薬物性肝障害について
概要
薬物性肝障害とは、薬剤やサプリメントなどが原因となって肝臓に障害が起こる病気です。使用される薬の種類は非常に多く、医療機関で処方される薬だけでなく、市販薬や健康食品なども原因となることがあります。肝臓は、体内に取り込まれた物質を解毒する働きを担っている重要な臓器です。薬剤性肝障害は、この肝臓の働きに異常が生じることで、様々な症状を引き起こします。
原因
薬物性肝障害の原因となる薬剤は多岐にわたります。
- 医療用医薬品: 抗生物質、解熱鎮痛剤、抗てんかん薬、抗がん剤など、様々な種類の医薬品が原因となる可能性があります。
- 一般用医薬品: 市販の風邪薬、痛み止め、胃薬など。
- 健康食品: サプリメント、漢方薬など。
- 毒物・有害物質: 工業用化学物質など。
薬剤性肝障害の発症メカニズムは、大きく分けて以下の2つに分けられます。
- 中毒性: 薬剤そのもの、またはその代謝産物が肝細胞を直接傷害することで起こります。用量依存性が高く、大量の薬剤を服用した場合に起こりやすいです。
- 特異体質性: 特定の体質の人が、少量の薬剤でもアレルギー反応のような機序で肝障害を起こします。用量依存性はなく、予測が困難です。
症状
薬物性肝障害の症状は、原因となる薬剤の種類や、肝臓の障害の程度によって様々です。
- 全身症状: 倦怠感、食欲不振、発熱、体重減少など。
- 消化器症状: 吐き気、嘔吐、腹痛、黄疸(皮膚や白眼が黄色くなる)など。
- 神経症状: 意識混濁、けいれん、神経過敏など。
症状は、薬剤を服用してから数日から数週間後に現れることが多く、初期には風邪のような症状で始まることもあります。
診断
薬物性肝障害の診断は、問診、身体診察、血液検査などを総合的に行うことで診断されます。
- 問診: いつから症状が出始めたか、どのような薬を服用しているかなどを詳しく聞きます。
- 身体診察: 黄疸、肝臓の腫脹などを調べます。
- 血液検査: 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTPなど)を行い、肝臓の障害の程度を調べます。
- 画像検査: 肝臓の超音波検査やCT検査を行うことがあります。
治療
薬物性肝障害の治療は、まず原因となる薬剤の中止が重要です。その後、肝機能の改善を図るための対症療法が行われます。
- 薬剤の中止: 原因となる薬剤を中止することで、肝臓への負担を軽減します。
- 対症療法: 黄疸、かゆみ、吐き気などの症状に対して、適切な薬物治療を行います。
- 肝臓移植: 重症の場合には、肝臓移植が検討されることがあります。
予防
薬物性肝障害を予防するためには、以下の点に注意することが重要です。
- 薬の服用に関する注意:
- 医師や薬剤師の指示を必ず守りましょう。
- 自己判断で薬を服用したり、中止したりしないようにしましょう。
- 複数の薬を服用している場合は、薬剤師に相互作用について相談しましょう。
- 健康食品の服用に関する注意:
- 健康食品は、必ず医師や薬剤師に相談してから服用しましょう。
- 天然成分だから安全というわけではありません。
- 定期的な健康診断: 定期的に健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につながります。
まとめ
薬物性肝障害は、様々な薬剤が原因となって起こる可能性がある病気です。早期に発見し、適切な治療を行うことで、重症化を防ぐことができます。薬を服用する際は、医師や薬剤師の指示を必ず守り、自己判断で薬を服用したり、中止したりしないようにしましょう。