心臓と血管の病気

先天性心疾患

先天性心疾患には約30種の病気がありすが、おもな病気をあげると、心室中欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症、肺動脈狭窄症、大動脈縮窄症、大動脈弁狭窄症、完全大血管転位症などがあります。

症状

重症の場合は生後すぐに、チアノーゼや呼吸障害がみられます。軽い場合でも、哺乳力が少なく、発育もよくない場合が多いようです。感染に弱く、かぜなども悪化しやすいので、十分な注意が必要です。小児科での受診や健康診断のときに心臓の雑音が発見されて病気に気づくことがあります。

原因

大部分は原因が不明です。胎児の心臓ができあがるのは妊娠10週(3ヶ月)といわていますが、この間に何らかの悪い影響を受けて心臓や血管に欠陥を生じたものです。ウイルス感染は重要な原因の一つで、染色体異常による遺伝もあげられます。

治療

病気の種類や程度によっては、治療しなくても成長とともに自然に治ることもありますが、多くの場合手術が必要となります。いずれも心臓病の疑いがあるときは、早期に専門医による精密検査(レントゲン、心電図、超音波など)が必要です。治療方法や手術の適応は、病気の種類、程度、年齢に応じて決められます。

先天性心室中隔欠損症

もっとも頻度の高い先天性の心臓病で、心室中隔(左心室と右心室のしきり)の一部に穴があいているので、血液は血管を通らずに直接、心室から心室に流れてしまいます。軽症の場合は、症状も少なく自然に治ることもあります。重症になると呼吸困難、チアノーゼ、腎臓機能の低下など、心不全のときにみられる症状が現れ、早期に手術が必要です。

先天性心房中隔欠損症

心房中隔(左右の心房の間のしきり)に穴があいているもので、穴の大きさによっては症状のみられないことがあり、偶然発見されたり、年長児になって息切れなどが起こりみつかることも多いようです。多くの場合、手術が必要です。

先天性動脈管開存症

胎児期は大動脈と肺動脈は、動脈管(ボタロー管)でつながっていて、出生後には閉じてしまうのが普通です。この動脈管が開いたままの状態になっているため大動脈と肺動脈の血液が直接に流れ込むことになり症状が起こります。重症の場合は乳児期から心不全の症状があらわれます。感染性の心内膜炎にかかりやすいので要注意。手術をします。

先天性ファロー四徴症

心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右室肥大の四つの異常が重なった心臓の病気です。
チアノーゼを伴う心臓病の大部分がファロー四徴症です。呼吸困難や、意識消失を起こすことがあり、幼児期には歩かないで、うずくまることがみられます。重症なものが多く、手術が必要です。

先天性肺動脈狭窄症

生まれつき右心室から肺動脈への出口が狭くなっているもので、大部分は肺動脈弁が原因となります。小児期には症状が少ないのですが成長後に心不全を起こすことがあるので手術が必要です。

先天性大動脈縮窄症

大動脈の一部が狭くなっている状態です。 幼若型は動脈管が開いているため、下半身のチアノーゼが強くみられて重症となり、乳児期にほとんど死亡します。
成人型は動脈管が閉鎖しているため幼若よりは経過がよいようです。手術が必要です。

後天性心疾患

生後に罹患する心臓の病気で、代表的なものに、リウマチ性心弁膜症と川崎病後遺症があります。リウマチ性心弁膜症はリウマチ熱が減ってきたため、減少の傾向にあります。

後天性リウマチ性心弁膜症

リウマチ熱の経過中あるいは後遺症として心臓に疾患が起こり、弁膜の異常を生じたものです。
顔が青くなり、めまい、倦怠感、頭痛、鼻血などの症状が現れ、なんとなく疲れやすく、からだの発育も遅れがちです。

後天性川崎病心血管後遺症

川崎病は、心臓の冠動脈の拡大、動脈瘤などの異常を生じますが、病気が治っ
たあとも動脈瘤は後遺症として残りやすく、その後の突然死の原因となります。
川崎病にかかったら、心臓病の後遺症を疑って、必ず断層心エコー検査や心電図、X線胸部写真などの検査をする必要があります。川崎病心血管後遺症が認められたら、抗凝固剤を服用したり、アスピリンの長期間服用が行われますが、症状によっては、冠動脈のバイパスをつくる手術が必要です。

川崎病

発見者である川崎氏の名前をとって命名されました。おもに4歳以下の乳児期に多く発病します。

症状

突然高熱が出て五日以上も続き、首のリンパ節がはれ、眼球結膜が充血し、うさぎの目のようになります。手背や足背がかたく、パンパンにはれ、手のひらや足の裏、指やかかとの先が赤くなります。
唇が真っ赤になり、口の中やのどは赤くはれ、舌はいちご状になり、BCGのあとが赤くなります。回復期になると熱も下がり、手足の皮が手の指、足の指の先端より厚く膜のようにむけてきます。

原因

まだわかっていません。

後遺症

この病気にかかると5~10%に心臓の後遺症が起こります。冠状動脈に動脈瘤が形成され、血栓を生じたりして、突然に心臓が停止するケースもあります。

治療

入院治療を行います。急性期にはアスピリンの服用、注射で動脈瘤の形成子防につとめます(症例によっては治癒後も続ける)。
急性期以降は動脈瘤があるかないかで異なりますが、後遺症が残ったときには心臓専門医の治療が必要です。いずれにしても、治った後も長い間専門医による経過観察が必要です。

心筋炎

子供の場合、ウイルスによると思われる心筋炎が多くみられます。発熱、呼吸困難、チアノーゼなどがみられ、心不全を起こすこともあります。心不全に対する
治療と、十分な抗生剤、ステロイド剤、その他の薬の投与などが行われます。

不整脈

心臓の規則的な拍動が何らかの原因で乱れたときに不整脈が起こります。
洞性不整脈(リズムが乱れる)、洞性頻脈(リズムが速くなる)、洞性徐脈(リズムが遅くなる)、などは特に心配のない場合が多く、他の病気が関係しているときは、その治療を行います。
発作性上室性頻脈症は原因不明のことが多いのですが、発作が起こると脈拍は1分間に180~200回ぐらいに速くなることもあります。普通は一過性でおさまりますが、長く続くと心不全を生じ危険です。
そのほかにもいろいろ心拍が乱れる病気はありますが、原因となる病気があれ
ば、根本治療を忘れず、強心剤投与など心臓専門医による治療が必要です。