この物質の沈着の軽減や細胞膜機能の改善、脳血流の増加を促すことが明らかになってきています。そこから、スタチン薬がアルツハイマー病の発症予防あるいは治療に有効なのではないかとの研究がたくさん出てきているのです。

ある研究によると、脂質低下を目的にスタチン薬などが使用されていた薬2万4500人と、高脂血症はみられるが薬物治療を行っていない約1万1000人、血清脂質正常群約2万5000人の3群を5年間追跡調査した結果では、脂質正常群に比べてスタチン薬を使用していた群では、アルツハイマー病あるいは認知症の相対的危険率が70%減少することが明らかとなっています。

この研究からも明らかなように、スタチン薬による結成コレステロールの低下療法は、アルツハイマー病発症の危険性を低下させる可能性をもっているようです。高脂血症と診断された方は、食事療法とともに、早めにスタチン薬を服薬して血清コレステロールの低下を心がけるようにしましょう。

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