1型糖尿病とは?~自己免疫疾患、症状、治療、そして共に生きる~

「もしかして、子どもが急に痩せてきた?」「最近、すごく喉が渇くみたい…」

1型糖尿病は、かつては「小児糖尿病」とも呼ばれ、主に若い世代に発症することの多い病気です。しかし、大人になってから発症するケースも少なくありません。

この記事では、1型糖尿病の原因、症状、治療法、そして患者さんやご家族がどのようにこの病気と向き合っていくかについて、分かりやすく解説します。

1. 1型糖尿病とは?インスリンが作られなくなる病気

私たちの体は、食事から摂取した糖分をエネルギーとして利用するために、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンを必要とします。

1型糖尿病は、何らかの原因によって膵臓のインスリンを作る細胞(β細胞)が破壊され、インスリンがほとんど、あるいは全く分泌されなくなる病気です。これは、自分の免疫システムが誤ってβ細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患であると考えられています。

そのため、1型糖尿病を発症すると、体内でエネルギー源であるブドウ糖を細胞に取り込むことができなくなり、血糖値が異常に上昇してしまいます。

2. 2型糖尿病との違い:生活習慣病ではない

糖尿病には主に1型と2型がありますが、この二つは全く異なる病気です。

区分 1型糖尿病 2型糖尿病
主な原因 自己免疫疾患による膵臓β細胞の破壊 インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい)やインスリン分泌能の低下、生活習慣など
発症年齢 若年層に多いが、成人発症もある 中高年に多い
インスリン分泌 ほとんど、または全く分泌されない 相対的に不足している、または働きが悪い
治療 インスリン注射が必須 食事療法、運動療法、薬物療法(インスリン注射が必要になる場合もある)
生活習慣との関連 直接的な関連は薄い 肥満、運動不足、食生活の乱れなどが深く関わる

1型糖尿病は、生活習慣病である2型糖尿病とは異なり、食生活や運動不足が直接的な原因ではありません

3. 1型糖尿病の症状:急激に現れることが多い

1型糖尿病の症状は、インスリンが急激に不足するために、比較的短期間で現れることが多いのが特徴です。主な症状としては以下のものがあります。

  • 強い喉の渇き(口渇)
  • 頻繁な排尿(多尿、特に夜間)
  • 急激な体重減少
  • 強い倦怠感、疲れやすさ
  • 食欲亢進(食べても痩せる)
  • 視力障害(目がかすむなど)

これらの症状が急に現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。放置すると、糖尿病ケトアシドーシスという命に関わる状態に陥る危険性があります。

4. 1型糖尿病の診断:血液検査が重要

1型糖尿病の診断は、主に血液検査によって行われます。重要な検査項目としては以下のものがあります。

  • 血糖値: 高血糖の状態を確認します。
  • HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー): 過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映します。
  • インスリン自己抗体: 膵臓のβ細胞に対する自己抗体の有無を調べます。1型糖尿病の診断に重要な指標となります。
  • C-ペプチド: 体内で作られるインスリンの量を間接的に評価します。1型糖尿病では低値を示します。

これらの検査結果を総合的に判断し、1型糖尿病の診断が確定されます。

5. 1型糖尿病の治療:インスリン補充が不可欠

1型糖尿病では、体内でインスリンをほとんど作ることができないため、生涯にわたるインスリン補充療法が必須となります。主なインスリン補充の方法は以下の通りです。

  • インスリン注射: 皮下注射によってインスリンを補充します。1日に複数回、自己注射を行うのが一般的です。
  • インスリンポンプ療法: 小型ポンプを用いて、持続的に皮下へインスリンを注入する方法です。より生理的なインスリン分泌に近い状態を保つことができます。

インスリン療法と並行して、食事療法運動療法も非常に重要です。

  • 食事療法: 血糖値の急激な変動を避けるために、食事の量やタイミング、栄養バランスに注意が必要です。
  • 運動療法: 血糖コントロールを助け、全身の健康を維持するために、適度な運動を継続することが大切です。

これらの治療は、医師や管理栄養士などの専門家と連携しながら、個々の状態に合わせて進めていく必要があります。

6. 1型糖尿病と生きる:合併症予防と心のケア

1型糖尿病とともに長く生きていくためには、血糖コントロールを良好に保ち、合併症を予防することが重要です。

  • 定期的な検査: 眼科、腎臓内科、神経内科などを受診し、合併症の早期発見・早期治療に努めましょう。
  • 自己管理の徹底: 血糖測定、インスリン注射、食事記録などをこまめに行い、自身の状態を把握することが大切です。
  • 低血糖への対策: インスリン療法を行っている場合、低血糖のリスクがあります。症状や対処法を理解し、常にブドウ糖などを携帯するようにしましょう。

また、1型糖尿病は、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても大きな負担となることがあります。

  • 情報交換と交流: 患者会や支援団体などを活用し、同じ病気を持つ人たちと情報交換や交流をすることで、精神的な支えとなることがあります。
  • 心理的なサポート: 必要に応じて、カウンセラーや心理士などの専門家のサポートを受けることも有効です。

まとめ:1型糖尿病を理解し、前向きに生きる

1型糖尿病は、インスリン補充療法が不可欠な病気ですが、適切な治療と自己管理を行うことで、健康な人と変わらない生活を送ることは十分に可能です。

  • 早期発見と適切な治療開始が重要です。
  • 生涯にわたるインスリン療法を正しく理解し、継続しましょう。
  • 食事療法、運動療法を生活に取り入れ、血糖コントロールを目指しましょう。
  • 合併症予防のための定期的な検査を忘れずに。
  • 一人で悩まず、医療チームや家族、患者会などと連携しましょう。

1型糖尿病とともに生きることは、決して簡単なことではありませんが、周りのサポートを受けながら、前向きに、そして自分らしく生きることを諦めないでください。