認知症を診断する手順

家族も一緒に受診することが大事

認知症を疑われる患者さんが医療機関を受信された際、医師はどのような手順で患者さんを診察し、診断を行うのでしょうか?

医師が認知症の有無を判断する際、最も重視することは、患者さんの日常生活をよく知る家族や周囲の人たちからの情報です。日常生活で何ができなくなってきたのか、どのような症状がみられるのか、以前と比べてどのような変化があるのかなどを正確に聴くことができれば、認知症の有無を判断することはそんなに難しいことではないのです。

そのためには、患者さんの日常生活をよく知る家族や周囲の人達が患者さんと一緒に受診してくれないと正確な診断を下すことはできません。

診断に困るのは、患者さんが1人で医療機関を受信してきた場合です。患者さんの訴える物忘れが、どの程度日常生活に支障をきたしているのかを判断する根拠がないからです。認知症を心配する高齢者では、必要以上に物忘れを気にしていることが多いため、患者さんが1人で受信された場合、年齢に伴う心配いらない物忘れなのかあるいは認知症でみられる物忘れなのかの診断に迷うことになります。家族の誰かが認知症ではないかと心配される際は、必ず家族が医療機関を受診するようにしてください。

認知症の有無の判断根拠となる質問

家族からの情報収集の次に、患者さん本人への問診と診察になります。あらかじめ家族から伺った情報を元に患者さんにいろいろ質問し、その答えが正しいのか誤っているのかを判断していきます。

認知症の有無の判断根拠としている質問のひとつに、「前日の夕食あるいは当日の昼食に何を食べましたか?」があります。認知症に進展している患者さんでは、直近あるいは数日前の出来事を記憶できないことが多いのです。たとえば、午後3時に診察したとき、3時間前に食べた昼食の内容をまったく思い出せない場合には、記憶障害の存在が強く疑われます。

また、テスト形式による認知機能検査によって認知機能障害の有無ならびに重症度を判断することもあります。

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