風が吹いても痛い!「痛風」の激痛の原因、診断、そして発作を二度と起こさないための対策

はじめに:痛風とは?体内で起きる炎症のメカニズム

痛風(つうふう)は、主に足の親指の付け根などの関節に、激しい痛みと腫れを伴う炎症(痛風発作)を引き起こす病気です。「風が吹いても痛い」と言われるほどの激痛から、その名がつけられました。

この病気の根本原因は、血液中の尿酸(にょうさん)という物質が異常に増えすぎた状態、すなわち高尿酸血症(こうにょうさんけつしょう)です。

尿酸と高尿酸血症

  • 尿酸の正体:尿酸は、細胞の核に含まれるプリン体という物質が体内で分解される際にできる老廃物です。プリン体は、食品に含まれるほか、細胞の新陳代謝によっても体内で常に作られています。
  • 高尿酸血症:通常、尿酸は尿として体外に排出されますが、体内で作られる量と排出される量のバランスが崩れ、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える状態を指します。

痛風発作のメカニズム

血液中の尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が結晶化して関節に溜まり始めます。

  1. 尿酸結晶の蓄積:尿酸結晶は針のような形をしており、足の関節、特に体温が低い親指の付け根などに蓄積します。
  2. 炎症の勃発:何らかの刺激(過度な飲酒、激しい運動、脱水など)で結晶が剥がれ落ちると、それを異物と認識した白血球が攻撃します。この戦いの際に大量の炎症物質が放出され、激しい炎症(痛風発作)が起こります。

2. 痛風発作の特徴的な症状と経過

痛風発作は、その激しさと突然の発症が特徴です。

1. 痛風発作の典型的症状

  • 発症部位:最も多いのは足の親指の付け根の関節(第1中足趾節関節)ですが、足首、膝、手の関節などにも起こることがあります。
  • 激痛:深夜から明け方にかけて突然発症し、ズキズキとした耐えがたい激痛を伴います。
  • 腫れと熱感:関節が赤く腫れ上がり、触ると熱を持っていることがわかります。
  • 症状の経過:痛みは通常、1〜2日でピークに達し、その後7日から10日ほどで自然に治まります。

2. 痛風の進行段階

進行段階 状態 リスクと症状
無症候性高尿酸血症 尿酸値は高いが、まだ発作を起こしていない状態。 痛風発作の予備軍。すでに腎臓への負担は始まっている可能性あり。
急性痛風発作 激しい痛みと腫れが起こっている状態。 発作を繰り返すうちに、関節破壊のリスクが高まる。
間欠期 発作が治まり、次の発作までの無症状の期間。 この期間にこそ、薬物療法と生活改善を徹底すべき。
慢性期 発作を繰り返し、関節に尿酸の塊(痛風結節)ができたり、関節が破壊されたりする状態。 腎機能障害(痛風腎)や尿路結石、動脈硬化のリスクが著しく高まる。

3. 痛風と高尿酸血症の診断と治療の基本

痛風は、血液検査、発作時の症状、そして関節のエコー検査や関節液の検査によって診断されます。

診断指標

  • 血液検査尿酸値が7.0mg/dL以上であれば高尿酸血症と診断されます。
  • 痛風発作時:激しい炎症があるため、血液検査で白血球や炎症反応(CRP)の上昇が見られます。
  • 確定診断:関節液を採取し、顕微鏡で尿酸の結晶を確認することで確定診断となります。

治療の基本方針

治療は、「発作時の炎症を抑える治療」と「高尿酸血症を改善する治療」の二本柱で行われます。

A. 痛風発作時の対処(急性期)

  • 安静と冷却:発作が起こったら、患部を冷やし、安静にします。
  • 薬物療法:炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコルヒチンなどの薬を服用します。
    • 注意:発作時に尿酸値を下げる薬を飲み始めると、かえって発作を悪化させる可能性があるため、自己判断で薬を飲むのは危険です。必ず医師の指示に従ってください。

B. 高尿酸血症の治療(間欠期・慢性期)

  • 尿酸降下薬:発作が治まってから、血液中の尿酸値を目標値(多くは6.0mg/dL以下)に下げるための薬物療法を開始します。尿酸の生成を抑える薬や、尿酸の排泄を促す薬などが用いられます。
  • 生活習慣の改善:薬物療法とともに、生活習慣の見直しが不可欠です。

4. 痛風発作を二度と起こさないための対策

痛風発作は、生活習慣を改善することで、予防することが可能です。

1. 食事療法の徹底:プリン体を控える

食事によるプリン体の摂取を控えめにすることが基本ですが、それ以上に重要なのは「尿酸値が上がりにくい体」を作ることです。

  • アルコール制限:特にビールはプリン体が多く、尿酸値を上げる作用も強いため、厳しく制限します。日本酒やワインも飲み過ぎに注意が必要です。
  • プリン体の多い食品:レバー、白子、魚卵、干物などのプリン体が多い食品は、発作時や尿酸値が高い時期には控えます。
  • 果糖(甘い飲料)の制限:清涼飲料水や果物の摂りすぎも、尿酸の産生を促すため、控えるべきです。
  • 水分補給:尿酸の排泄を促すため、十分に水分(水やお茶)を摂取します(1日2Lを目安)。ただし、一度に大量に飲むのは避け、こまめに補給します。

2. 肥満の解消と運動

肥満はインスリン抵抗性を高め、尿酸の排泄を妨げるため、痛風発作のリスクを大幅に高めます。

  • 体重管理:標準体重を目指した無理のない減量を行います。
  • 適度な運動:激しい無酸素運動は逆に尿酸値を一時的に上げる可能性があるため、有酸素運動(ウォーキングなど)を継続的に行うのが推奨されます。

3. 合併症の管理

痛風患者は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併しやすい傾向があります。これらの病気を治療せず放置すると、痛風腎や心筋梗塞のリスクが高まるため、併せて徹底的に管理することが必要です。

まとめ:痛風は予防できる病気です

痛風発作の激痛はつらいですが、痛風は正しい知識と継続的な治療・自己管理によって、十分に予防できる病気です。発作が治まった「間欠期」こそが、将来の健康を守るための最も重要な期間です。

痛風・高尿酸血症の要点 説明
病態の核心 血液中の尿酸値(7.0mg/dL以上)が上がり、関節に尿酸結晶が溜まる。
発作の症状 足の親指の付け根などに起こる、耐えがたい激痛と腫れ、熱感
最大の危険 発作の繰り返しによる関節破壊や、痛風腎尿路結石動脈硬化
治療の原則 発作が治まってから尿酸降下薬で尿酸値を6.0mg/dL以下に維持する。
取るべき行動 禁酒水分補給を徹底し、内科専門医の指導のもと、尿酸値を管理する。

健康診断で尿酸値が高いと指摘されたら、「いつか激痛が来るかもしれない」という体のサインです。発作を経験する前に、専門医に相談し、予防のための治療と生活改善を始めましょう。

本記事は情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。診断や治療、具体的な食事制限については、必ず専門の医療機関(内科・痛風専門外来など)を受診し、医師の指示に従ってください。