統合失調症
症状
症状は陽性と陰性に分けて考えられています。
発症初期には、次のような陽性症状が現れます。
初期(陽性)
- 幻覚
- 幻聴が主で、だれかが「死ね!」などと直接話しかけてくるものや、何人かの人たちが自分の悪口(うわさ話)を言っているのが聴こえるというものが多く、なかには、自分の考えが声となって聴こえてくると訴える人もいます。そのほか、隣の人が体に電波をかけてくるといった体感幻覚(電波体験)もあります。
- 思考の障害
- 考えがまとまらず、話が支離滅裂になったり、単語の羅列だけになる(ことばのサラダ)ことがあります。また、突然考えが止まってしまうこともあります。思考の内容の障害として、被害妄想や誇大妄想があります。とくに多いのが被害妄想で、「あの人が黒い服を着ているのは、母の死を知らせているのだ」といった妄想知覚、だれかに追われているという追跡妄想、毒をもられているという被毒妄想などがあり、本人はそうした妄想を確信するようになります。誇大妄想には、「自分は天皇の子であることがわかった」というような血統妄想、「ノーベル賞級の大発明をした」という発明妄想などもあります。
- 自我意識の障害
- 自分(自我)の自立性が保たれなくなると、自分の考えや行動が他人の意思に影響されていると感じるようになります。「あの人に操られている」「他人の考えに支配されている」などと思い込むもので、これらを「させられ体験(作為体験)」といいます。テレパシーや電波によって命令されるように感じることもあり、この場合は幻聴に操られる状態です。
慢性期(陰性)
慢性期になると、陽性症状に代わって陰性症状が現れてきます。
感情が乏しくなる(感情の平板化)、世間に対して無関心になる(感情鈍麻)、引きこもって無為に過ごす(自閉、無為)、意味もなく笑う(空笑)、その場にそぐわない不自然な感情表現をするなどの症状が目立つようになります。
陰性症状のように激しいものではありませんが、陰性症状が進むと、人格がまとまり(連続性)を失い、解体(人格荒廃)された状態になります。そうなるともとの精神的機能を取り戻すのは困難になります。
原因
まだ明確にされてはいませんが、遺伝的因子、脳内の神経伝達物質(ドパミン、セロトニン)の過剰仮説、環境因子、心理学的因子、大脳の構造的異常など、多くの因子が絡み合って起こると考えられています。
遺伝的因子では、家族に統合失調症がいる場合は、発病率は明らかに高くなります。
たとえば、遺伝子が同じ一卵性双生児の場合、一人が発症すると、もう一人も約50%の確率で発症するという研究があります。
しかし、100%ではないということは、環境因子も大きくかかわっていると考えられます。
ストレスの多い環境と、遺伝的な脆弱性(発病しやすい体質)が相まって発症を促すとみられています。
ドパミン過剰仮説は、脳内のシナプス間隙内にドパミンが過剰に放出されるために情報伝達の機能が低下して発症するという考えです。
統合失調症の治療にドパミン遮断薬が有効であることから、この仮説が打ち出されました。
最近は、セロトニンなどの関与も指摘されています。
また、CTやMRIなどの検査をすると、統合失調症の患者の大脳皮質に萎縮がみられます。
とくに、側脳室の拡大と側頭葉や海馬などの萎縮が多くみられることが報告されています。
治療法
抗精神病薬(リスペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、オランザピンなどの非定型性抗精神病薬、ハロペリドールなどのブチルフェノン系抗精神病薬、クロルプロマジンなどのフェノチアジン系の抗精神病薬など)が中心的に用いられます。
必要に応じて、作業療法や生活技能訓練、デイケア、訪問看護、集団精神療法などが組み合わされます。
外来のみの治療も可能です。
都会では、デイケアや作業療法施設を備えたクリニックもあり、多くの患者が通院しています。
しかし、症状が重い時や、家族のサポートが得られにくい場合などは、入院治療が安全で確実な治療環境を与えてくれます。
最近の精神神経科の病院では、環境の整備が進んでいますので、入院治療も受けやすくなってきています。
なお、入院治療は、精神保健福祉法によって、人権を重視しながら行われています。