脳・神経の病気

脳性まひ

脳性まひは胎児から早期新生児期(出生後1週間)の間に、赤ちゃんの脳が何らかの傷害を受け、それが原因となって運動障害を残した状態のことです。
患者の多くは知能障害を伴いますが、必ずしも知能が遅れるとは限りません。
てんかんを合併することもあります。

症状

乳児期に元気がない、抱き上げてもかたい感じがする、視線が定まらない、首がすわらない、物をつかまないなどで気づきます。
痙直(けいちょく)型は筋肉の緊張が高まっているために、手足はかたく突っ張っていて、自由に曲げることはできません。
アテトーゼ型は、首や手足が絶えず動いていて不安定であることが特徴です。

原因

胎児期の脳の発育異常(奇形、母体の感染、妊娠中毒症などによる)や、時に周生期に脳に与えられた傷害(仮死、難産、頭蓋内の出血)、および出生後の核黄疸や脳炎、髄膜炎などによる脳障害が原因となります。
周生期が原因のもの8%、出生前が原因のもの30%、新生児期が原因のもの10%となります。

手当てと治療

けいれんを伴う場合は、脳波などの精密検査を行い、必要があれば抗けいれん剤を投与します。
運動障害を主とした病気なので、運動機能に対する訓練が主となります。さらに言語指導や心理面での相談や、全体の健康管理も重要なことで、できるだけ早期に母子関係を安定させることが最も大切なことといえます。

急性脳症

症状

乳児期に起こりやすく、急激に発熱やけいれん、意識障害があらわれ、症状は脳炎に似ていますが、経過が急で重症です。髄液や血液検査では、脳炎のように大きな異常がみられません。

原因

不明ですが、発病がごくまれなのが救いといえます。

治療と手当て

脳が急激にむくむことで、脳圧が高くなり、脳循環不全や、けいれん、意識障害を起こし、死亡するという重症の病気です。一刻も早く、専門医の治療を行うことが大切です。

ライ症候群

急性脳症の一つで、アスピリンが関係するともいわれますが、原因は明らかになっていません。
水痘ウイルスとインフルエンザウイルスはアスピリンと関わってライ症候群を起こしやすいといわれるので、病気にかかっているときは、アスピリンの服用は禁止です。

髄膜炎

脳をおおっている髄膜の炎症です。

症状

原因によって異なります。

  • 無菌性
    髄膜炎は新生児以外は一般に症状が軽く、1週間くらいでおさまる場合が多いようです。発熱、頭痛、嘔吐、大泉門がはれる、頚部強直(首がかたくなる)がみられるなど他の髄膜炎と同じです。
  • 流行性髄膜炎
    急に高熱、頭痛、嘔吐が始まり、項部強直、足を曲げると痛がる、けいれん、意識障害などがみられます。
  • 化膿性髄膜炎
    流行性髄膜炎と同じように、頭痛、嘔吐、項部強直などが激しくあらわれ、重症で一刻も早く治療をしなければ死亡することもあり、治っても後遺症を残すことが多いようです。

原因

  • 無菌性結膜炎
    いろいろなウイルスの感染により発病します。
  • 流行性髄膜炎
    髄膜炎菌の飛沫感染により伝染します。
  • 化膿性髄膜炎
    ぶどう球菌、連鎖球菌などの細菌の感染によって発病します。

治療

髄膜炎の疑いがあれば、髄液をとって検査します。化症性髄膜炎の液は服のようににごっていて、中に病原菌が発見されます。が、ウイルス性の魅液は透明で細菌は見つかりません。
いずれにしても入院して一刻も早い道切な治療が必要です。

脳炎

症状

急に発し、頭痛、嘔吐、項部強直を伴い、けいれん、意識障害がみられるようになります。

原因

細菌やウイルスの感染によって脳が炎症を起こし、発病しますが、百日咳、麻疹などに続いて脳炎が起こる場合も多いようです。よく知られている日本脳炎は、コガタアカイエカによって媒介され、感染して7~10日後に発病します。
日本脳炎やヘルペス脳炎はいったんかかると重症で、運動障害、知能障害、言語障害、性格変化などの後遺症を残すことがあります。

