不眠症の定義

不眠症は、入眠障害中途覚醒早朝覚醒熟眠障害といった睡眠問題が30日以上続き、日中に倦怠感意欲低下集中力の低下食欲低下等の症状が発現する病気です。不眠の原因は主にストレス、心やからだの病気・薬の副作用などさまざまで、原因によって適切な対処法が必要です。

不眠が続くと不眠に対する恐怖が生まれ、緊張や睡眠状態への強い執着などにより、更に不眠が悪化するという悪循環になるケースが見られます。自身で不眠改善の努力をしても効果が出ないときは医師に相談しましょう。

また、睡眠薬に対して過度に心配する必要はありません。現在使われている睡眠薬は正しく使用すれば安全です。

不眠症の診断基準

誰もが「眠ろうとしても中々寝付けない」という体験をしたことがあると思います。心配事や悩み事があったり、試験の前日や旅先での慣れない生活など様々な原因がありますが、普通は数日から数週のうちにまた眠れるようになります。

しかし時には不眠が改善されずに1ヶ月以上継続してしまう場合があります。不眠が続くと倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振などの症状が現れます。

このように「1. 長期間にわたり夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活に支障をきたす」、このふたつが認められたときに不眠症と診断されます。

不眠症の種類

不眠症には大きく分けて下記の4つに分類されます。

  • 入眠障害(寝付きが悪い)
  • 中途覚醒(何度も途中で目が覚める)
  • 早朝覚醒(早朝に目が覚める)
  • 熟眠障害(熟睡感が得られない)

日本人の5人に1人が不眠症

日本人を対象に行なった調査によれば、5人に1人が睡眠で休養が取れていない、何らかの不眠があると回答しています。一般的に加齢に比例して不眠も増加します。60歳以上の方は約3人に1人が何らかの睡眠問題で悩んでいます。

不眠症は誰しもが経験しうる一般的な病気であって、決して特殊な病気ではないので過度に悩む必要はありません。

睡眠時間は問題ではない

睡眠時間には個人差があります。日本人の平均睡眠時間は7時間程度ですが、3時間程度の睡眠で間に合っている人もいれば、10時間ほど睡眠をとらないと寝足りないという人まで様々です。また健康な人でも加齢にともない中途覚醒や早朝覚醒が増えてきます。

冒頭にも書きましたが、不眠症は眠れないというだけではなく不眠によって「日中に不調が出現する」ことが問題なのです。たとえ眠りが浅いとしても日中の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。睡眠時間が短いことや目覚め回数にこだわりすぎないことが大事です。

不眠の原因

大部分の不眠症にはそれぞれ原因があり対処法も異なります。

特に、睡眠時無呼吸症候群レストレスレッグス症候群周期性四肢運動障害うつ病による不眠や過眠は専門医による検査と診断が必要です。これらの特殊な睡眠障害にはそれぞれの治療法があり、通常の睡眠薬では治りません。これらの睡眠障害が疑われる場合には、日本睡眠学会の睡眠医療認定医や精神科医へ相談することをおすすめします。

ストレス

ストレスと緊張は安眠を妨害する要因です。特に神経質で真面目な人ほどストレスを強く感じ、不眠に対して過剰に執着してしまい不眠症になるという傾向がみられます。

からだの病気

高血圧心臓病呼吸器疾患による咳や発作・腎臓病前立腺肥大による頻尿・糖尿病関節リウマチによる痛み・アレルギー疾患による痒み・脳出血脳梗塞など様々な病気により睡眠が妨害され不眠が生じます。また睡眠時無呼吸症候群ムズムズ脚症候群レストレスレッグス症候群)などによる睡眠中の呼吸異常や手足の異常運動によって睡眠が妨げられる場合も珍しくありません。

不眠そのものより背後にある病気の治療が先決です。原因となっている症状がとれれば、不眠はおのずと消失します。

こころの病気

こころの病気の多くは不眠を伴います。近年は、うつ病にかかる人が増えています。単なる不眠だと思っていたら実はうつ病だったというケースも少なくありません。「早期覚醒」と「日内変動(朝は無気力で夕方にかけて元気がでてくる)」の両方がみられる場合には早めに専門医を受診してください。

薬や刺激物

治療薬が不眠をもたらすこともあります。睡眠を妨げる代表的な薬としては降圧剤甲状腺製剤抗がん剤などがあります。また抗ヒスタミン薬を服用していると日中に眠気が出ます。コーヒー・紅茶などに含まれるカフェイン、タバコに含まれるニコチンなどには覚醒作用があるので安眠の妨げになります。カフェインには利尿作用もあり、トイレ覚醒も増えます。

