概要
移動精巣とは、精巣が陰嚢の中に完全に固定されず、体内の温度変化や刺激によって、鼠径部まで上がってしまう状態を指します。生まれたばかりの男児の約30%に見られると言われています。
原因
移動精巣の明確な原因は解明されていませんが、以下の要因が考えられています。
- 精巣挙筋の発達異常: 精巣を上下に動かす筋肉である精巣挙筋の発達が未熟なため、精巣が不安定になっている可能性があります。
- 精索の構造異常: 精巣を支える構造である精索に異常があることで、精巣が固定されにくくなっている可能性があります。
- 体質的な要因: 体質的な要因が影響している可能性も考えられます。
症状
移動精巣自体は、特別な症状が現れるわけではありません。しかし、以下のような状態になることがあります。
- 精巣が触れない: 刺激によって精巣が鼠径部まで上がってしまうため、陰嚢内で精巣を触れないことがあります。
- 不妊: 重症の場合、精巣が常に高温の体内に位置するため、精子の生成が阻害され、不妊の原因となる可能性があります。
- 精巣腫瘍のリスク増加: 停留精巣と同様に、移動精巣も将来的に精巣腫瘍のリスクが高まる可能性が指摘されています。
治療法
移動精巣の治療法は、以下の通りです。
- 経過観察: 生後6ヶ月頃までは、自然に固定されるのを待つ経過観察を行います。
- 手術: 生後6ヶ月を過ぎても改善が見られない場合や、精巣が頻繁に上がってしまう場合は、手術によって精巣を陰嚢内に固定する治療を行います。
予防
移動精巣は、先天的な要因が大きいので、予防することは困難です。しかし、以下の点に注意することで、症状の悪化を防ぐことができます。
- 定期的な小児科検診: 小児科検診で、移動精巣の有無を定期的にチェックしてもらいましょう。
- 保温: 冷えすぎないように注意し、腹部を温めるようにしましょう。
- 刺激を避ける: 精巣を触ったり、強く押したりしないようにしましょう。
Q&A
- 移動精巣と停留精巣の違いは何ですか?
- 停留精巣は、精巣が全く陰嚢内に降りてこない状態を指します。一方、移動精巣は、一度は陰嚢内に降りてきているものの、刺激によって上がってしまう状態を指します。
- 移動精巣は放置しておいても大丈夫ですか?
- 生後6ヶ月頃までは、自然に固定されるのを待つ経過観察が一般的です。しかし、その後も改善が見られない場合は、手術が必要になることがあります。
- 移動精巣の手術はどのようなものですか?
- 手術では、精巣を陰嚢内に固定するための縫合を行います。
- 移動精巣は大人になっても問題ないですか?
- 重症の場合、不妊や精巣腫瘍のリスクが高まる可能性があります。早期に治療を受けることが大切です。
- 移動精巣の子どもを授かることはできますか?
- 早期に治療を受け、精巣が正常に機能していれば、子どもを授かることは可能です。
まとめ
移動精巣は、精巣が陰嚢内にしっかりと固定されていない状態です。自然に改善される場合もありますが、放置しておくと不妊や精巣腫瘍のリスクが高まる可能性があります。定期的な小児科検診を受け、医師の指示に従って治療を行うことが大切です。
ご自身の子供のことで心配なことがあれば、必ず小児科医にご相談ください。