治療

日本脳炎は効果的な治療法がないので、予防接種を受けて予防することが大切です。ヘルペス脳炎に対しては抗ウイルス剤が開発されて効果をあげています。

水頭症

症状

頭が以上に大きく、大泉門は大きく開き、閉じるのが遅くなります。嘔吐や落陽現象(陽が沈むように眼球が下の方に落ちていく)がみられます。
脳が圧迫されるため、運動発達が遅れたり、まひしたりするほか、けいれんが起こったり、知能の発達が遅れたりします。

原因

先天的、あるいは髄膜炎、頭蓋内出血、外傷、トキソプラスマ感染などの後天的な原因で、脳室の一部に施着を生じたり、施液がつくられすぎたり吸収が悪かったりすると超液が頭の中に多量にたまり、水頭症を生じます。

治療

乳児健診でもチェックされますが、CT(コンピューター断層撮影法)で診断は容易です。
自然に癒る場合もありますので運動機能など順調に発達しているときは経過を観察します。高度の水頭症や遅れを感じられるときは、手術が行われます。
脳室と腹腔(ときに心臓)を管でつなぎ髄液を腹腔内に流し腹膜から吸収させることで脳の圧を下げて脳の障害を防ぎます。

急性小児片麻痺

脳の血管に障害が起きたため、部分的な血行障害が生じ、それが続くと意識障害や片まひが起こります。

症状

発熱、意識障害、けいれんなどが続いたあとに片麻痺があらわれ、半永久的に残ります。

原因

脳の動脈や静脈の血栓、静脈炎などの血管障害および重症のけいれんが続いたときなど、脳に酸素が不足します。その結果、その部分の組織がこわされ、片麻痺が起こります。

治療

けいれんに対しては抗けいれん剤の投与、脳のむくみに対しては高浸透圧剤の投与や呼吸管理など専門的な治療が必要です。

熱性けいれん

急激に熱が上がるときに生じる左右対称性のけいれんです。6ヶ月頃から4~5歳頃に起こりやすく、学道期にほとんどみられなくなります。脳性の病気で はないということが重要です。

症状

熱の上がり始めに全身がかたくつっぱったり(強直性)、手や足を大きく曲げて震わすような(間代性)けいれんがみられます。意識を失いますが、発作が終わったあと、眠りに入り、5~20分くらいで自然に目覚めます。発作は多くの場合数分以内でおさまりますが、まれに20分近く続くこともあります。

原因

体質的なものがえられますが、まだ明らかになっていません。扁桃炎など高い熱が出るときに起こります。

手当と治療

服をゆるめて楽にし、誤飲の心配があるものは取り除き、頭を横向きにして静かに寝かせます。
部屋は明るくしすぎず、大声で呼んだり、ゆすったりしないで、刺激を与えないようにします。けいれんの時間やようすを観察し、けいれんがおさまったら(10分以上続くときはけいれんの最中でも)小児科を受診します。熱性けいれんを起こしやすい子は、熱が出そうなときは、早めに解熱剤や抗けいれん剤を使って、熱性けいれんが起きるのを防ぎます。

脳腫瘍

症状

腫瘍ができた場所によって異なりますが、まひ、視力障害、多飲、多尿、嘔吐、けいれんなどの脳の刺激症状が徐々に現れて、強くなっていきます。ときには急激に進み、意識障害や手足に硬直をきたすこともあります。

治療

手術で腫瘍を摘出しますが、手術が不可能な場合など症例によっては放射線治療を行います。

てんかん

発熱とは関係なく、脳の神経細胞に発作性の異常な興奮が起こり(脳の電気的
あらし)、その結果としてけいれん発作をくり返します。100~200人に1人の割合で起こります。

症状

けいれん発作のタイプには大発作、小発作、精神運動発作、部分発作、自律神経発作、失立発作などがあります。多くの場合は脳波で異常波がみられます。

原因

原因は不明です(真性てんかん)。
頭部の外傷、脳炎、髄膜炎、脳腫瘍などの後遺症として起こるてんかんもあります。

手当てと治療

発作のタイプや症状に応じて抗けいれん剤を投与し発作を起こさないということが重要です。
日常のケアとしては、疲れすぎないよう、精神的にも身体的にも安静を保ち規則正しい生活をします。強い刺激は受けないようにして、十分な岬眠をとることも大切です。