ペプシノゲン検査でわかること
ペプシノゲンは、胃の粘膜から分泌される消化酵素「ペプシン」の前駆物質です。ペプシノゲンには、ペプシノゲンⅠとペプシノゲンⅡの2種類があり、それぞれ分泌される場所や性質が異なります。
ペプシノゲン検査は、血液中のペプシノゲンⅠとペプシノゲンⅡの濃度を測定することで、胃の粘膜の状態を調べることができます。具体的には、以下のことがわかります。
- 胃粘膜の萎縮の程度: 胃粘膜が萎縮すると、ペプシノゲンⅠの分泌量が減少し、ペプシノゲンⅡの分泌量は増加します。そのため、ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比を調べることで、胃粘膜の萎縮の程度を推定できます。
- 胃がんのリスク: 胃粘膜の萎縮は、胃がんのリスクを高める要因の一つです。ペプシノゲン検査で胃粘膜の萎縮が認められた場合は、胃がんのリスクが高いと判断されます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無: ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、胃粘膜が炎症を起こし、ペプシノゲンの分泌量が変化することがあります。そのため、ペプシノゲン検査は、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を調べるための補助的な検査としても用いられます。
ただし、ペプシノゲン検査は、あくまで胃がんのリスクを評価するためのものであり、胃がんそのものを診断するものではありません。ペプシノゲン検査で異常が認められた場合は、胃カメラ検査などの精密検査を受ける必要があります。
ペプシノゲン検査の基準値
ペプシノゲン検査の基準値は、医療機関や検査方法によって異なりますが、一般的には以下のようになります。
- ペプシノゲンⅠ:70ng/mL以上
- ペプシノゲンⅡ:30ng/mL以下
- ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比:3.0以上
これらの基準値よりも低い場合は、胃粘膜の萎縮が進んでいる可能性が考えられます。
基準値より高い場合に疑われる病気
ペプシノゲン値が基準値より高い場合、以下のような病気が疑われます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染: ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、胃粘膜が炎症を起こし、ペプシノゲンの分泌量が増加することがあります。
- 慢性胃炎: 慢性胃炎では、胃粘膜が炎症を起こし、ペプシノゲンの分泌量が変化することがあります。
- 腎機能障害: 腎機能が低下すると、ペプシノゲンの排泄が遅れ、血液中の濃度が高くなることがあります。
- ゾリンジャー・エリソン症候群: 胃酸を過剰に分泌する腫瘍ができる病気です。
ただし、ペプシノゲン値が高いからといって、必ずしもこれらの病気であるとは限りません。他の検査結果や症状と合わせて、総合的に判断する必要があります。
治療法
ペプシノゲン値が高い場合の治療法は、原因となる病気によって異なります。
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染: 除菌療法を行います。
- 慢性胃炎: 胃酸の分泌を抑える薬や、胃粘膜を保護する薬などを使用します。
- 腎機能障害: 原因となる病気の治療や、腎機能をサポートする治療を行います。
- ゾリンジャー・エリソン症候群: 腫瘍の摘出手術や、胃酸の分泌を抑える薬などを使用します。
ペプシノゲン検査で異常が認められた場合は、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにしましょう。