先天性異常

フェニールケトン尿症

6~8万人に1人の割合で現れる大変数少ない病気ですが、症状が現れてから治療したのでは後遺症が残ってしまいますので、生後3~4日頃にスクリーニングテストをして病気の有無を検査することが義務づけられています。

症状

始めの頃は不きげん、食欲不振ていどなどではっきりせず、多くの場合、生後2~3ヶ月頃から、赤茶けた髪の色や、色白の皮膚(色素欠乏)、発達の遅れ、けいれんなどが現れて始めて病気に気づきます。おむつについた尿に、くさったような独特のにおいがあり、このにおいで病気がわかることもあります。

治療

知能障害を予防するために、早期に発見し、3ヶ月頃までには治療を始めることが必要で、1歳をすぎると遅いようで、フェニールケトン症が発見された時点で、治療用の特殊ミルク(フェニールアラニンを少なくしたミルク)に切り換えたり、食事療法を開始します。

クレチン症

甲状腺の機能が低下しているために起こる病気で、4000~8000人に1人の割合でみられます。

症状

成長が遅れ、ことに骨の発育が損われます。皮膚は乾燥し、髪の毛も乾いて、切れやすくなります。やがて発達の遅れが目立ってきます。

原因

胎児のときに甲状腺がうまくつくられなかったり、また甲状腺の機能が低下していて、甲状腺ホルモンが不足、あるいは欠乏しているために起こります。

治療

一刻も早く病気をみつけて甲状腺ホルモン剤で治療します。知能障害を起こす前に治療を始めることが大切です。この病気もスクリーニング検査でわかるので、必ず受けましょう。

その他の先天代謝異常

ホモスチン尿症(アミノ酸代謝異常))

血中にメチオニンがたまる病気です。知恵遅れや目に障害(水晶体脱出)が現れます。

ヒスチジン血症(アミノ酸代謝異常)

血中にヒスチジンがたまるため、知恵遅 れが現れたり、言語の発達が遅れます。

シロップ尿症(アミノ酸代謝異常)

血中にロイシンがたまるために、新生児期に意識障害、けいれんなどを生じ、死亡することがあります。

ガラクトース血症(糖質代謝望常)

血中にガラクトースがたまるために、生後すぐより黄疸が現れ、低血糖を起こしやすく、1~2週間で死亡することもあります。知能障害や白内障などが現れます。

染色体異常

染色体の数や形の異常によって起こる病気を、染色体異常といいます。
人間のからだの細胞には3対(3個)の染色体があり、このうちの2対(4個)を常染色体、残りの1対(2個)を性染色体といいます。性染色体は男女の性別を決める染色体で、女性にはX染色体が2個、男性にはX染色体とY染色体が対をなしています。
染色体異常と一口にいっても、それぞれの染色体にそれぞれの役割がありますので、どの染色体に異常が起きたかによって病気のあらわれ方や症状に特徴があります、常染色体異常には、ダウン症、猫鳴き症候群など、性染色体異常にはターナー症候性、クラインフェルター症候群などがあります。

ダウン症

常染色体異常による知能障害の代表的な病気で1000人に1人の割合です。

症状

目と目の間が離れ、目がつり上がり、鼻が低く、舌が大きく、耳たぶが小さく変形しているなど、特徴のある顔つきをしています。舌が大きいので口から出していることが多く手や足は短かめです。心臓、鎖肛、腸閉塞など、消化器に障害をともなっていることもあります。
運動機能や精神発達は遅れていますが、感情は豊かで、おとなしい性格の子どもが多いようです。
22対ある常染色体の1対目の染色体が1本多い染色体異常です。高齢出産になるほど発生率が高いといわれています。

手当てと治療

心臓の奇形などに対しては手術をしたり楽を投与します。ダウン症の子は明るく従順な性格が多く、愛情を持って普通の子と同じように育てることが大切です。発達の程度に応じて教育を重ねれば、自分の身のまわりはもちろん、社会の一員として単純な仕事をすることも可能です。

ターナー症候群

女の子に起こる性染色体異常による病気で、1万人に1人の割合で発症します。

症状

乳児期にすでに足背や手背がかたくむくんでいたり首の後の皮膚がだぶついている(翼状頚)ことで明らかになることもあります。出生時より低かった身長は成長とともに平均との差が著しくなり、性腺や性器の機能が未熟なことが目立ってきます。

原因

性染色体が1本少ないために起こります。

手当てと治療

根本的な治療法はありませんが、低い身長や性膝の発育を促がすためにホルモン療法が行われます。しかし、身体的にも精神面にも子どものもっている能力を引き出すには、信頼できる医師・カウンセラーのカウンセリングが必要です。思春期を迎える頃には、ことに両親と本人に対する励まし、病気の説明、将来に少しでも希望がもてるように精神的な支えが何よりも大切です。

口唇裂・口蓋裂

口督裂は男の子に多く、口蓋裂は女の子に多い病気で、400~500人に1人の高い割合で発症しています。

症状

上唇(うわくちびる)の真中に少しくぼんだところがありますがその片側(片側裂唇)、あるいは両側(両側裂唇)が縦に裂けているのを口唇裂(みつくち)といいます。口蓋裂は口蓋(口腔の天井の部分)が割れている場合です。

原因

染色体異常により、口唇や口蓋が完全に形成されなかったものです。その他にも、ウイルスの感染、内分泌の異常、薬やタバコなどによる害など原因としてあげられますが、確かなところはまだ不明です。

手当てと治療

口唇裂は生後3~6ヶ月頃までに口唇形成手術を受けるときれいに治ります。口蓋裂は1歳6ヶ月~2歳頃までに1回目の手術を受け、さらに6歳頃までに形成的な再手術を行います。その後は言語治療や訓練などが必要で、親は長期にわたるリハビリを覚悟しなければなりません。
どちらも上あごの発達の遅れから、歯科や耳鼻科に関する矯正歯科、および耳鼻外科の治療を受けなければならない場合もあります。

先天性巨大結腸症(ヒルスシュプルング病)

症状

生後まもなくから頑固な便秘が起こり、おなかが大きくふくらんで、嘔吐するようになります。

原因

腸の運動をつかさどる腸壁内の神経細胞が生まれつき欠けているため、その部分の結腸は細くて動きません。そのため細くて動かない結腸の上部に便がたまってしまい異常にふくらむのです。

治療

まず一時的に人工肛門をつくる手術をして便が排出できるようにします。さらに生後6ヶ月から1年位の間に神経細胞の欠けている部分の腸を取り除く手術をします。

胎芽病 (たいがびょう)

受精した卵子が、分裂をくり返しながら、だんだん人間の形になってくるまでの間を(受精後7週または10週頃まで)胎芽期といいます。この時期に母体を通して放射線や薬、病原菌などによる障害が胎児に加えられると央常が起こり、さまざまな症状があらわれます。

母胎が感染して起こるもの

風疹→小頭症、白内障、難聴、聾、心蔵の奇形、紫斑病
トキソプラズマ症→水頭症、発育遅滞、脳内石灰化、小頭症、網膜炎

妊娠中の薬の服用によって起こるもの

制ガン剤、放射線→小頭症など
サリドマイド系の睡眠薬→サリドマイド胎芽症、アザラシ症

胎児病 (たいじびょう)

胎芽期を過ぎたあとに起こる病気です。

母胎が感染して起こるもの

梅毒→先天梅毒児
エイズ―母子感染によるエイズ

薬の服用やワクチンの接種によるもの

合成黄体ホルモン→外陰部の男性化がみられる。