生活リズムの乱れ

交替制勤務や時差などが原因となり体内時計が乱れると不眠を招きます。現代は24時間社会といわれるほどで昼夜の区別が消滅しつつあるので、どうしても睡眠リズムが狂いがちなので出来る限り自身の生活リズムを作りましょう。

環境

騒音や光が気になって眠れないケースもみられます。また寝室の温度や湿度が適切でないと安眠できません。

不眠の対処法

不眠症を改善するうえで一番重要なのは不眠の原因を特定し、取り除くことです。それに加えて自分流の安眠法を工夫することが効果的です。安眠のためのコツを以下にまとめました。

就寝・起床時間を一定にする

睡眠覚醒は体内時計で調整されています。週末の夜ふかしや平日の睡眠不足を補う休日の寝坊や昼寝のしすぎは逆に体内時計を乱す原因になるので注意しましょう。平日・週末に関係なく決まった時間に寝て起きるということを習慣化しましょう。

睡眠時間にこだわらない

睡眠時間には個人差があります。「◯◯時間眠りたい!」と目標を立てないでください。どうしても眠気がないときは思い切って寝床から出てください。寝床にいる時間が長すぎると熟眠感が減ります。日中に眠気があるときは午後3時前までに30分以内の昼寝をとると効果的です。

太陽の光を浴びる

太陽光など強い光には体内時計を調整する働きがあります。光を浴びてから14時間が経過すると眠気が生じてきます。早朝に光を浴びると眠くなる時間が早まり、起床も早くなります。「早寝早起き」といわれますが、実際には「早起きすることが早寝につながる」のです。逆に夜に強い照明を浴びすぎると体内時計が遅れて早起きが辛くなります。

適度の運動をする

適度な運動による体への負荷は心地よい眠りを生み出してくれます。午前中に運動するよりも午後に軽く汗ばむ程度の運動をするのがよいようです。ハードな運動はメンタルへの刺激も強く寝付きを悪くするため逆効果です。短期間の集中的な運動よりも、負担にならない程度の有酸素運動を長時間継続することが効果的です。

寝酒はダメ

お酒は睡眠にとって百害あって一利なし。特に深酒は禁物です。寝酒をすると寝付きが良くなるように思えますが、効果は短時間しか続きません。飲酒後は深い睡眠が減り、早朝覚醒が増えてきます。

不眠恐怖の悪循環を断つ

不眠が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、「早く眠らなければ」という焦燥感で目が冴えてしまう。不眠症の方に共通する不安です。「不眠が慢性化して不眠症になる」原因には「不眠恐怖」があります。不眠が続くうちに眠ろうとすると緊張し、夜になるのが憂鬱になってきます。そういうときは「どうせいつかは眠くなるのだから、眠くなるまで起きていよう」くらいに割り切ったほうが精神的にも良い結果をもたらしてくれます。

事実、「眠れないのに無理に就寝しようとする」と不眠が悪化することが分かっています。常識的な範囲内でベッドで休む時間を決めておき、眠れなければベッドから出る、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。前の晩に眠れなくて仕事に集中できない、眠くてしようがないという場合には、昼休みを利用して昼寝をするといいでしょう。15分程度で十分です。たとえ短時間でも脳の疲労をとるのに効果があります。

睡眠薬は怖いクスリ?

答えはNO!です。現在の不眠治療は睡眠薬を用いた薬物療法が中心です。睡眠薬は一度使い始めると手放せなくなり、次第に量が増えていくので副作用が怖い。そう思い込んでいる方が多いようですが、最近の睡眠薬はそういう心配はありません。かつて用いられていた睡眠薬は効果が強力な反面、副作用も強く安全性に問題がありました。しかし現在一般的に使われている睡眠薬は不安や緊張・興奮をやわらげて眠りに導くので自然に近い眠りが得られ、副作用も少なく安心して使えます。ただし長期にわたって漫然と使い続けるのはよくありません。医師の指導の元に適切に使用することが大事です。

最近では、ドラッグストアでも睡眠薬を購入することができます。これはアレルギー薬の副作用(眠気)を利用したもので、あくまでも短期間の使用に限られています。不眠症に対する治療効果は確かめられていませんので、不眠症の方はこれら市販の睡眠薬を長期に用いてはなりません。

一緒に読まれている記事

MENU