尿沈渣は、尿検査の項目のひとつで、尿中の有形成分(細胞、円柱、結晶など)を顕微鏡で観察する検査です。この検査によって、腎臓や尿路系の病気の診断や病態の把握に役立つ様々な情報を得ることができます。
検査でわかること
尿沈渣の検査では、主に以下のことがわかります。
- 細胞の有無と種類:赤血球、白血球、上皮細胞などの有無や数を調べます。これらの細胞の増加は、炎症や出血、腫瘍などを示唆します。
- 円柱の有無と種類:円柱は、腎臓の尿細管で形成される円筒状の構造物です。その種類によって、腎臓の病態を把握することができます。
- 結晶の有無と種類:尿中の結晶の種類や量は、尿路結石のリスクや腎臓の病気に関連することがあります。
- 細菌や真菌の有無:尿路感染症の診断に役立ちます。
基準値
尿沈渣の基準値は、医療機関や検査方法によって若干異なりますが、一般的な基準値は以下の通りです。
- 赤血球:5個/HPF未満
- 白血球:5個/HPF未満
- 上皮細胞:少数
- 円柱:硝子円柱が少数
- 結晶:少数
※HPFとは、high power fieldの略で、顕微鏡の高倍率視野のことです。
基準値より高い場合に疑われる病気
尿沈渣で基準値よりも高い値が出た場合、以下のような病気が疑われます。
- 赤血球が多い場合:腎臓や尿路の出血、腎炎、尿路結石、膀胱炎、尿路腫瘍など
- 白血球が多い場合:腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎などの尿路感染症、腎炎など
- 上皮細胞が多い場合:尿路の炎症、腎炎など
- 円柱の種類と数:
- 硝子円柱の増加:激しい運動後や脱水症状など
- 赤血球円柱:糸球体腎炎など
- 白血球円柱:腎盂腎炎など
- 顆粒円柱:腎炎、腎不全など
- 結晶が多い場合:尿路結石、腎臓の病気など
- 細菌や真菌が多い場合:尿路感染症
治療法
尿沈渣で異常が見つかった場合の治療法は、原因となる病気によって異なります。
- 尿路感染症:抗生物質や抗真菌薬による治療
- 尿路結石:自然排石を促す薬物療法、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、内視鏡手術など
- 腎炎:薬物療法(ステロイド、免疫抑制薬など)、食事療法など
- 尿路腫瘍:手術、放射線療法、化学療法など
尿沈渣は、尿検査の中でも非常に重要な検査の一つです。異常が見つかった場合は、医師の指示に従って適切な検査や治療を受けるようにしましょう。