新生児の病気

早産児と低出生体重児

早産児と低出生体重児の違い

生まれたときの体重が2500グラム未満の赤ちゃんを一般に未熟児と呼びます。中でも7週未満で生まれた赤ちゃんを「早産児」、在胎週数に比べて小さい赤ちゃんを「低出生体重児」と呼んで区別しています。早産児は低出生体重児に比べると、同じ体重でも胎内にいる期間が短いので、いろいろな機能が未熟です。また未熟児でも極小未熟児(1500グラム未満)、超未熟児(1000グラム未満)ほど育ちにくいといえます。

原因

妊娠中毒症、切迫早産、多胎、性器の出血、胎児異常、妊婦のアルコール依存症、喫煙などがあげられます。

予防

妊娠中は、胎内で胎児を育む大切な時期です。アルコールや、たばこをやめるだけでも、未熟児が生まれる原因の一つは確実になくなります。

起こりやすい合併症

からだの器官の機能がまだ十分に成熟していないので次のような合併症を起こしやすく、そのために死亡することもあります。合併症としては、低体温、呼吸窮迫症候群、低血糖症、貧血、頭蓋内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、感染症など。

特徴

身長に比べて頭やおなかは大きく、胸は小さくて、おへそは比較的低い位置にあります。また、腕や足は細く、皮膚は薄くて赤みをおび、しわが少なくて皮下脂肪もありません。爪はやわらかくて、指先まで伸びていないこともあります。

ケアと治療

出生時の体重が2000グラム以上あれば、それほど心配ありませんが、保温安静に気をつけ、感染の予防や栄養の補給のためにも専門施設へ入院します。

胎児性アルコール症候群について

母体の慢性アルコール中毒は胎児に影響し、発育が悪い、知恵遅れ、小頭症、眼瞼下垂や眼裂が狭いなどの特異な顔つき、口蓋裂、心奇形などをともなって生まれやすく、このような子どもを胎児性アルコール症候群といいます。

妊娠中は禁酒・禁煙

妊婦のアルコール依存症・喫煙は未熟児の原因の一つ。胎児のためには禁酒・禁煙を守る。

過期産児と胎盤機能不全症候群

出産予定日より2週間以上も過ぎて生まれた赤ちゃんを「過期産児」といいます。 体重が大きいだけで他に問題がない場合は心配ありません。在胎週数に比べ
て体重が小さく生まれたときは胎内に長くとどまりすぎていたため、胎盤機能不
全症候群となったものです。

原因

どうして妊娠が長びくのかは、わかっていません。胎盤機能不全症候群は妊娠中の症などのときも起こります。起こりやすい合併症は呼吸や中枢神経の障害、低血糖症、多血症、胎内発育遅延などです。

特徴

普通の赤ちゃんに比べて胎内に長くとどまるのですから、よく発育して体重が大きいように思いがちですが、実際には胎盤の機能が低下して栄養状態が悪いため、やせている場合も多いのです。皮膚はふやけてしわや、き裂が目立ち、胎便の排泄された羊水内にいるので黄色みがかっています。

ケアと治療

合併症を起こさないよう、細心の注意のもとに保育します。定期的に検診を受け心配なことがあれば、そのつど主治医に相談しながら、心とからだのケアに心を配ることが大切です。

巨大児

お母さんの胎内にいた期間とは関係なく、生まれたときの体重が4キログラム以上の赤ちゃんを巨大児といいます。

原因

お母さんが糖尿病にかかっていたり、糖尿病になる前の状態だったりすると、巨大児の生まれる可能性が高いようです。

起こりやすい合併症

仮死、分娩時骨折、分娩まひ、呼吸障害、心血管異常、頭蓋内出血、低血糖症。

特徴

顔もからだもまるまるとよく肥っていて、頭髪もふさふさとしています。

ケアと治療

母親が糖尿病のときは赤ちゃんが低血糖を起こしやすいので、検査が必要です。母子ともに問題がなければ心配はありません。

新生児黄疸

新生児の黄疸には、心配のない生理的な黄疸と病的な黄疸があり、病的な黄疸を新生児高ビリルビン血症ともいいます。

症状

生理的な黄積は、生後3日目頃から肌の色が黄色くなり、数日から1週間位でビークに達し、次第に色が薄くなり1~2週間ぐらいで消えます。母乳の赤ちゃんは、黄疸が長びくことがありますが、程度が強くなければ心配いりませんし、母乳を中止する必要もありません。
生後、1~2日頃からすでに強い黄疸症状が見られる場合は、病的な黄疸です。黄疸の赤ちゃんが元気がなく、お乳を飲みたがらなくなったら、新生児高ビリルビン血症を疑う必要があります。

原因

血液は、生まれてしばらくするとたくさんあった赤血球の不要の部分がこわれ、黄の原因となるビリルビンという物質ができます。ビリルビンは肝臓で処理されますが、新生児はまだ肝臓の壁素の働きが不十分なためにあまりにも多量になるとうまく処理できず、ビリルビンが血液中にたまって生理的な黄が起きるのです。この血液中のビリルビンの量が新生児黄としての正常値を超えると、病的な黄疸となります。既植の度がさらに強くなるとビリルビンが脳細胞に入り、細胞をこわして、脳性まひなどの障害を起こします。死亡率の高い怖しい病気です(核黄疸)。

