乳児血管腫の概要
乳児血管腫は、乳児期に多く見られる、良性の血管腫瘍です。見た目が赤く、いちごの実に似ていることから、「いちご状血管腫」とも呼ばれます。出生時には小さく、生後数週間から数か月かけて急速に大きくなるのが特徴です。
原因
乳児血管腫の詳しい原因は、まだ完全には解明されていません。血管内皮細胞の異常な増殖が関与していると考えられていますが、遺伝的な要因や環境要因との関連性についても研究が進められています。
症状
- 赤色の斑点: 生まれたときから赤色の斑点がある場合や、生後数週間から数か月かけて徐々に赤みが強くなる場合があります。
- 盛り上がり: 平らな斑点の場合もあれば、皮膚から盛り上がった状態になる場合もあります。
- 大きさ: 数ミリから数センチのものまで、大きさや数は個人差があります。
- 場所: 顔、頭、首、体幹、四肢など、体のどこにでも発生する可能性があります。
種類
乳児血管腫には、大きく分けて以下の種類があります。
- 表面型: 皮膚の表面に赤い斑点として現れるタイプです。
- 深在型: 皮膚の深部に発生し、表面からは赤みが見えないタイプです。
- 混合型: 表面型と深在型の両方の特徴を併せ持つタイプです。
自然経過
多くの乳児血管腫は、1歳を過ぎる頃から自然に小さくなり始め、5歳頃までに約半数が、7歳頃までに約7割が自然に消退するとされています。しかし、完全に消えない場合や、大きくなりすぎて機能に影響を与える場合もあります。
治療
自然に消えることが多い乳児血管腫ですが、以下の場合に治療が必要となることがあります。
- 視力や呼吸に影響を与える場合: 眼瞼や鼻腔などにできた血管腫が、視力や呼吸を妨げる場合。
- 出血や潰瘍を伴う場合: 血管腫が破れて出血したり、潰瘍ができたりする場合。
- 美容上の問題がある場合: 顔などにできた血管腫が、子どもの心の発達に影響を与える可能性がある場合。
治療法としては、以下のものが挙げられます。
- 薬物療法: プロプラノロールというβ遮断薬が効果を示すことが知られています。
- レーザー治療: 血管を凝固させることで、血管腫を縮小させます。
- 外科手術: 大きな血管腫や、他の治療法が効果がない場合に、外科的に切除する場合があります。
予防
乳児血管腫の予防法は確立されていません。
診断
乳児血管腫の診断は、医師の診察と超音波検査などにより行われます。
経過観察
乳児血管腫は、自然に消えることが多いですが、定期的に医師に診てもらい、経過を観察することが大切です。
まとめ
乳児血管腫は、自然に消えることが多い良性の腫瘍ですが、大きくなったり、機能に影響を与える場合は、治療が必要となることがあります。治療法は、血管腫の種類や大きさ、場所、合併症などによって異なります。心配な場合は、小児科医にご相談ください。