塩酸ドネペジルの上手な使い方

アリセプトは症状の進行を抑制する薬

アルツハイマー病と診断されると、主治医からは塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)の投与を開始されることが多いと思います。けれども、アリセプトは、アルツハイマー病を治す、改善する薬剤ではありません。症状の進行を抑制する可能性をもつ薬剤であることを忘れないようにしてください。アリセプトを服用したからといって、患者さんの症状が劇的によくなるわけではなく、症状に変化がみられない場合が圧倒的に多いのです。

しかし、アルツハイマー病は、緩徐に進行・悪化する特徴をもつ病気であることを考えると、症状が変化しないことも薬剤の効果と考えることもできます。患者さんの中には症状に変化がみられないからと、アリセプトの服薬を中断する人がいますが、そうすると認知症状が急激に悪化することもあります。そのため、可能な限りアリセプトの服薬を継続することをお勧めします。

アリセプトは副作用の少ない薬剤ですが、飲み始めに吐き気や嘔吐、食欲低下、胃部不快、下痢などの消化器系の副作用がときにみられます。我慢して服薬を続けるとこれらの副作用は消失してくることもありますが、服薬継続を嫌がる患者もしばしばみられます。副作用がみられた場合、無理をせず一時服薬を中止したほうがよいかもしれません。

いつ服薬するのが適切か?

アリセプトは、1日1回の投与です。いつ服薬するかに関して決まりはありませんが、朝の服薬が最も飲み忘れが少ないのではないでしょうか。ただし、介護する家族が朝早く仕事に出かけてしまい薬の管理ができないときには、夕食後でもよいと思います。

大切なことは、薬の管理を患者さんだけに任せないことです。患者さんだけに薬の管理を任せると、飲み忘れや飲み違い(とくに過剰服薬)、薬袋の紛失など、多くの問題が生じる可能性があります。介護する家族が薬の管理を行うことが原則です。

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