治療

準通の生理的殖や母乳性黄疸は、程度が強くなることが少なく、治療の必要はあり上せん。強い黄は早い時期に光練校法などで治療します。なお、病的なの中でもっとも危なのは生後4時間以内に起きる強い黄疸です。お間さんと赤ちゃんの血液が不適合なため、お母さんにできた抗体が赤ちゃんに移行し、赤ちゃんの赤血球を破壊することとなり、強い黄疸症状を起こします(血液型不適合)。お母さんに抗体を用いるとか、出生後すぐに光線療法や交換輸血を行って、核黄疸を予防します。

頭蓋内出血

赤ちゃんの頭の血管が破れて頭蓋内に出血したもので、出血した場所により、硬膜下出血、くも膜下出血、脳室内出血などに分けられます。

症状

お乳をふくませても飲もうとしないで、からだ全体が青くなり、ぐったりとして反応がなくなります。嘔吐やけいれん、呼吸障害、チアノーゼなどの症状がみられます。
生後、間もなくみられることが多いのですが症状が現れたら、すぐに専門的な治療が必要になります。

原因

お産のときに赤ちゃんの頭に何らかの強い力が加わったために起こる場合(外傷性出血)と、難産のため、脳に酸素が不足したために出血する場合(無酸素性の出血)とがあります。

手当てと治療

症状に気づいたら、頭を高くして安静にし、ただちに新生児専門治療施設(新生児集中治療室=NICU)が整っている病院へ入院します。怪いときは、適切な治療をすれば問題を残さずに治ります。重症の場合はあとで脳障害を起こしたり、生命にかかわることもあるので、病気に気づいたら早急な対応が大切です。病状によっては脳外科手術が必要な場合もあります。

起こりやすい併症

頭蓋内出血のあとに水頭症が起こることがあり、そのために知能障害をひき起こす場合もあるので、しばらくの間定期検診が必要です。

頭蓋内出血の症状

全身が蒼白になり、元気がなくぐったりしている。呼んでも反応しない、お乳を飲まない。嘔吐、けいれんがある。泣き声がかん高い。呼吸を止める、後ろにそり返る、目つきがおかしいなどの症状があらわれます。

頭血腫

頭蓋骨とそれをおおっている骨膜の間に血液がたまったものです。

症状

生後しばらくすると頭部にやわらかいこぶができ、さわるとブヨブヨして内部に液体がたまっているような感じがします。もっとも大きくなるのが生後2~3日目頃で、少しずつ小さくなっていき、次第にかたくなり吸収されて、骨が飛び出したような状態になります。

原因

お産のときに産道からの圧迫で、頭蓋骨をおおう骨膜が少しはがれ、そのすき間に血液がたまったために起こったものです。頭蓋骨の内側の出血ではないので、脳には影響を及ぼしません。

手当て

医師から頭血腫であることがはっきり断され、ほかに症状がなければ特に治療の必要はなく、数か月で血液は自然に吸収されます。血腫がこぶのようにかたくなった場合も、1年から1年半くらいでなくなります。ただし、吸収されるまでは、こぶの部分を傷つけたり感染させないように注意しましょう。

新生児メレナ

新生児の消化管に起きる出血のことで、突然血を吐いたり、コールタールのような血便がみられます。他の病気が原因で起こるものを症候性メレナ、出産時に母体の血を飲み込んで、吐血したり便に出るものは、仮性メレナと呼び、血液に問題のある真性メレナとは区別しています。

症状

生後2~4日頃に突然血の混じった吐物を吐いたり、血便を出したりします。出血が多いと鮮紅色の血を吐いたり便に真っ赤な血がみられます。

原因

血液が固まるために必要な成分の(凝固因子)の中には、ビタミンKが不足すると作られないものがあります。生まれたばかりの赤ちゃんはビタミンKが不足しやすく、そのために凝固因子も不足し、血液の凝固力が弱まるわけです。

治療

重症の場合は輸血をすることもありますが、症状が軽いときはビタミンK の投与で治ります。

分娩まひ

症状 手や足がまひして、動かなくなったり、泣いたときに顔がゆがんだり、口や目がきちんと閉じなくなります。横隔神経麻痺のときは、赤ちゃん特有の腹式呼吸ができなくなり、呼吸困難を起こします。

原因

赤ちゃんが産道を通るときに、無理に引っ張られたり圧迫されて末梢神経が傷つき、その神経が支配している筋肉がまひしたものです。

手当てと治療

腕のまひは肩から腕にかけ固定しますが、ほとんどが2週間ほどで治ります。長引く場合もあるので専門医の治療が必要です。顔のまひも2~3ヶ月位で自然に治る場合が多いようです。

臍炎(さいえん)

症状

へその緒がとれたあと、おへそがジクジクし、炎症を起こすことがあります。膿など分泌物が出ている状態を 臍膿漏といい、さらに炎症が広がった状態を 臍炎 といいます。

原因

へその緒がとれたあとの傷口に細菌が感染したために起こります。

治療

細菌が血行を通じて、敗血症などを起こすおそれがあるので、早めに医師の診察を受けて、治療します。

臍肉芽腫

症状

へそのジクジクしたところに肉芽と呼ばれる薄赤色のいほのように盛り上がった粘膜の塊りがみられます。退院後、おへそから分泌物が出てなかなか乾かないので病気に気づくものです。

原因

へその緒がとれたあとの傷が治り切らず、刺激を受けるうちに肉芽が盛り上がったものです。

治療

肉芽は放っておくと、ばい菌が入り、敗血症などを起こすおそれがあるので小児科の診察を。特に、異がみられる場合は注意します。